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2015.10.13
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カテゴリ:古本コレクション

昭和11(1936)年の『婦人倶楽部』10月号に
和田邦坊画伯による崔承喜のインタビューが掲載されていました。

和田邦坊画伯は当時の人気漫画家、
中学・高校時代に歴史の教科書に載っていた成金の風刺画
の作者といえば、思い当たるかたも多いかもしれません。

いわばタレント文化人、芸能レポーター?
昔も今も大して変わりませんね。

全文引用してみようと思います。

邦坊女人問答・崔承喜さんの巻
邦坊1.jpg

五尺四寸二分で体重十四貫六百あるというから大変である。

換算して、五尺四寸二分は1メートル64センチ、十四貫六百は54.75キログラム。
だいたい身長165センチ前後、体重55キロでしょうか。
理想的なバランスですね!
彼女はひじょうに長身だったといわれますが(170センチ以上はあったとの情報もあり)、
160センチ以上なら当時の成人男性よりも大きく、
現代なら180センチ近いスーパーモデル並みの感覚だったのでしょう。


僕は先年、死んだ人見絹枝嬢に『こっちへいらっしゃい』と
手をひっぱられてころんだ経験がある。女だって大きいと男より力は強い。
『あら、よくいらっしゃいましたわね。サ、こっちへいらっしゃい』
崔承喜さんが歓待の両手を差しのべた時に、僕は思わず手をひっこめた。
また、転がされたらみっともないと思ったからだ。

背が高いから腰かけると裸の向う脛がこっちへニュッと突き出た。
僕はこの隆々と肉のしまった向う脛を(変なところを見つめて失礼だが)
顔を近づけて一生懸命見つめながら、ああ立派な脚でござる。これは
絹枝嬢と同じような脚でござる。さぞ走ると早いことでござろうと独りで考えて、
『あなたの脚は生まれながらに動かす商売に出来ている』
といったら、
『長いでしょう』
と自分で眺めて、パチンと向う脛を叩いた。
『僕も叩いて見てもいいですか』

と訊ねたら、
『いい』
というから、パチンと叩いた。
別に変わった音色が出たわけではなかったが、肉がしまっているので、
音は丁度絹枝嬢のと同じだった。


『この脚なら走っても早いだろうな』
『早いわよ、孫(そん)選手だってどうです』
と威張った。なるほど、半島が生んだ、マラソンの超人、
孫基禎選手は彼女の仲良しであった。
グルネワルトの杜に二十四年待望の大日章旗を揚げて、大いに日本のために気を吐いた
孫選手、こうなると彼女の鼻息は荒い。
『内地の方が勝つより私何倍か嬉しいですわ。朝鮮生まれの人が全日本の爲めに
働いたなんて、こんな愉快なことはありません』
『郷土愛だな』
『私、あの朝、孫さんが勝ったラジオ聞いていて、思わずコドモを握りつぶしたのよ』

『え !  子供って ?』
『鶏のコドモ』
『鶏の ?』
『ええ、卵を握り潰したの』
やれ、安心した。子供を握り潰したというから、また
彼女の一粒種を本当にやったのかと思った。なるほど、
卵なら鶏のコドモに違いない。
『女ではあなたが選手だ』
『でも、私なんか』
という。謙遜しているんだ。この位の体格になると謙遜する嬌態(しな)だって容易じゃない。

邦坊2.jpg


『私、大きいでしょう。大きいと大根芸といって、ニューとしているからアラがよく見えるのよ』
『損だな』
『ええ損ですわ』
『そのかわり、夫婦喧嘩の時は得だ』
『ところが、うちのひとは私より大きいから・・・』
それじゃ、何にもならないや。
『あなたは幾つのとき結婚したのですか』
『二十歳の時・・・』
『恋愛結婚ですか』
『見合いみたいな、恋愛みたいな・・・』
『変な結婚だな』
『私の兄のお友達だったのです』
『そこで互いに交際している内に、つまり・・・その遠くて近きは男女の仲、
近くて遠きは聾の中って・・・』
『それ何ですか』
『浪花節にあるんですよ。つまり、何時しか恋愛になったのでしょう』
『いいえ、交際はしたのよ。でも、兄の家で見合いして結婚したのだから・・・』
『でもあなたの主義は、恋愛至上主義だというではありませんか』
『そうよ、恋愛至上主義ですわ』
『それに、見合いみたいな、恋愛みたいな、ややこしい結婚なら
あなたの主義と違うじゃないですか』
『私がそうじゃないから、結婚を前提とした恋愛至上主義なの』
『つまり、夢を持っているんだな』
『そうですそうです』
と彼女が嬉しそうに、
『自分の無い世界だから始終夢を追っているの、この気持ちは芸術家にはいいことでしょう』
なるほど、こいつ頭がいいぞ。

『その夢をあなたは大事にしなさい』
『モチよ、踊りのうるおいもこの夢から自然に生まれ出るのじゃないでしょうか』
といって、今度は彼女は膝坊主を叩きながら、眼を細くした。二重瞼の茶色の瞳だ。

彼女の兄上も、夫君の安漠氏も、ともに日本の大学に留学した
当時の知日派インテリグループ。
同じグループ内での彼女の結婚は想定内、必然な出来事だったのでしょう。

弟子がソーダ水を運んで来た。僕はストローをすぐ取ったが、彼女はぼんやりとまだ
眼を細くしている。・・・・あんまり姫には夢を見過ぎる。

『もう、夢はその位にして、次の問答に移ります』
といって、
『あなたは男役ばかりやって、女役はどうしてやらないのです』
『女役やりたいけど、私がこんな背が高いでしょう。私の相手の男役なら、どうしても
五尺七寸くらいなくちゃいけないわ』

五尺七寸は約172センチ。
こちらの画像から、
男役が多かった当時の彼女が偲ばれるでしょうか。

崔承喜7.jpg

崔承喜9.jpg

五尺七寸・・・・か。なるほど五尺七寸の相手をさがすのは骨だ。
『それで、男役ばかりやっているんですな』
『ええ、ノッポも困るわよ』
という。僕、うっかり、
『この脚を少し折るといいんだな』
といったら、
『エヘン』
と次の部屋に咳払いあり。
『夫君がいるんですか』
と親指を出して見せる。
『ホホホホホホホ』
と彼女が笑っていた。



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Last updated  2015.10.19 11:19:08
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