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フライブルク日記

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2011/12/15
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昔から不思議でした。

自家製のパンは、日がたつと、ふわふわ度が一気に消えてしまうのに、買ったパンはどうしていつまでもふわふわだったり、ポリ袋入りなのにクラストがかりっとし続けているのか。

やっぱり技術の問題なのか、そもそもオーヴンが違うからなのか、両方なのか、、、、。

以前、隣家に住んでいた友人が、たまたまパン焼きマイスターのご子息なので、聞いてみたことがあります。

そしたら彼は、「あったり前じゃないか、市販のパンはね、化学物質たっぷりなんだから」と肩をすくめました。

そう言われても、なにがどうなっているのかは、不明確。

昨晩たまたま、南西ドイツ放送テレビの「安いプチパン」というタイトルの番組を見ました。

手作りでパン屋を営んでいた夫婦が、安い大量生産のパンに対抗できずについにギブアップして、店を閉じるまでの過程をおいつつ、大量生産のパンの実態を明かしたドキュメンタリーです。

工場生産されるパンや、大きなパン屋は、今ではほとんどパンミックス粉を使っているそうです。
つまり、バゲット用粉ミックス、ライ麦パン用粉ミックス、カンパーニュ用ミックスなどなどを購入し、パン職人はただ水とイーストを加えるだけ、あとは機械がこね、発酵させて、最後の成形だけを人間の手でするのです。

この粉ミックスには、アミラーゼなど、さまざまなエンザイム、つまり酵素が添加されているそうです。

この添加酵素はパンの質感、ふくらみ、日持ち、味、しっとり感、その他もろもろの性質を改善するので、パン用の酵素メーカーは日夜、研究に研究を重ねているのだとか。

パン用酵素のメーカーの大手はデンマークのある会社。

ここでは、ポルチーニなどのキノコ、カビ、細菌を培養して、これらの生物がつくりだす触媒をとりだして、製パン用に生産しているそう。

テレビではある実験を見せてくれました。

ある酵素を添加した生地で山型食パンを焼いて、添加しなかった生地の食パンと比較した実験です。

添加しなかったふつうの生地の食パンは、ポリ袋に入れて8週間おいた後にはぱさぱさになって、二つ折にすると、ぽきっと割れてしまいました。これがふつうですよね。

ところが、酵素を混ぜた生地で焼いた山食は、8週間たってもふわふわでしっとり。二つ折りにしても、ゴムのようにぐんにゃり曲がって、割れない、折れないのです。
メーカーの研究者は、自慢そうに説明していました。
酵素によって粉のでんぷんがゆっくりと分解されたからだとのこと。でんぷんが分解されたら、糖になるはずですけどね。どうして、それがこんな弾力をもたらすのか、素人の私にはわかりませんが。

ドイツでは、パン用の粉に添加される酵素は20種類以上あるそうです。
しかも、酵素は「添加物」とはみなされていないので、表示の義務や制限値とかはないのです。

で、食物を監督する機関は、パンに含まれている添加物は検査しないし、できないのだそうで、もっぱらパンの味と見た目を調べるだけなのだとか。

パンにはほかにも様々な化学物質が含まれていて、その種類は200以上と、食物の中で、もっとも添加物の種類が多いのだとか。これも知りませんでした。これまではソーセージが一番添加物が多いと思っていました。

酵素その他の添加物が健康にどのような影響を及ぼすのかは知られていないそうです。

ただ、いろいろな添加物を同時に食べたために、相乗効果が起こる心配はあるし、年々増える子供の食物アレルギーの原因の一つも、こうした添加物にあるのではないかとする専門家もいるようです。

たとえ、健康に影響なくても、いやですね、こんなにいろんな物が入った食物は。

ドイツでは、市販のミックス粉を使わずに、粉の調合から手作りする小さな個人経営のパン屋はどんどん姿を消しています。
昔、フライブルクに来たばかりの頃は、近くに何軒も小さな手作りパン屋があったのに、今では一つしかありません。あとは、大きなチェーン店の支店ばかりです。
私がパンを焼くようになったきっかけの一つも、買ったパンはおいしくないからです。

個人経営のパン屋は、大量生産で売るチェーン店のパン、それよりもさらに安いスーパーのパック入りパンには対抗できないのです。

チェーン店のパン屋には、成形されたパン生地が輸送されてきて、店ではただオーヴンで焼くだけ。
これが「焼きたてパン」として売られるのです。
そして、これらのパン生地にも、酵素その他がしっかり添加されているらしいのです。

気になるのは、消費者が買う粉にも酵素が入っている可能性があるということ。

スーパーのパン/ケーキ材料売り場には、自家製用のいろいろなパン粉ミックスが売られています。あれにも酵素が入っているのかは、誰にもわかりません(メーカーは情報を出さないし、消費者センターでは調べられないから)。

私は地元の製粉所で、地元の麦から製粉したての粉を買っているので、まあ安心ですが。

でもね、
市販のパンの質感がいつまでも保たれるのが、酵素のおかげらしいということがわかっただけでも、ほっとしました。

じゃあ、私のバゲットの気泡のなさの原因はなんなんだろう、、。
やっぱり技術のなさなんでしょうね。
これも酵素のなさのせいにしたいところなんだけれど、、、。

日本はお米の国なのにもかかわらず、各地で自家製の天然酵母まで使って、パンを手作りしている小さなお店があちこちにあるようで、すばらしいです。そういうお店がやっていける、という事実自体がすばらしい。
ドイツでは無理だろうなあ。





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Last updated  2011/12/15 09:29:30 PM
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