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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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塩野七生著『ローマ人の物語』(41)
       ローマ世界の終焉(上)(新潮文庫)

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が、である。二度まで敗走させたアラリックと交渉を図ったのは、アラリックが有能であったからで、ガリアの蛮族制圧に向わせるため、つまり「毒をもって毒を制す」の策。軍司令官に戻し、おまけにアラリックが要求する大金も支払う取り決め。これが命取りになる。議決を求めた元老院からは、蛮族が蛮族に国を与え、追い銭まで払うのか、と紛糾に遭い、スティリコ孤立。糟糠の妻、先帝の姪・セレーナからも遠ざけられ、異端と組むとはもってのほかとする熱狂的なカトリックも後押しして、反スティリコの機運が加速。指示と信頼を寄せてくれたローマの兵士からも売国奴呼ばわり。
その間、東ローマ帝国皇帝アルカディウス死去。無為の三十一年。同じく無為な弟皇帝ホノリウス、珍しくやる気を見せた。兄の子を助けに東へ行く、と。要は、幼い甥っ子を傀儡にする稚拙な下心。これに、このタイミングでスティリコが反対した。長いこと時期を見計らっていた反スティリコ勢力を構成する皇宮官僚、一気に牙を剥く。謀略。元奴隷の宦官オリンピウスの段取りで、まずは基地訪問の名目を立て、ホノリウスの眼前でスティリコ派を一掃。血の粛清。二百キロ離れた地で、この報をスティリコは受け取る。万事休し、あな口惜しや。どこまでもついていくから起ってくれ。スティリコについて生死をともにしてきた兵士が懇願するも、スティリコはそれを退ける。それをしたら、自分はローマ人でなくなってしまう。蛮族出身でも、ローマのために、ローマ人として死ぬ。それが、スティリコのスティルス=スタイル。
最後の賭け、この悲惨な茶番劇の筋をホノリウス自身が書いたとは思えぬスティリコ、皇帝への直談判を決意するも、面会謝絶。現れたのはオリンピウス。死刑宣告を読み上げる。罪状は、蛮族と共謀して帝国打倒を謀った国家反逆罪。その罪に弁護はできない。即刻死刑が決まりごと。無念、スティリコ斬首。教会からは、最悪の「記録抹消刑(ダムナーティオ・メモリアエ)」。
スティリコ亡きローマ軍総司令官にオリンピウスが任命される。残ったスティリコ派の兵士たちは、一人残らず基地から退去。ホノリウスは、スティリコ派が擁立しかねないスティリコの子らも殺させていたから、誰も起てない、起たない。
動き出したのはただ一人、アラリック。オリンピウスよりはマシと頼ってきた元スティリコ軍の兵士を加え、三万ではあるが、弱卒相手には十分也。スティリコなければ、怖いものなし、取り決めもなし。長期戦を覚悟せねばならない攻略・占領は完全に捨てて、ともかく帝国の主要都市で強奪のみを繰り返す。目的はただひとつ、皇帝の恐喝。
ハンニバル以来、六ニ十年ぶりに、ローマの城壁は敵に迫られた。アラリックの、包囲戦を捨てた城門封鎖のみで、たった三万の兵士の前に、三十万の市民が動転した。結局、スティリコが提案したよりも何倍も大きな“身代金”を脅し取られ、おまけに立ち去らず引き揚げただけ。恐喝は続く。
前回の支払いは封鎖解除代、今度は平和の代償を要求。地位とカネ。イコール、イタリアから北ドナウ河にかけて、アラリックと西ゴート族による独立王国を認可するに等しく。
パニックを起こしたホノリウスは、“忠臣”オリンピウスを今さら処刑。結果に影響なく。
結論を出せないローマ帝国に痺れを切らしたアラリック、迎え撃つ気概の血の一滴もなく、ローマを占拠。首都ローマが敵の手に落ちたのは、「ケルト来襲」以来、実に八百年ぶりのこと。史上名高き、「ローマの劫掠」、紀元四一〇年。十万人が、五日間で、ローマの金銀財宝、家財一式、さらにはホノリウスの妹・ガッラ・プラチディアまで、ごっそり持てるだけ奪っていった。後の聖人ヒエロニムスも、この恐怖と悲しみを手紙に残しているそうな。
滅せぬ者のあるべきか、アラリック、ローマを後にして間もなく、病気により突然死。やりたい放題、五十余年の人生。継ぐは親族の一人、アタウルフ。強奪してきた皇帝の妹と結婚。その結婚は、アラリックの後継者にとって、ローマ恐喝の手札となるのかどうか、いずれにしても、目も当てられぬ麻糸の乱れ、帝国の死まで、もう僅か。(了)


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Last updated  2011/10/11 06:54:45 PM
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