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Aug 31, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(1)

 寛政四年(一七九二年)九月九日江戸城では重陽(ちょうよう)の節句を

迎え、諸大名は登城し、将軍に祝辞を述べ菊酒をふるまわれていた。

 一方、庶民は菊酒のかわりに祝いの栗ご飯を食べ喜びに浸っている。

人日(じんじつ)、上巳(じょうし)、端午(たんご)、七夕(しきせき)、重陽は

五節句といわれ幕府の重要な式日のひとつであった。

 重陽の節句を終えた十一日から芝明神のだらだら祭り、十五日は神田

明神祭礼と江戸の町の秋の行事がはじまるのだ。

 その日の夕刻から厚い黒雲がわきあがり、千代田のお城の上空から

大川方面に黒雲が千切れるように吹き流れ、生暖かい風がいちだんと強

まってきた。所謂、西風である。

 人々は江戸城の天守閣まで消失した、明暦の大火を思いうかべ不安げ

に空を仰ぎ見ている。

 その中を駕籠を交えた行列が、西の丸から神田駿河台へとむかってい

た。先頭は提灯をもった小者と護衛の武士が続き、駕籠の後ろには挟み

箱を担いた小者に警護の武士が続いている。

 駕籠脇には用人が一人付き添っている。

 先頭を行く小者のもつ提灯が今にも消えそうに風に揺れている。

「重陽の節句というに嫌な風じゃな」

 駕籠の中から野太い声がした。

「左様にございますな」

 駕籠脇の武士が応じた。

「今年は一度野分(のわき)に襲われ甚大な被害をだした。この風も野分の

大風の前触れでなければよいがの」

 駕籠の主と傍らの用人が語らっている。この時代には台風という呼び名は

なく、野分の風と呼んでいた。明治となって台風と呼ぶようになったのだ。

「何者か?」

 突然、提灯をもつ小者の背後の武士が前方の闇に向かって大声を張り

上げた。辺りは鬱蒼と樹木が繁り、風を受け梢が唸り声あげている。

 駕籠の前に人影がむらむらと立ち塞がった。いずれも黒装束の異様な

男たちである。ひしひしと身内に殺気を感じさせる一団であった。

「大目付、嘉納主水殿。お命を頂戴つかまつる」

 群れの中央から低いが肺腑をえぐるような声があがった。

「その方等、大目付さまの行列と知っての狼藉か?」

 駕籠脇の用人が大刀を抜き放ち落ち着いた声を発した。

 背後の警護の武士も駕籠脇に駆け寄り、一斉に抜刀した。

「根岸、こ奴等は手強い、油断するな」

 野太い声と同時に駕籠から、紋服姿の偉丈夫が姿を現した。

 武骨な拵(こしら)えの大刀を手にし、恐れるふうも見せず襲撃者の

群れを眺め廻している。

 この武士が駕籠の主で居合抜きの達人として知られた、大目付の

嘉納主水である。

「ざざっ」と、雑草を踏みしめ刺客の群れが散開した。無駄のない見事な

動きである。一瞬、壮絶な空気がみなぎった。

 主水が放胆にも一歩前進した、それを眼にした二人の刺客が主水を

標的とし、無言で跳躍した大刀が闇を裂いて主水に襲いかかった。

「むっ」無言の懸け声と同時に、愛用の正国が鞘走り闇夜の空気を裂いて

煌めいた。一人は宙で両断され、必殺の攻撃をかわされた一人が着地と

同時に袈裟に肩先を割られ草叢に転がった。 

 これが嘉納主水得意の居合の業であった。襲撃者の輪が広がった。

 それを見た警護の武士が主人を守るために応戦に転じた。

 大刀と大刀が火花を散らしている。 





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Last updated  Sep 1, 2011 11:37:13 AM
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