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カテゴリ:読書
四国の徳島が舞台です。
昭和20年に赤ちゃんの時に捨てられていた珠子が20歳になるまでのお話です。 同じ境遇の子供たちと共に施設で育つのですが、清廉で美しく花を愛する美少女に育ちました。 他の子供たちと比べてもどうしても愛されずにはいられないタイプです。 施設の園長夫妻も先生も珠子をことさら気にかけて可愛がるのです。 珠子は美しくて、大人しくて、優しそうで、周りの優しさを受けてすんなりと幸せな人生を 曲がらずに歩んでゆきそうだな…なんてことを思っていたら、これが意外とそうではないのです。 もちろん、反抗的になったり、裏表がある訳ではもちろんないのです。 が、それがたとえ彼女を思った他人の真心だったとしても、常に彼女は最終的には自分の心に 従って生きることを選ぶのです。 物語は彼女が15歳から20歳になるまでの間のお話です。 その短い間にも彼女には何度か人生の選択の瞬間がおとずれるのです。 その人生の選択の場面で面白いなと思ったのは、彼女の見た目と雰囲気で彼女の周りにいる 人間が彼女に期待する姿と、彼女の本音がズレているなー、というのが読んでいて感じる所です。 基本的に珠子はどうあっても良い娘なのですが、それでもなかなかそうそう一筋縄では他人の 思惑通りにはいかないのです。 ずっと他人の中で育ってきた人生だったので、どこか人間関係について冷めた所があるのを 感じます。 もちろん彼女は困っている人を見捨てるようなことは決してないのですが、でも自分の心には 忠実に生きる女の子だな、と。 常にどこか他人を惹きつける魅力のある女の子で、周りにいる人には好かれて大事にされる タイプだけれど、実は本人はなかなかにしたたかな面があるのです。 そんな人間性を感じるのが良いです。 彼女の暮らした剣神社やそのまわりのお山の描写が良いです。 自分だったら決して耐えられないだろうな、と思うような寒くて寂しい風景ですが、そんな所 に彼女みたいな人がいたら、本当にこの世のものとは思われない美しさだろうなー、と想像 しただけでほ~となります。 彼女の好きな花の風景、中でも、キレンゲショウマの群生はとても素敵です。 できるならその風景を自分の目で見てみたいです。 そして、その彼女が大好きな花が縁での運命的な出会いがあったりします。 「いったい花は、誰に見てもらうために咲くのか」 なんて、そりゃもう運命ですよね。 今まで、他人に与えられた道の中から選択してきた彼女の、硬く青い蕾だった少女の時代が 終わります。これがあの少し冷めた目線の珠子と同じ娘かしら、と思う位情熱的です。 とうとう自分の欲しい物を見つけたんだなぁ…。感慨深し~。 え、ここで終わり?と、もう少し読みたいような、けれど、確かに作者あとがきにあったように、 この先は読まなくても分かるような気もします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009年02月21日 01時41分01秒
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