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カテゴリ:小説
帰りの車の中で僕は自分自身を呪っていた。
あの初めて彼女が泣いた日。そのときにこそ僕は駆けつけるべきだたのだ。肩を抱いてやり「大丈夫だよ。」と言ってやるべきだった。そしてその後も、毎日電話を掛けてやるべきだった。僕はここにいる君は独りじゃないと、しっかり感じさせてやらなければいけなかったのだ。 全ては遅かった。遅すぎた。だから彼女は消えてしまったのだ。責任は全て僕にある。 やりきれない思いを抱えて僕は仕事に戻った。ほかに選択肢はなかった。 彼女が消えてからの僕は、ことさら精彩を欠いていた。仕事上のトラブルは頻発し僕の処理能力を超える事態が多発した。週に4日は店に泊り込み、机の上や車で仮眠を取る日々が続いた。そんなことが長続きするはずは無く。過労が原因である日突然、仕事に行けなくなってしまった。抑うつ症だったのだろう。電話にも出る気がしないし、食事もとる気がしない。1週間僕は寝込んだまま職場放棄を続けた。数日後会社から上司が自宅へ来た。 解雇通知だった。もう僕はそんなことはどうでもよくなっていた。さっさと退職願を書き上げ上司に渡した。その後も2週間僕は寝込んだままだった。 今思えばあの頃に歯車が狂い始めたのだろう。僕の人生は転落への方向に転がり始めた。 それも勢いよく。「それがどうした。」そういうしかない。これまでだって順風満帆なんてことは無かったんだ。いまさら少しくらい天秤が傾いたところでどうと言うことは無い。 一つだけ僕にはやらなければならない事ができた。 そう。彼女を探し出して謝らなくてはいけない。この事だけは頭に焼き付いて6年たった今も忘れずにいる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004/11/22 11:12:24 PM
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