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カテゴリ:映画「シネリーブル神戸」でお昼寝
アリス・ディオップ「サントメール ある被告」 予告編で興味を惹かれて見ました。アリス・ディオップという監督の「サントメール ある被告」という裁判・法廷映画でした。
生後15か月の赤ん坊を潮が満ちてくる海岸に置き去りにして、殺人の罪を問われているアフリカ系の移民の女性ロランス・コリー(ガスラジー・マランダ)の裁判の成り行きを描いた作品でした。 ボク自身の中にある「男性性」というか、無意識なのですが、「女性」や「未開社会」に対する、無知や差別性ということを、意識の深いところから揺さぶられる印象の作品でした。 サント・メールというのはフランスの地名だそうですが、フランス語の音としては「聖なる母」という響きとして聞こえることばだそうです。 ヨーロッパ社会全体、あるいはカトリックのフランスにおいては、まあ、「聖なる母」というのは、もちろんマリアのことだと思いますが、この映画ではアフリカからの移民の女性、被告であるロランス・コリー、裁判を傍聴する小説家であるラマという、二人のアフリカ系移民の、一世、ないしは、二世の女性を中心に描くことで、まあ、おおざっぱに言えば、アフリカを離れ、「ヨーロッパ的キリスト教文明」を肯定して暮らすアフリカ系の人々の精神の奥にある、まず「植民地的な忍従の歴史」、そして、その、また、奥にある「アフリカ的文明」の根っこのようなものが、妊娠する、出産する、育てるという、人間の生きものとしての原初的な体験をする中で、ヨーロッパで暮らす彼女たちに揺さぶりをかけるとでもいう映画だと思いました。 裁判は、ヨーロッパ的な「聖なる母」を肯定する検事やロランスの愛人である白人男性。あたかも文化人類学者のようにロランスを問い続ける、白人の女性判事。ロランスを徹底的に擁護する白人の女性弁護士。自らの妊娠に不安を感じながら傍聴をやめられないアフリカ系の女性小説家という登場人物たちの取り合わせで進行します。 ここまで、分かったような調子で書いていますが、実は、映画が描こうとしている、この裁判で争われている眼目は一体何なのかということについて分かったわけではありません。ただ、この映画の製作者、まあ、監督が見ている人間にとって「わかりやすい」かもしれない図式的な描き方を避けて、登場人物それぞれの発言の内容や、行為のシーンの意味について、聞き、見ることを求めている映画の作り方なのだということは強く感じました。で、考え込んだわけです。 あたかも、ドキュメンタリーのように進行しますが、映像の組み合わせとか、判事役、弁護士役の描き方は、ドラマそのものです。で、そこが、とても面白いのですが、差し出された問いかけの深さには、唸るばかりでしたね(笑) 帰宅してチッチキ夫人に、そのままいうと、彼女は翌日出かけて見てきたようです。 「パンフレット買っちゃった(笑)。」 監督 アリス・ディオップ 製作 トゥフィク・アヤディ クリストフ・バラル 脚本 アリス・ディオップ アムリタ・ダビッド マリー・ンディアイ 撮影 クレール・マトン 美術 アナ・ル・ムエル 衣装 アニー・メルザ・ティブルス 編集 アムリタ・ダビッド キャスト カイジ・カガメ(ラマ:傍聴する小説家) ガスラジー・マランダ(ロランス・コリー:被告) バレリー・ドレビル(裁判官) オレリア・プティ(ヴォード) グザビエ・マリー(リュック・デュモンテ) ロベール・カンタレラ(検察官) サリマタ・カマテ(オディール・ディアッタ) トマ・ドゥ・プルケリ(アドリアン) アダマ・ディアロ・タンバ(ラマの母親) マリアム・ディオップ(ラマの姉妹) ダド・ディオップ(ラマの姉妹) 2022年・123分・G・フランス 原題「Saint Omer」 2023・07・19・no91・シネ・リーブル神戸no201 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.08.16 01:17:30
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