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2015.10.12
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カテゴリ:古本コレクション

図書館でみつけた雑誌バックナンバー、
表紙に躍動する美女の写真。

思わず手にとりました。
戦前、日本で成功して活躍し、
世界的な名声をえた
朝鮮半島出身の舞踊家・崔承喜

美女ありき2.jpg

桑原甲子雄氏が撮影した有名な写真。

1934年、鎌倉・由比ガ浜で行われたオリエンタル写真工業の撮影会でモデルをつとめた崔承喜
とあります。

・・・不思議なのですが
とても今から80年も前の古い写真にはみえません。

着用している水着(当時最新流行?)
が古風といえばいえるけど

のびやかな肢体、若さ匂いたつ健康美。
21世紀現代のCMでもじゅうぶん通用しそうです。

舞踊の実力に加えて天与の美貌。
彼女は当時の大スターでした。

舞踊家・石井漠に師事、修行を積んでいたころの崔承喜。
16、7歳ころでしょうか。
崔承喜10.jpg
『世紀の美人舞踊家崔承喜』(エムティ出版)より。
美少女ですね。

舞踊以外にも、各種広告やファッションモデルに
ひっぱりだこの多忙ぶり。

画壇でも、安井曽太郎や鏑木清方のような当代の一流画家が
きそって彼女を描いたといいます。
いつか拝見したいですね。

崔承喜8.jpg

『世紀の美人舞踊家崔承喜』(エムティ出版)より。

美女ありき3.jpg

昭和11(1936)年主婦之友9月号より。

万人向けのする軽快な流行型の婦人用ブラウス
秋のブラウスに、ぜひお召しくださいませ。
これは、崔承喜さんだけによく似合う・・・のではありません。
どなたにも向く流行のスタイルです。

・・・と本文にあります。

おどるばか.jpg

恩師・石井漠の回顧録・昭和30(1955)年・産業経済新聞社。

『崔承喜』に1章をもうけています。

おどるばか1.jpg

・・・その時に、当時京城日報の学芸部長をやっていた寺田寿夫氏の紹介状を持って、私の
楽屋を訪れた二人の兄妹があった。兄承一君の話によれば、自分の妹をどうしても舞踊家に
仕上げたいのだという。どうか世話をしてくれるようにとのことであった。
その妹というのは云うまでもなく今の崔承喜ではあるが、その頃の崔承喜は、
淑明女学校を卒業したとはいうものの、まだ十六才の小柄な少女に過ぎなかった。・・・

・・・私達は承喜を連れて、二等車の人となった。大勢の見送り人と挨拶を交わし、いざ
発車という時になると、改札口の人混みから、一人の日本婦人の止めるのも聞かず、白衣の
婦人が朝鮮語で承喜の名を呼びながら、狂人のように駈け出してくるのを見て、私達は吃驚した。
 そのうちに汽車は動き出す、承喜は私達のおさえるのも聞かず体をのりだして
「オムニー、オムニー」と涙をふきふき、金切り声をあげて母を呼ぶ。
あの時の光景は忘れられない。
 しかし見送人の影も遠ざかり、やがて龍山の駅に着いた頃は、承喜の気持も和らぎ、窓から顔を
出したまま、学校で教わった日本語の唱歌を歌っているので、私達は思わず顔を見合わせて
微笑まずにはいられなかった。あの時の日本婦人は女学校の受持の先生だそうで、母親には
東京に行くことを全く内証にしていたことが後でわかった。・・・


おどるばか2.jpg

・・・大正天皇の亡くなられたのはそれから間もないことであった。
多摩御陵行きの御霊柩の列車が通るというので、私達一同は中央線の線路ぎわに
お見送りすることになった。承喜もその中に混じっていた。
いざお通りになる時になって一同黙とうしていると、承喜は何故か後ろ向きに突っ立っている。
私はそれとなしにたしなめたがきかなかった。後で、その理由を聞くと、
「私は、日本の天皇さんを拝む気持にはどうしてもなれません」と、
はっきりいわれたのには言葉が出なかった。それほど、その当時、日本に対する民族意識が
高まっていたのである。
 私はこの時、天皇様に限らず、どんな貧しい人の死に対しても、敬虔な気持で見送る
ことのできないような人は、決して立派な人になれないことや、芸術家になる資格のない
人間であることを、よくいい聞かせると、さすがに利口な子供だけに、涙を流してうなずいた


おどるばか3.jpg

・・・その後三年の月日が経って、私達が北海道の公演をすまして東京に帰ってくると、
崔承喜は急に帰国を申し出た。ちょうどこの頃の半年ほど前に、山陰道の旅行中私は眼病にかかり、失明を伝えられて間もない頃で、奥の室で来訪医師の手当てを受けて、眼を包帯したまま
ソファーに横たわっていた時だった。そこで極力それを引き留める勇気もなく、そのまま別れる
ことになったわけだが、その後、崔承喜は京城において、かなりの奮闘をつづけている噂を時々
耳にしていたのである。
 そのうちに私の眼も奇蹟的に快方に向かって、それからまた度々京城を訪れる機会に
恵まれたわけだが、それから二年後の夏、京城に行った時は、安という早大露文科出身の青年
と結婚していたばかりでなく、大きなお腹を抱えて出迎えの人の中に立っていた。
そして承喜夫妻は、つくづく前非を悔い、再び東京に行って指導を受けたいと懇願するので、
気の弱い私達夫婦は遂にその談判に負かされてしまった。・・・・

おどるばか4.jpg

・・・それから三年目に、いよいよ崔承喜の第一回舞踊公演を明治神宮外苑の青年会館で催すことになった。現代舞踊家は、バレエの場合と違って、それぞれの特徴を持っていなければならない。
この意味でやがては朝鮮舞踊の研究をやり、それを国際的手法によって、その精神を再現する
ことが崔承喜のためにも、世界の舞踊界のためにも、最も意義のあることだといったようなこと
を話し、嫌だというのを無理に朝鮮舞踊を一つ、プログラムに入れさせることにした。

・・・それからというものは、崔承喜の名声がとみに高まり、独立して崔承喜舞踊団をつくり、全国的に公演を行うようになったが、例の『半島の舞姫』の映画が製作されたのも、この時分であった。・・・・

その後、間もなく承喜は映画が完成すると、アメリカに渡り、ヨーロッパ、南米の公演を行い
非常な成功を収めて、再び日本に帰るに当り、崔承喜は共産思想をもっているという噂のため、
上陸を危ぶまれたらしく、このことを書いた長い手紙を受け取ったが、云われるままに
船に迎えに行くと、大したこともなく私の身体にすり寄るようにし、どうにか事故なしに上陸
出来たことは嬉しかった。

それから後、十八年八月には帝劇を借り切って、二十五日間の単独公演をやり、連日満員の盛況
を呈したが、これなどは、日本では勿論のこと、単身でこのような長期公演をやった例は
世界にも類のないことである。


おどるばか5.jpg

・・・その後、崔承喜は帝都電鉄沿線の永福町に立派な洋風の邸宅と研究所を作って、
そこで研究をつづけていたが、そのうちにいわゆる大東亜戦争の機運が高まり、
承喜夫妻は弟子達と共に大陸へ軍隊の慰問に行っていたらしいが、そのまま日本には
帰ることが出来なくなり、結局、北京におちつくことになったということを、風の便りに知った。

そのうちに、朝鮮は南北二つにわかれ、崔承喜は夫の安君と共に、北鮮政府の中でも
重要な地位をしめるようになり、承喜は芸術方面に、特に、舞踊方面に力を入れているらしく、
先年ソビエトに招聘され、国賓待遇をうけながら、圏内の各都市を公演し、非常な賞賛を
博したということを耳にしたが、あの利口そうな承喜の、素振りから顔までが、頭の中に浮かび
出て嬉しかった。

また三年程前に、チェコスロバキアのプラーグで、民族舞踊のコンクールがあって、
承喜の一人娘の勝子ちゃんが、安聖姫と改名して出演、最高の栄誉を勝ち得たという
報道にも接して、私としては重ねて嬉しいかぎりであった。

最近、崔承喜来日の噂が高く、そのために、よく新聞社あたりからも尋ねられて弱っているが、
しかし、私としてもそういう時期の一日も早く来てくれることを、待ち望んでいる次第である。

年譜では、
『おどるばか』上梓されて2年後の1957年、モスクワで開催された平和友好祭で
師弟はつかのまの再会、だきあって喜ぶ感激のひとこまがあったようです。

・・・その後しばらくして崔承喜一家の消息は完全にとだえてしまうのですが
彼女の恩師である石井漠先生の語調には、
遠くない将来再会して、ふたたび自由に交流できる日を切望する
未来への明るい期待が感じられますね。いっそう悲しい。




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Last updated  2015.10.17 16:55:33
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