825561 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

快筆紳士

快筆紳士

Calendar

Recent Posts

Category

Archives

2024/06
2024/05
2024/04
2024/03
2024/02
2024/01
2023/12
2023/11
2023/10
2023/09
2008/12/01
XML
***********************************************************
塩野七生著『ローマ人の物語』(18)
       悪名高き皇帝たち(二)(新潮文庫)

読破ゲージ:
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

***********************************************************
“家出皇帝”、カプリからこんにちわ。でも政務には問題なし。なぜなら、帝国の隅々に至るまで、その政策を行きわたらせることのできるリモート・コントロール・システムを高度に洗練化したのが当のティベリウスだから。以降その「手足」は近衛軍団長官・セイアヌス。ところで、ギリシャ人にとって政治における偽善は二種に分けられると。つまり上等下等。公共の利益につながるうわべだけの装いは、上等な偽善だそうで。ローマ人・ティベリウスの欠点は、上等下等にかかわらず、一切の偽善ができない性格にあり。ゆえにカプリ隠遁へと至ったわけだが、成果は上がっても遠隔操作される方はいい気はしない。曰く、米国大統領が、合衆国領海内の小島から政治をするようなもの、と。ティベリウスの悪名の根拠No.1のタキトゥス(ゴシップの人・スヴェトニウスは、また別の意味で悪名被せNo.1)のティベリウス嫌いはこの辺にもあり。ティベリウスが首都を離れれば、鬼嫁・アグリッピーナの思うツボ。首都はアグリッピーナ母子がアドバンテージを握って旺盛に。だが、やり過ぎはいけなかった。ゲルマニア軍団を擁して起つ、かどうかはともかく、その悪影響は無視できない。国家反逆罪により母子ともに有罪。が、この判決がまた世間じゃ不評。家族こそがベースと考えるローマ市民にしてみれば、肉親憎悪と誤解されるこの裁判は、ティベリウス不人気に追い打ち。遠隔操作の落し穴にセイアヌス自身が落ちる。アグリッピーナ派一掃に功あったセイアヌス、得意絶頂、野心も膨張。「手足」が「頭脳」を逆操作しようとでもすれば、“テリブル・ティベリウス”のキツいお灸が容赦ない。セイアヌス、死刑。が、これがまたセイアヌスの妻による讒言を誘い、ティベリウスの面子をつぶそうとしたこの迷惑妻は、とうとう皇帝をキレさせた。まして、その内容が、ふしだらな家族関係を突く言いがかり。自制の人、キレる。一家皆殺し、一派の元老院もまた。無論、槍玉に上がった不名誉の実娘にも自殺を強要。名高きポンツィオ・ピラトもティベリウス時代の人。彼が裁かれたのは、イエス・キリストを十字架にかけたからではなく、ユダヤ地方の長官として職務を全うできなかった(騒乱を処理できなかった)から。ところで、自己憐憫とは、すべてを一人で行ってきた人が陥る一時的なスランプで、それを脱すると、憐憫の情などどこへやら、「一人ですべてを考え行う人」に復帰するのだ、とか。77歳、ティベリウス。時には愚痴もこぼすのだ。そして、後継者も決めておかなければならないタイミングに。そして、運命は皮肉にも、すでにアウグストゥスによってティベリウスの次と決められていたゲルマニクスの子・カリグラをその跡継ぎにしてしまった。77歳、ティベリウス、静かに逝く。不人気皇帝の死を、市民は「遺体を河に投げ込め」と叫び歓呼で迎えた。地道で孤独な仕事を評価していたのは、ローマ人ではなく、属州エジプトの首都アレクサンドリアの人、「ユダヤのプラトン」フィロン。ティベリウスなればこそユダヤ社会におけるパクス(平和)は実現し、ゆえに、ティベリウスの決めた後任の政治もまたパクスをもたらすだろう、と。・・・。でも、そうならないことを、あとでフィロンは知る。ティベリウスと、その後任は、正当性では同一性が高くとも、必ずしも器量が同じというわけでもなく。退屈皇帝・ティベリウスの死後ならばなおのこと、24歳の若き新皇帝は市民はもちろん、元老院の大喝采までをも受けて歓迎された。皇帝カリグラ、即位。元が華のあるゲルマニクスとアウグストゥスの孫アグリッピーナの子。さらに持ち前のスター性で、もう十分。あとは、何をやるかって?つまり、ティベリウスの反対路線を次々に打ち出せば、支持率はうなぎ登り。何もかも上々の滑り出し。不要な税金は廃止するわ、剣闘士試合解禁に連日連夜のどんちゃん騒ぎ。市民も元老院も、たががはずれて、羽目もはずれて、浮かれ騒ぎのバブル・パクス。不人気をこうむってまで国益を考える気など毛頭なし。楽しくて、派手で、格好良ければそれでオッケー。ただし、それは同時に、大衆が望んでいるものを的確に掴み、惜しげなく提供しただけの話。カリグラ、ズレてはいたけど、やはり皇帝の遺伝子は持っていたのだ。ティベリウスの遺した政策や人事が周到であったからこそ、カリグラが「政治をしなかった」おかげで、維持できたものもあった。カリグラもそのことは知った上で、この手の地味なことには着手しなかったのだが。スター皇帝。こういう人の一挙手一投足は、社会全体の不確定ながらも重要な要因に影響があるから大変だ。病気をすれば、帝国全体が灯りを消したように暗くなる。それがスターの光。そして翳もまた深く。ティベリウスの不人気で孤独な死を見知っている繊細なるカリグラは、すべてを所有するがゆえに、それを失うことを恐れて不眠症に悩んだ。病気の回復を祈る民の姿に自信を深め、ますます愛情の保全に躍起になったカリグラは、全快とともに、それを奪う可能性のあるものの排除に乗り出す。養子の抹殺。また、「無冠であるがゆえに最強」であるローマ式帝政の意味(つまり、ローマ式帝政は君主制ではなく、皇帝はあくまで市民の中の第一人者、ただし拒絶の出来ない第一人者だから無冠)を解さず、王よりも上位にある神になろうとする。“ゼウス風前身金色”やら“黄金の稲妻片手のゼウス風ver.2”、“三叉かついだポセイドン風”、と神様ルックで現れたカリグラを、さすがの元老院も唖然。「オレって最高だろ?」、カリグラ談!?でも庶民には意外に好評。あわせて、剣闘士試合に戦車競争も好評、好評、満員御礼。神の世界では許される妹への愛は、少なくともローマ世界ではタブー。その死に傷ついたスター・カリグラ、懲りずに妹の神格化を実現。でも人気あるから全部オッケー。人気を得るにはパンとサーカス。と同じくらい、公共事業も大事だというコトは知っていたカリグラ。ティベリウスの人事のおかげではあるが、こちらも推進。水道も造ったぜ。おっと話題も造り続けなくちゃ。アレクサンダー大王ごっこもしたし、“元祖タイタニック”の建造でニュースにもなった。さて…財政破綻です。今度は金策、皇帝一家の家具調度品でオークションもやってみた。無論、焼け石に水。転がり続ける赤字の雪ダルマの対処もそこそこに、“インペラトール”と呼ばれたいがためだけに、突然のガリア行。内容は、大掛かりな閲兵式と、ドーヴァー海峡を見下ろす灯台建設。略式の凱旋式を行い、“インペラトール”と呼びかけられて満足。ようやく落ち着いて金策に。ストレートに、まずは富裕層に冤罪を被せてその財産を召し上げ。カリグラの暴走は、「ユダヤのプラトン」フィロンの希望をも曇らせる。もはや、カリグラはティベリウスのユダヤ人統治の継承者ではないのは???利害が衝突する犬猿の仲、ユダヤとギリシャ。アレクサンドリアにて、ギリシャが仕掛けて始まった暴動にカリグラの態度は…。これまで護られてきた一切のユダヤ人にとっての「自由」を奪われ、シナゴーグも焼かれ、祭司は侮辱されて鞭打たれ、経済活動からも締め出されたユダヤ人は、最後の手段、皇帝への直訴に踏み切る。使節団主席はフィロン。カリグラの立場は飽くまで調停役。両者を諮らねばならない。おっとり刀で場に出揃ったギリシャ団の言いがかりや嘲笑にも耳を貸さず、切々と理を説くフィロンらがローマはカリグラに見たものは絶望意外の何者でもなく。国家の大事にも、演劇に使う「マエケナスの庭」での準備と点検をしながら上の空で応対。カリグラにおもねるギリシャ、カリグラに捧げる祭壇を立てて犠牲式を挙行しようとするが、これがユダヤを刺激。祭壇は破壊される。これを知った当のカリグラ、神になりたいんだからユダヤ社会に逆ギレ。カリグラを模した神像を造ってイェルサレムの大神殿の中に据えよ、とシリア提督に命じる。現地のデリケートな文化の相違を知っているがゆえに、それができるワケがない総督、時間稼ぎ。カリグラ像をゆっくり製作。これがカリグラをまた怒らせる。長く信頼関係にあったマウリタニアの王の殺害によるマウリタニアの蜂起など、街生面でも失策を重ねる。テロ行為とは、文明の成熟度には関係ない、と。権力が一人に集中しており、その一人を殺せば政治が変わると思うから起こるのだ、と。では、9.11以降はどうなのだろう、とは個人的な感想。少なくとも、カリグラの時代はそうだった。これ以上のカリグラの暴走は、先人の偉業に傷をつけ、事実上パクス・ロマーナの維持にも支障があると判断。とある演劇上演の日、会場に向かうカリグラ、“たった二人の主犯”である近衛軍団大隊長サビヌスとケレア、それに数人の兵士たちによって殺害さる。統治期間3年10ヶ月、28歳の死であった。目の前で展開するカリグラ殺害におののき物陰に隠れていたクラウディウス、ケレアにしょっぴかれる形で公衆の面前に引き出され、インペラトールの歓呼を浴びせられる。つまり、皇帝を殺した男によって、皇帝クラウディウスは誕生したのである。聞けばケレス、ティベリウス即位時はゲルマニア軍団で百人隊長を務め、ゲルマニア暴動では、二歳のカリグラを含むゲルマニクス一家を守って、暴徒の前に立ちふさがった硬骨漢。その後はゲルマニクスに従って、遠征にも、あるいは東方問題にも随行したろう。カリグラに対しても思い入れと忠心深かったろうケレス、カリグラ即位で近衛軍団大隊長にまで昇進した男は、父・ゲルマニクス亡き後のカリグラにとって、影のように付き添い従い、支える、父親代わりだった、と。そのケレスは、自分を引き立てたゲルマニクスに代わって不肖の息子を誅する気持ちで、あるいはかつ先人の努力を水泡に帰してしまう最悪の事態から、放っておけないカリグラを回避させるために、殺害を決めたのではないか、と。なぜなら、その後の騒乱が起きぬように、ゲルマニクスの弟であり、カリグラには叔父にあたるクラウディウスを迷うことなく力づくで皇帝として認知させ、帝位の継承の正当性をも守ることを仕損じなかったし、何より、クラウディウスを立てたことで自身は何一つ恩恵を受けていないばかりか、皇帝殺害の罪でクラウディウスより死罪を言い渡された際も、不平一つ言わずそれを受け入れている。なすべきことを、思う人のためになし終えた男は、自分個人のためには何一つ求めず、何一つ特にもならない殺害をしたのだ。愛情を失うことを恐れたカリグラが、この揺ぎない、静かなケレスの父性に気付いていれば、このような悲劇も起きなかったのか。なお、本巻には、多神教のローマ人、一神教のユダヤ人。法に人間を合わせるユダヤ人、法を人間に合わせるローマ人。十戒が法のユダヤ人、法は遊興でないとするローマ人。敗者さえも同化するローマ人、敗者になっても同化を選ばないユダヤ人、といった当時の各民族や文化、文明の持つ根源的な比較がなされていて興味深い。人種差別の感情が意識されるには、日常において密接な間柄であり、それでいて利害が一致しない関係にあること、という定義も黙考の機会を与えてくれる。(了)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008/12/01 11:13:09 PM
コメント(0) | コメントを書く


Comments

プラダ バッグ@ gpzqtt@gmail.com 匿名なのに、私には誰だか分かる・・・(^_…
バーバリーブルーレーベル@ uqafrzt@gmail.com お世話になります。とても良い記事ですね…
バーバリー マフラー アウトレット@ maercjodi@gmail.com はじめまして。突然のコメント。失礼しま…

Favorite Blog

ヌメ革のスリッパを… New! 革人形の夢工房さん

「#楽天スーパーSAL… 楽天アフィリエイト事務局スタッフさん

新・さすらいのもの… さすらいのもの書きさん
価格・商品・性能比較 MOMO0623さん
抱きしめて 愛の姫.さん

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.