第3部ミスター浜名湖初日の夜、家に帰ってしまうと朝きついからといって幸二君が駐車場に泊まった。 そういえば幸二君はいつもこんな感じで僕に付き合ってくれる。 こんなにも気持ちよく相手を受け入れ、とことん付き合ってくれる友人が僕にはいなかったようだ。 幸二君のことを知らない人はこの「人柄」に触れることが出来ないからかわいそうだと思う。 過去、良太邸で僕がダウンしてしまったときも、朝まで鈴木と良太の帰りを待っていた。 こんな友人を持っている奴は、幸二君本人より幸せだ。そのことに気付かないとすれば本人にとって残念なことだ。 よって僕は幸二君より幸せなのだが、幸二君よりいい魚を釣ったことがない。 彼は釣りがうまいのだ。 どんな状況でも、誰より先に、誰よりいい魚を釣る。 まさに自他ともに認める「ナンバー1」である。 友人の信頼も厚く、温厚な性格の彼はどこまでも優しい。 更に言うなら「マメ」である。その大きな体には似つかない(?)繊細な性格なのだ。 釣りがうまくなるには、この「マメ」は重要なファクターだが、彼のそれは群を抜く「マメ」さ加減だ。 だから釣れそうなところより、釣れたところに僕を連れて行く。必ずしもそれがいい結果を生むわけではないのだが、釣らせたいからあえて冒険を避けようとするのだ。 僕にはそんな幸二君の心の迷いも、優しさも実に手に取るように感じられる。 幸二君がいない浜名湖なんて、浜名湖じゃない。この人のガイドで釣れなくても不満は無いはずだ。 と、まあ、このくらい書いておけば良いかな??(笑) 何しろ幸二君がいい奴だということを言いたいだけだ。 その幸二君が駐車場で目覚めると、浜名湖の朝は始まった。 浜名湖スタイル 浜名湖ではこのスタイルが原流だ。 かっこいいプレジャーボートに、白い歯が輝くような近代リゾッチャーは“第2世代”と言っていい。 古くから表の瀬には冬はのりを、そしてカキを、アサリを養殖して生計を立ててきた地元の生活がそこにあり、僕ら釣人は航路を使わせてもらってこの雄大な自然を楽しんでいる。 大きなプレジャーボートは瀬をまたげない。ここでは奥向きといっていい。 喫水の浅い和船に、小さなエンジン、瀬や航路をにらみながらの航行は船の大トモに立ち、スロットルを延長する棒を使って行われる。この棒は最近では金属製のいいものがそれぞれ工夫されていて、それなりに近代的になっている。 まるででかいサーフボードにエンジンを付けて走っているようなイメージだ。 このスタイルで初心者は瀬に乗り上げてしまうわけだから、ミヨシに向かって吹っ飛んでしまう。 僕はノンボーターだからいつもこんな景色を見ながら船に乗っている。 もちろん、船頭のファッションも、これが主流だといって良いだろう。 カッコいいキャップに、サングラス、釣りメーカーのシャツなんて着ていたら浜名湖じゃダサいのかもしれない。 さらにこのまま瀬に下りてアサリを掘る。 こんな風にだ。 遠くに幸二君が見える。 アサリハンターであることも、浜名湖じゃぁ必須スキルだ。 ほんのちょっとのずれでも、アサリのポイントは外れてしまう。 大きいのを探そうと思っても、なかなか見つからない。 彼はこのアサリを探したらまず100発100中だ。 こんな景色の中に、仲間が集まって子供に帰れるのが浜名湖の魔法なのだ。 瀬のアマモは限りなく青く、このすがすがしい仲間と景色は時を止める。 振り返ると幸二君が手を振っていた。 第2戦 「食料調達と行きますか!」 タマちゃんと幸二君と3人で狙うシロギスも夏の風物詩となった。 沖裏でBBQしよう。いつものように。 シロギスソナーでもある幸二君の選定で決めたポイントは20cmオーバーのシロギスを揃えるのに十分な魚をストックしていた。と、記憶している。 帰着するやいなや、それぞれに火をおこし、買出しに行き、魚を捌き・・・ いや、魚はブラックジャックことけい子さんにお願いして、すぐさま昼の宴は始まった。 いつもこうだが、タマちゃんは焼き方で、天ぷらの面倒は一人で見てくれる。 僕は食べる専門だったりするが、となりのこの炭焼きはキビレだ。 キビレにこんがりと網の焼きあとを残しながら、どんどん食料が製造される。 腹もふくれたところで、休憩を挟んで夕方に備えた。 すぐさま出撃の準備は整い、タマちゃんと幸二君と3人で出撃。 例のパターンの魚を狙いに行ったのだが、僕には違う魚が出てしまう。 思えば前日から1日1尾、今日はまだ本命を釣ってないからこのあと釣れるかもしれない・・・・・ ポイントを流し始めてからすぐ、何故かあたりらしい気配が・・・・ 「バシュッ・・・・」 またやられてしまった。幸二君だ。 夜で見えないだけに、ボートエッジで水面が暴れるとドキッとする。 僕は横目で幸二君を見ながらラインを握ってドラグを鳴らしてやった。 まじめな顔で振り返る2人。 「あせった~、マジで来たかと思ったジャン!」 「フフフ・・・・」 してやったり!。 さて、昼間の仕返しをしてやるぞ~・・・ 密かにポップラーダーをリグってフルキャストする音だけ鳴らす。 実際は天ぷらキャストで、着水はすぐそこだ。 近くまでステディーに寄せて・・・・・ 「ジュボッ!!」 体ごと振り返る2人。 僕は魚が釣れるより、この2人が振り返ることのほうが楽しくなってきた。 ポップライダーの使い道はいろいろある。なんて優秀なルアーを開発してしまったのだろうか・・・・・・(爆) 次のミッションは“屁”だ。 そんなバカ騒ぎを少し落ち着かせてまじめにやること数十分。 2日目に入っているから僕の腹の中でガスが順調に生産されていた。 「ブリッ!・・・・・」 「しげちゃん、多いなあ」 「2日目だからね~・・」 「2日目も安心!」 「ブリリリッ!!」 「だからやめなさいって!!」 「ん?自然現象だからなあ・・・」 「魚が逃げるって!!」 「いや、寄るな。この香しい香りにシーバスもメロメロさ!!」 「魚が浮いてくるぜ」 とまあ、こんな会話があったような無いような。 何しろ屁をしまくった。 余所見をしながら屁をこきながら、リトリーブしているとすぐそこでバイトした。 水面を少しだけ尾鰭で荒らすような出かただった。 例によって「あ~、小さい!」 とか言っていたら、ランディングしてくれたタマちゃんが、「しげちゃんでかいぞ~」 で、あがった魚がこれ。 浜名湖自己新記録をのばしてしまった! この魚が、例の狙ったパターンの魚じゃないことは一目瞭然で、痩せている。 例のパターンなら、今付いている魚はみなでぶでぶで、サイズもそろうし、もっと釣れるはず。 クラブに帰ってもちろんポーズを決めさせていただいた。 やっぱり僕の屁には集魚効果があったわけだ・・・・(笑) この魚、フィッシングOKIのランキングボードに1日だけ載る事になった。 もちろん証拠の記念撮影も欠かさなかった。 ま、まあ、8位ではありますが、東京者がランキングボードに名前を載せるなんて記念中の記念ではないか!!はっはっは!・・・・・・ その上は幸二君で、佐原君だ。この次は抜いてみせるぞ~・・・ 第4部へ ジャンル別一覧
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