カテゴリ:本
今、浅田次郎著「天国までの百マイル」を読み終わって、ようやく溢れ出る涙をぬぐい、少し落ち着きを取り戻したところです。
事業に失敗し愛する妻子とも別れたダメ男の城所安男がこのストーリーの主人公。著者の生い立ちとダブる影を持つ安男のまわりに登場する人物は、大きく2群に大別される。 まず安男の3人の兄と姉。長兄は苦学の末に東大を出たエリート商社マン。次兄も国立医大卒の開業医、姉は一流銀行の支店長婦人、そしてその姉の夫でありかっては安男に多額の融資をし、最後は安男を見限った義兄の支店長。 安男からみれば、血肉を分けた兄弟とはいえ、苦労の末に手にした今の幸せを失いたくないために、多額の負債を抱えて倒産した自分に関わろうとしないのはわかるとしても、明日をも知れぬ命の母親に手を差し伸べようとしないのが許せない。 次にその重い心臓病を患う母親、別れた妻の英子、飲み屋のホステス・マリ、母親の主治医で内科医の藤本、神の手を持つという心臓外科医曽我、さらにはやくざ者の金貸し屋片山。 捨てる神あれば救う神ありとはこのことを言うのであろう。 安男をして老母をポンコツ車に乗せ天才心臓外科医・曽我のいる病院まで100マイル走らせたのは、ただただ母親の命を救いたいの一心からであったに違いないにせよ、実は安男を今の境遇から立ちなおらせ、自信のある生き方を取り戻させようとする母親の最後の賭けでもあったということが最後の最後にわかり、読者は感動に心を揺さぶられ感涙にむせぶことになるのであった。 If you miss the train I'm on (もしあなたが汽車に乗り遅れたら) You will know that I am gone (私は行ってしまったと思って) ピーター・ポール&マリーの「500マイル」の歌詞が終章に暗示するものは・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年01月22日 14時31分03秒
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