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カテゴリ:たまにはシリアス
リハビリは、分厚い扉を果てしなくノックしているようにも、自分の方を向いてくれる脳細胞を求めて荒涼とした脳細胞の街をさまよっているようにも感じます。
最近は、リハビリ信号が脳細胞に届くかどうかは結局、確率の問題ではないかという気がしています。 確率の問題なら、結果を得るには母数を大きくするしかありません。 つまり動作の反復回数次第ではないか。 私の経験では、顕著な効果に結びつく反復回数は、どうも一日当たり千回レベルのような気がします。 「千回」と聞くと驚かれると思いますが、私自身、別に“死ぬ気でがんばろう”と思っているわけではありません。そうではなく、 1)余裕を持って千回出来る程度の軽い動作を繰り返す、 2)補助者や器具・設備の助けで動作が楽になるなら、回数をこなすためにも出来るだけ楽な方法を選ぶ、 3)どんな動作を反復するかはOTやPTなど専門家によく相談する、 などの条件が整えば、ということです。そうでないと、頑張っても逆効果になり兼ねません。私自身、頑張った結果、麻痺を悪化させた苦い経験があります。 私の場合、適切なやり方で千回反復できたときは、後述するように、しばしばその日のうちに手応えを感じました。 五百回レベルで終えた日は、残念ながらそういうものを感じたことはありません。 「千回リハビリ」は、普段は「下手な鉄砲も数撃ちゃ当る」くらいの気持ちで取り組んでいます。 「下手な鉄砲」とは、「動作自体は多少不十分でもかまわない」の意味です。筋トレではありませんから。但し、 1)大脳半球間抑制の不均衡への対策、 2)相反する二つの動作の訓練は同じ日にはやらないこと (経験則では、同じ日に両方やると、どちらも効果が上がらない)、 の二点には気をつけています。 「数撃ちゃ」は、もちろん「一日に千回やる」。 「当たる」は、「その日のうちに本人に分かる手ごたえが返ってくる」という期待です。 私自身のささやかな経験の中から、こう考えるきっかけとなった事例を二つご紹介します。 (事例1) 私は今年の初めからプールで麻痺側片足での爪先立ちを始めました。 水の外では全くできなかった動作ですが、プールの中では簡単にできました。 私は初日から、二百回ごとに休憩を入れながら五回、つまり千回やりました。 すると、初日終了後、麻痺側の足全体にほのかな火照りのようなものがはっきりと感じられました。 四カ月続けたら、待望の水の外でも踵がなんとか1センチほど上がるようになりました。 (事例2) 私は事例1の成功後もよく足先を引きずって躓くので、専門家のアドバイスで、「つま先立ち」を中断して「つま先上げ」(=足の指を反らす動き)に取り組みました。 苦心しましたが、どうにか、初日から千回こなしました。 すると、初日終了後、なんと、足の指の間に風が通るような爽快感を感じたのです。 一カ月経った現在、つま先の拘縮は明らかに緩和しています。 躓きの方も徐々にですが改善し始めました。 リハビリと言うと、何年にもわたる気の長い作業、というイメージがありますが、「千回リハビリ」には、合理的に取り組んでやり方が的中すればたちまち手応えが返ってくる、という魅力があります。 わずかでも「手応え」らしきものがすぐに感じられたら、これは随分とリハビリの励みになります。(以上) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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