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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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塩野七生著『ローマ人の物語』(17)
       悪名高き皇帝たち(一)(新潮文庫)

読破ゲージ:
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悪名高き皇帝たち。素晴らしいタイトル。著者はタネを明かす。曰く、ある一面から見た場合には“悪名”でも、多面的に見た場合にはそれが誤認という場合もある、と。このタイトル、視野狭窄に陥って皇帝たちに悪名を被せてきたスタンスへの「待った」であり、洒脱な一刺しでもあり。悪役列伝、トップバッターは、孤独の帝王・ティベリウス。その治世スタート。基本路線はアウグストゥスの政治の踏襲により帝政を盤石に。いや、むしろ、アウグストゥスを「法」とした秩序の強化。名門出身、愛憎の果てに、結果的に皇帝となった厭世家皇帝の治世は質実剛健。地味で堅実なのが退屈と受け取られたワケで。凱旋式も神格化も、すべて断る自制心は、元老院にも市民にも頑固な印象。この堅物には、おべっかも通用しない。おべっかに使う時間すら惜しみ、おべっかに使う頭など次元が低いと嘆じる構え。当地に必要な「権力」のみ継承し、「権威」は削減。そんなティベリウスは、カエサルが描き、アウグストゥスが実現した帝政を不動にする仕上げの役目を、困難のうちに迎える。パンノニアでの軍団蜂起は実子・ドゥルーススが担当。一方ゲルマニアの反乱には、ゲルマニクスが当たる。情熱的で快活、ドラマティックな行動(部下の反乱に憤り、己が胸に剣を突き立てる!!嵐で船が沈めば、自分の責任だと荒れ狂う海に飛び込もうとする!!)も計算無しにできてしまうゲルマニクスの“人気”が、後のティベリウスの悩みのタネに。ゲルマニクス軍団のマスコットとして「小さな軍靴(カリガ)」の愛称で呼ばれる彼の三男坊・後の皇帝カリグラ、その幼い耳目に父の演説をどう聴いたのか?間接的にではあるが、軍団に規律を戻させた幼児・カリグラのカリスマもまた眩しい。しかし、光源は、さらに別の光で輝こうとするべきではなかったのだ、と個人的には思う。知足。人気取りには関心無し、不人気皇帝を引き受けたティベリウス、同時代に評価されなくとも、先人の意志を推進。公衆安全、財政再建、緊縮財政。なのに、ゲルマニクス、悲願のゲルマン征服続行を希望。その二つ名が泣く、と。ティベリウス、これを制す。パクス・ロマーナの要の一つ、防衛体制の強化もまた、ティベリウスの責任の範疇だったから。定刻の安全保障への責任感は、アウグストゥスを凌ぐほど。「レンガのローマを受け継ぎ、大理石のローマにして世に遺す」との豪語は伊達に非ず。ゲルマン征服にはブレーキをかけられた「熱意あふれるディレッタント」ゲルマニクス、その“やる気”はティベリウスによってオリエント問題の解決に充てるよう任を受ける。ゲルマニクスとオリエント。嗚呼、この傑物は、アウグストゥスの血を引きながらまた、その宿敵だったアントニウスを実の祖父に持つ、ドラマのプラットフォームのような人物。最高責任者として東方問題に対峙するゲルマニクスには、シリア総督ピソとその妻が立ちはだかる。適度に有能なピソ、分を弁えず過信。見栄の張り合いなら恥も外聞もないその妻との下衆な夫唱婦随、ゲルマニクスを陥れ、そのゲルマニクスも病に倒れる。ゲルマニクス人気をねたんでの毒殺?その糸はティべリウス?あっけない死は、ゲルマニクスの鬼嫁、アウグストゥスの孫・アグリッピーナの、カリグラを通じての復讐心としてパワー倍増。以降、アグリッピーナは“ゲルマニクス神話”キャンペーンを強行。人間味溢れるゲルマニクスの死に、人々は号泣。ところで、古代ローマでは、花は生者への贈り物、死の直後には各自の財力に応じた“モノ”を燃やすことが哀悼だったとか。キリスト教のろうそくへの点火はその名残と。ゲルマニクス、国葬も、ティべリウス公務により欠席。「冷徹なプロフェッショナル」、不評に。悲しみに機能停止する首都に、ティベリウス、喝入れ。続いてピソを裁判に。ティベリウスの「最高裁判決」は、公正なれど、またも人間味を欠いて不評。特に、ただでさえアウグストゥスとは血の繋がらぬティベリウスを皇位簒奪者と見ていた鬼嫁は、ティベリウスをゲルマニクスの毒殺者と恨み深める。単に、国家の統治においては“ゲルマニクス神話”の一人歩きを危険視しただけなのだが。北アフリカ、ガリアで反乱、ドゥルイデス教(アーサー王伝説におけるマーリンはドゥルイデス教の司祭と)の追放。政教分離徹底、それが確信犯的な活用とわかっていても、自身の神格化や宗教との接近は断固避けたティベリウスは、「カエサルのものはカエサルに、神のものは神に」そのもの。人は死すべき存在を超えないのだ、と。その覚悟を験すように、ティべリウスに息子・ドゥルーススの死が襲う。なおも厳格に、公務を遂行。テンション上がったのは鬼嫁・アグリッピーナ、今度こそ皇位継承は己が子のものに。手直し、メンテナンスを軽んじれば百年の計は成らず。その点、ティベリウスは、面倒な割に地味なメンテナンスを徹底的に断行した賢帝。同じメンテナンスの意味から、人材発掘、人材育成、人事にも際立ったセンスを発揮。彼の下準備なくば、以降の皇帝は、多分何も出来なかった…。なるほど、誇り高い人とは自分自身に厳しい人、と。自身を普通の人と思わないこの人は、普通の人のように、困難な時に仕事を投げ出したりしない。そんな時こそますます、自分にしか出来ない仕事に没頭し、誇りを保とうとする。そして、普通の人が、悲しみも苦しさも癒えて仕事に戻る頃、誇り高き人ははじめて、深く重い疲労感を感じるのではないか、と。息子の死から二年。不人気でも堅実な皇帝に捧げられる神殿建立も、不評に負けないで行った国益と平和への貢献こそわが神殿と固辞。これまた不評。ストイックに過ぎるのは考えものなのか?アウグストゥスがした苦労を今また、ティベリウスも抱える。つまりは、家庭内の問題。内にも外にも問題山積、孤独の皇帝。封印してきた厭世癖発動。68歳にして、“家出”。前科あり。ローマを離れ、カプリ島へ引っ込む。(了)


ローマ人の物語(17)

「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です:『何のために生き、死ぬの?』(地湧社)。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2008/11/30 10:02:25 PM
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