『PLANET』 10/16
~その夜~「悠、追試はどうでした?」結局、追試後は将の携帯に繋がらず、自力で家まで帰ったのだ。「うん、今回は大丈夫だよ。期末は引っかからないようにするよ。あとさぁ、先生が大学はどこにするかって?」淹れてもらったコーヒーを片手に彬を見る。「・・・本当に行きますか?[PLANET]で仕事も研究も出来ますよ」苦笑している。「・・・まぁ、そうだけど。とりあえず一般的な方でお願いします」ズズズッと音を立てて、コーヒーをすする。「悠、友人を作らないように」「・・・分かってるよ」彬が椅子を引いて座る。「なら良いのですが。・・・コーヒーと一緒に甘い物が欲しいですか?冷蔵庫にありますよ」「いい、太るから・・・。次の仕事は入った?」「まだ入ってないですよ。それより、大学に行くのなら勉強してください」「はーい」コーヒーを持ち、部屋へと退散する。「まったく、あの小娘は何を考えてるんでしょうね。一般的なんて言葉はもう通用しないんですけど・・・分かって言ってるんでしょうかね。自分の存在価値を・・・」静かに呟き、コーヒーを口に運ぶ。 土曜日 植田の頼み事は服装を「女の子らしく」と言うことだった。(簡単な頼みだな・・)Gパンにミュール、少々薄めのカーデガンを羽織って玄関に立つ。「おはよう」ガラガラと音を立てて、玄関のガラス戸が開く。「・・・おはよう、R」「・・・CAT?どうしたの?おばさんみたいね」小首を傾げながら、少々大柄な白人女性(自称R)は流暢な日本語でCATこと、悠を貶した。「・・・失礼だな。お前、女の子だろ」「そう?いつもの格好じゃない?」「今日は違う!映画とパフェを勝ち取ったんだよ」「へー、でその格好?」「おはよう、R」将が家の奥から出てくる。「おはよう、将。今日は神を拝みにね。で、さあCATが変よ。見てないと駄目よ。どうよ、この服」肩を掴まれ、ぐるりと回転させられる。「・・・悠、センスないなぁ」「・・・そうか?」二人が同時に力いっぱいうなずく。「もっといいのないの?CATは小柄だからフリルとか、ラブリーなのが似合うよ」Rの口から恐ろしい言葉が飛び出る。「・・・ラブリーは嫌・・・」「そう?」青い瞳がパタパタと開閉する。「待ちあわせの時間は?」「十二時にSODの前」「・・・まだ九時だよ?」「いや、本屋へ」「悠、人と会うのに本屋に行くのは・・・」将が肩を落としている。Rもお手上げをしている。Rと将に挟まれてうだうだと言われる。ここに彬がいないのが救いである。「とりあえず、上がって。服を着替えようよ。CAT」「そう?」「そう」×2ぐいぐいと押されてまた部屋に戻る。「Rがんばれよ」将がわけの分からない応援をしている。