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人気時代小説作家上田秀人の表御番医師診療禄シリーズ第8話は副題に「乱用」と書かれていました。 「乱用」を辞典で調べると、「乱用する」で一定の基準や限度を越えてむやみに使うこととあります。 いったい何を乱用するというのか?医者だけに薬の乱用か?いやそうではなかった。
5代将軍綱吉の毒殺を未然に防いだ功績で、かねてより念願の最新西洋医術の習得のため長崎留学を許された幕府寄合医師(表御番医師より昇格)矢切良衛。 オランダ医師から最新の医術を学べるものと胸躍らせて行った長崎では、オランダ医師は本国に帰還中で新たな医師はいつ来るかさえわからぬという始末。出島のオランダ館に通っては、オランダ語で書かれた医術書を細々と紐解くしかすべのない良衛であった。 しかしそれさえも、長崎出島に関わる利権を暴かれたくない長崎奉行や福岡黒田藩、佐賀鍋島藩、さらには途中立ち寄った福岡の薬師問屋などが、良衛の行く先々に立ちはだかる。 一方江戸城大奥では、綱吉の寵愛を独り占めにするお伝の方が、オランダ流産科術に目を向け、外道(外科・整形外科)医師である良衛に密命を与える。それを防がんとする勢力が、また良衛をつけ狙う。 江戸と長崎で良衛の医術の成果を狙い張り巡らされる策謀の数々。良衛危うし! 良衛が次々に襲い来る理不尽な魔の手に襲われていたころ、大奥ではお伝の方が自らの不妊に関する疑念を綱吉に訴える。 「神田館では二度も上様のお子を孕みましたものが、どうして大奥に入ってから身ごもりませぬのでしょう」と。何か薬を盛られているのではないかと訴えたのである。 「ただちに良衛を呼び戻せ」 長崎へ行ってオランダ流産科術を学べというかと思えば、ただちに江戸へ戻り、お伝の方の食事に異常がないか調べよという綱吉の命。もしかしたら上田はこれを「乱用」と表したかったのかもしれない。 綱吉の命に木の葉のように踊らせられる良衛。とにも新たな使命をおびて江戸へ帰ることになった良衛にいかなる運命が待ち受けるのだろうか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年09月08日 12時26分15秒
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