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テーマ:再会(31)
カテゴリ:家族・家庭・交友関係
「Hさんという方が、1階のエントランスでお待ちです」
職場で総務からの内線を受けた僕は、 「H」という苗字に、その瞬間、ピンと来ませんでした。 (誰? 誰なん?) (何かワケの分からない押し売りやろか?) と思いつつも、頭の中では 交友関係のネームカードがめまぐるしく高速回転します。 …と。 --あ。ひょっとして女性…? 「そうです、そうです。以前大阪で一緒だったとか…」 そう! 大阪時代に同じ職場でご一緒した、年配の女性Hさん。 その人が、いきなり東京の本社の1階玄関に来ている、と。 大慌てで1階へ下りていくと、果たして懐かしいご当人でした。 僕が大阪から東京へ転勤すると同時に退職されたので、 もう16年ぶりの再会です。 「うわーっ! 懐かしい!」 お互い、声を出しながら近づきます。 (どうして、ここへ?) と一瞬、思いましたが、すぐに察しました。 大阪時代、そのHさんは、 僕よりも同僚としてのヨメさんとの付き合いの方が長かったのです。 おそらく、頃合いが良くなったので、 僕のご機嫌伺いに来られたに違いない。 ヨメさんが亡くなった折、彼女にも手紙では事実を知らせていたものの、 まったく沙汰がなく、ちょっと心配はしていたのですが。 果たして、察したとおりでした。 たまたまご自身の娘さんが東京に出張する機会があり、 一緒に上京したとのこと。 昨年11月に、僕からの手紙を受け取ったときは、 茫然自失状態だったそうです。 Hさんの、ウチのヨメさんに関する想い出は、 終始明るい笑顔とくったくのない話しぶり。 どれだけ自分の支えになってくれたか分からない。 本当にエエ子やったと。 そんなエエ子が何でこんなに早く天寿をまっとうするのか。 順番が逆やないか…と。 手紙を受け取った後、 僕宛に慰めの手紙をしたためようと、 何度も何度も筆をとるものの、綴る言葉が出てこず、 結局、何も書くことができなかった。 そう、涙ながらに語ってくれました。 僕もとたんに昨年秋口からの映像が ばばばーっと頭の中に映されて、 しばし涙ぐんでしまいました。 今から、25ほど年前、 まだ結婚したての僕とヨメさんがいた職場で、 そのHさんもとっても明るくふるまっていました。 僕らより世代は上の人ですが、 しかし自分の子どもぐらいの年齢の人たちに混じって、 ワイワイ楽しく働いていました。 あの当時のことを思い返すと、 まさか四半世紀後にこんなことが起こるなんて、 まったく想像していなかった。僕も、Hさんも。 旧交を温めつつ、涙にくれた再会劇でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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