テーマ:鉄鋼(28)
カテゴリ:鉄鋼
鉄鋼各社の中長期の経営計画が14日までに出そろった。いずれも国内での大規模な能力増強は抑え、海外需要の獲得に力を入れる。ただ新興市場の拡大を見込んで海外勢も積極姿勢を打ち出している。日本勢がこれからも世界市場で存在感を保てるかは、各社が公表した海外強化策をどれだけ早く具体化できるかにかかっている。
「グローバル市場で存在感のある企業グループ」。神戸製鋼所の佐藤広士社長は同日、「中長期経営ビジョン」の発表記者会見で海外市場の開拓に力を入れる方針を強調した。5~10年後に連結売上高は2008年度比約4割増の3兆円超、経常利益は同3・3倍の2000億円超を目指す。そのうち国内売上高は1兆5000億円でほぼ変わらない。現地生産と輸出を9000億円増やし、海外比率を約5割にする計画だ。 「成長市場への進出深化」と銘打ち、線材や溶接材料、低品位原料を使った製鉄プラントなどの建設を検討する。ただこの日明らかになったのは、25億円を投じる中国江蘇省での自動車サスペンション用アルミ部品の工場建設のみ。海外での設備投資額など具体的な成長戦略は出なかった。 鉄鋼各社は09年春に3カ年の中期経営計画を発表する予定だったが、その半年前に発生した金融危機の混乱で多くの会社が先送りした。JFEホールディングスのみが「当面の経営方針」を09年4月に発表。年が変わって景気が落ちついてからこれまでに新日本製鉄と日新製鋼が発表したが、住友金属工業は公表を当面見送るもようだ。 国内市場が低迷するなか、発表済みの各社も必然的に世界市場の攻略がテーマとなった。 生産規模に触れたのが新日鉄。11年度までの中計は「世界経済が成長する時期に成長路線に転換するための助走期間」(宗岡正二社長)とし、一方で5~10年かけて鋼材供給能力を現在の年約4300万トンから5000万~6000万トンに引き上げる。増加分は「拡大する世界の鉄鋼市場のなかで現在のシェアを維持するのに必要な量」(太田克彦執行役員)という位置付けだ。 足元ではインドの鉄鋼大手タタ製鉄との自動車用鋼板の現地合弁生産や、ブラジルの持ち分法適用会社ウジミナスの粗鋼生産能力の拡大などがあるが、これらは今回の計画策定前から検討していた案件でもある。 JFEスチールは原料立地・消費立地による海外での一貫製鉄所建設の検討を改めて盛り込んだ。日新製鋼も中国の宝鋼集団の製鉄所への出資や表面処理鋼の海外工場の建設の可能性を探る。ただいずれも具体化のメドは立っていない。 各社は景気拡大が続く06年度に始まった前回の中計では量より質の向上を目指し、海外メーカーとの差別化を狙える高級鋼への集中投資を打ち出した。今回も研究開発を重視する姿勢は変えていないが、この3年間で中国や韓国などでは製鉄所の新設・増強が相次いだ。 結果として09年の世界の粗鋼生産ランキングでは新日鉄やJFEなどが総じて08年から大きく順位を落とした。 海外に目を向ければ、今も韓国の現代製鉄が同社2基目となる高炉を11月下旬に計画より1カ月以上前倒しして稼働させるほか、ポスコもインドで年内に製鉄所建設に着手する計画だ。中国大手の投資計画も依然として残っている。 鉄鋼設備の新設には数百億~数千億円の投資が必要になる場合も多く、日本企業は検討に時間をかけて慎重に判断してきた。市場変化のスピードが加速するなか、今まで通りの手法で海外の顧客を囲い込めるか。各社の決断にかかっている。(日経産業新聞 中尾良平氏による) 【上記の感想】 素材も海外で生産する流れ。 こういう記事を読むと、日本国内では、景気回復感がある層とない層に割れるだろうなと思う。 現在の鉄鋼会社の海外比率を、四季報で調べてみた。 新日鉄が29%。 住友金属が42%。 神戸製鋼所が33%。 JFEが34%。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010/04/15 01:53:59 PM
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