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カテゴリ:織田作之助
織田作之助は恩師桑原武夫の翻訳した本書を数度読み返すほど傾倒して、主人公ジュリアン・ソレルの自尊心強く、野心的な生き方に魅せられた。
そして、織田は『青春の逆説』(昭和16年初出)に、このソレルに模した毛利豹一という、大阪の市井において若々しく伸びやかに謳歌する青春像とは逆説的な青春を流離う人物、それは織田作自身でもあるあるが、を登場させているほどだ。 織田作自身、太宰治、坂口安吾等とともに戦後、無頼派と呼ばれたが、下級の生まれジュリアンは血気盛んで逆上的、反逆的、反骨的な無頼人に属する人物としてスタンダールは描いている。 フランスの大革命、ナポレオンの統治、王政復古へとと揺れ動く時代において、貴族、政治家、宗教界が謀略を図り暗躍する地方やパリの社交場に、聖書の暗記能力によって若手神父として身を処し、あはや貴族の一員へと成り上がる直前に、元愛人の侯爵夫人を撃ち、死刑に処せられるジュリンアン。 2人の高貴の女性を、恋するではなく、身分的な反発心から、相手が靡かせるよう弄する手管、そして結果として愛しながら、自尊心から突き放すという冷血ぶりのジュリアン。 本音・建前、裏話・裏読み、プラス思考・マイナス思考、自問自答など、登場人物のあれこれ巡らされる考えや心理状態についての雄弁、多弁な記述はスタンダールならではであろうが、くど過ぎるほどだ。フローレンスにしてもモーパッサンにしてもこの点の才能は共通しているといえよう。 なお、ジュリアンに比べれば、織田作の主人公が伸し上がる世界はハイではない。ただ、織田作自身は、長屋の庶民から出て文壇に躍り出て、演劇界や映画界とも交流、終戦直後、マスコミにもてはやされる寵児となった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年07月20日 14時59分19秒
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