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カテゴリ:日本の城と城下町
11月24日、31年ぶりに訪れた岡崎城。その城址公園の一角にある、茶室・城南亭で過ごした時間のことも、忘れないうちに記録しておきたい。それは思いがけずに出会った初めての煎茶体験、そしてゆったりと流れる贅沢な時間の記憶だ。 この日、蒲郡に続いて訪れた岡崎。この地に私が導かれたのも、名古屋で開催中のボストン美術館展を訪ねるという大目的があったからこそなのだが、その目的を果たすべく帰路を急ごうと、園内を茶室の前にさしかかったところで足が止まってしまった。 そこで目にした鮮やかな赤い紅葉、そして落ち着いた茶室の佇まい、その入口に掲げられた呈茶の案内、その誘惑に気持ちが揺らいだ。多少お腹も空いて一服したいという思いもあった。せっかく岡崎城までやって来て、無理に先を急ぐこともなかろうと、その瞬間、ボストン美術館展を訪れることを断念する。 呈茶というからには、抹茶のつもりで茶室の入口まで来たところで、初めてそれが煎茶であることに気付く。煎茶の飲み方については何の知識も持ち合わせていない私達であったが、煎茶を頂く機会もなかなか無いもの。それもいい巡り合わせだと思い、立礼の茶室である城南亭の中へと足が吸い込まれていったのである。 実際、その後で知らされたことには、通常は抹茶の呈茶であるところ、5、8、11月の土曜日に限って煎茶が出されるとのこと。その日、11月最後の土曜日と丁度重なっていたことが、その最後のチャンスに遭遇する幸運に恵まれたというわけだ。時間も夕刻へと差しかかるころ、まさに今年最後の煎茶の時間を楽しませて頂いた。 床の間に掛け軸とお花、そし御香。赤い野点傘の下にはお点前の飾りつけ。普段稽古や茶会に目にする、抹茶席のしつらえと異なることが、また新鮮である。そして和菓子とお茶を出されたところで、さてどうやって戴くのか?ということから、煎茶初体験が始まったのであった。 蓋(落とし蓋)のついた茶碗、その中には茶葉がたっぷり。それは茶閉(ちゃっぺい)と呼ばれる作法。蓋を少しずらして、開いた隙間から茶葉を避けるように啜って、お茶を頂く。その呼び名も、すすり茶。最初60℃、続いて80℃、100℃と、お湯を注ぎ足して戴く。和菓子は、抹茶の場合は先に頂くが、煎茶はお茶と交互に頂く。抹茶は三口半と、一瞬でお茶を頂いてしまうが、煎茶の場合はお茶と戯れる、そんな表現をされていた。 席主は地元岡崎で活躍されている煎茶の先生。いろいろとお話を伺い、また質問にも答えて頂き、お茶の道具も一つ一つ教えてもらった。抹茶とは異なる道具がまた興味深く、同じようにお高いものであることも併せて知る。その間にも干菓子やら、おやつやら頂いて、またお茶も注ぎ足して頂き、それで450円とは得したような申し訳ないような。。。
と、ついその心地よさに気が付けば1時間近くも寛いでしまったのであった。 31年ぶりに訪れた三河・岡崎城。当時は無かった茶室で過ごした時間は、岡崎城での時間を印象深いものにしてくれた。また訪れてみたいと思った。特に徳川家康ゆかりの岡崎の地には、数多くの重要文化財の寺社仏閣もある。次回はレンタサイクルを借りて史跡を巡り、その締めくくりにこの茶室を訪ねてみたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.01.05 20:22:41
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