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カテゴリ:映画「シネリーブル神戸」でお昼寝
ビクトル・エリセ「ミツバチのささやき」シネリーブル神戸 ビクトル・エリセ、1940年生まれのスペインの監督です。84歳ですね。1973年に「ミツバチのささやき」で登場した方ですが、その彼が31年ぶりに新作映画を撮ったということが評判になっています。新作の題名は「瞳をとじて」だそうですが、その公開を記念してビクトルエリセ特別上映と題して「ミツバチのささやき」が上映されていて、続けて1983年の「エル・スール」も上映されるようです。これがそのチラシです。上の写真は、入場の際に頂いた絵葉書です。 以前も書きましたが、同じ映画をくりかえし見るという性分ではありません。しかし、この監督は違いますね。実は5年ほど前に元町映画館で見ました。70年代の半ば、まだ20代だったころ見たという記憶だけはあったのですが、まあ、あてにはなりません。それが二度目か、ひょっとしたら三度目の鑑賞でした。
で、63歳を過ぎるころから映画館をウロウロし始めて7年ほどたちますが、その間に見た500本ほどの作品の中で、ボクとしては珍しいことですが もう一度見たい映画!記憶に残る1本!の地位を獲得しているのが、この「ミツバチのささやき」です。 で、特別上映会の初日に駆け付けました。以前見たときに、ボクの意識の中にあったのは 「スペイン内戦とビクトル・エリセ」という構図でした。この映画が撮られた1973年というのは独裁者フランコがまだ存命のころです。だから、まあ、そんなに追いかけて読んだわけではありませんが、この映画に対する批評をなぞりながら見た気がします。 で、今回は、とにかく ボンヤリ見よう・・・と思ってやって来ました。 始まりました。村にやって来た映画を見る子供たちの中に、あのアナちゃんがいます。スクリーンにあらわれる怪物、丘の上から眺める草原の向うにある小屋、ズット向こうまで続いている線路、レールの響き、遠くに見えたと思ったら、あっという間に近づいてくる機関車、小学校の教室、床に倒れているいるおねーちゃんのイサベル。 「そうだ、あっこに一人で行ってみよう!」 お腹を空かせて隠れているおじさん、おじさんの手の中に消えた懐中時計から聞こえてくるオルゴールの音色。 「そのオルゴール、どうしてお父さんが持っているの????」 「あの、おじさんのところに行ってみなっくちゃ。」アナちゃんの瞳の奥に広がっていく「おどろき」や「ふあん」や「よろこび」の中に、69歳という年齢を忘れて入っておいでと映画は語っていました。ドキドキしました。 「これは、すごいで、見といたほうがええ思うで。」 あとから見に行ったチッチキ夫人の感想でした。 ナルホド! ですね。あの子どもたちは二人ボッチなんですね。 あの日、スクリーンに何度も映し出される、あの、美しくも、広い広い世界で一人ぼっちになったアナちゃんは、あの小屋で不思議なおじさんと会ったんですね。 本当は生きていたおねーちゃんとは違って、 血の塊だけ残していなくなった、あの、おじさん・・・。生まれて初めて、いなくなってしまうこと、よくわからなかった死んでしまうことの不安のなかをさまよっているアナちゃんを、あの、映画に出ていた怪物が救ってくれるんですね。 ずっと見開いていた瞳をようやく閉じて深い眠りつくアナちゃんに、老人は、やはり、ほっと胸をなでおろして映画は終わりました。拍手! 文句なしの傑作でした。どこかで上映してくれることがあれば、もう一度見たい作品です(笑)。 監督・原案 ビクトル・エリセ 脚本 アンヘル・フェルナンデス=サントス ビクトル・エリセ 撮影 ルイス・クアドラド 美術 アドルフォ・コフィーニョ 編集 パブロ・G・デル・アモ 音楽 ルイス・デ・パブロ キャスト アナ・トレント(アナ) イサベル・テリェリア(イサベル) フェルナンド・フェルナン・ゴメス(父) テレサ・ギンペラ(母テレサ) ケティ・デ・ラ・カマラ(ミラグロス女中) ラリ・ソルデビリャ(教員) ミゲル・ピカソ(医者) ジュアン・マルガロ(逃亡者) エスタニス・ゴンザレス(警官) ホセ・ビリャサンテ(フランケンシュタイン) 1973年・99分・G・スペイン 原題「El espiritu de la colmena」 2024・01・26・no012・シネリーブル神戸no218 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.05.17 23:59:40
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