カテゴリ:SS
お手紙SS=手紙の長さ→原稿用紙3枚のローカル通称。
2/3の第2話、イメージ青。 ※※※※※ 私は大海原の真ん中で仁王立ちしている。 なぜと問われて返す声はない。 どうやってと訊かれて返す答えもない。 そんなことはこちらが知りたいくらいである。 とにかく、気づけば海のど真ん中でポツンと一人立っていたのだからしようがない。 空は晴れ晴れ、波碧くしてどこまでも続く大海原。 これで自分の顔色も真っ青ならば、この世界は青色天国である。 天を仰げば高い青空、足元は深い海原、すべて何もかも、ひたすらに抜けるほどにうんざりするほどに色は一つきりしかない。 しかも暑い。容赦なく暑い。 遮るものは何もないのだから、暑いのも当たり前なのだろう。 しかし太陽などないのである。 ついでに雲もない。 青以外のものはないのだ。 「困っておいでだね」 背中から声がした。 聴き慣れた馴染みの声である。 「どうしようか? 陸地はどこにも見えないぞ?」 試すようなからかうような、実に癪に障る声である。 「戻りたいか? 戻らないか?」 「ずっと立っていたら乾涸びるぞ」 「その前に沈んでしまうかもしれないなぁ」 「いやいやお空の彼方へ吹き飛ばされるかもしれない」 「どちらにせよ、このままでいいとは思うまい?」 「どうする?」 「どうする??」 暑い。 流れる汗まで青いというのはどういうことだろう。 自分が青と同化しているのかもしれない。 それはつまりこの世界になるということで、では自分というものはこの世界そのものになるのか、たんに失せてしまうということなのか。 さあさあと追い立ててくる、背後からの自分の声に腕を組む。 このままでいいわけがない。 沈めば呼吸が出来なくてさぞや苦しいことだろう。 飛べば気圧で肺が潰れてさぞや痛いことだろう。 乾涸びるのは悲しいし、涙も青くて自分も青臭くて嫌になる。 私は一歩踏み出した。 水面に轍は生み出されず、そこには何も生じない。 されど身体は前へと動いた。 右も左も、北も南もわからない。 わからないから進むのだ。 視界良好天気上々、いずれ嵐もやって来るだろう。 それはそれで楽しいものだと、少なくともこの嘘っぱちのでたらめの平穏青色天国よりは楽しいだろう。 私は果てない海をあてどなく彷徨う旅へ出る。 ※※※※※ 前回がネガティブなので今回はポジティブ。 1と2で対比、3でオチになるはずですがあまり効果になっていないのが痛いところ。 明日はオレンジです。 ちょこっと修正かけてまた後ほどに。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.06.29 18:09:54
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