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カテゴリ:音楽
1.Gimme Shelter
2.Love In Vain 3.Country Honk 4.Live With Me 5.Let It Bleed 6.Midnight Rambler 7.You Got The Silver 8.Monkey Man 9.You Can't Always Get What You Want ■その昔、NHK,BSで「音盤夜話」という番組があった。例の「漫画夜話」の音楽版で、萩原健太が司会で、4,5人の評論家、アーティストがいわゆるロック名盤について、蘊蓄を語るという番組形式だった。ラインアップを思い出してみたら、第1回がストーンズのこれ、第2回がビーチボーイズの「ペット・サウンズ」第3回がスライの「スタンド」だった。 ■この「Let It Bleed」の回のゲストはライダーズの鈴木慶一君だったのでよく覚えている。近田春夫とピーター・バラカンが準レギュラーで彼らがそれぞれの思い入れの強い曲を聞きながら、その色々な側面を語っていったわけだ。その中で毎回ピーターバラカンが英詞を解説してくれるコーナーがあったのだが、この回でどの曲がとりあげられたかは覚えていない。 ■おそらく、テキストとしてふさわしいのはM9の「You Can't Always Get What You Want」ではないだろうか。「無情の世界」と訳されたこの邦題がふさわしいかどうかはともかく、不良趣味とでもいう言い方がふさわしいこのグループの1曲として、これほどマッチするものはないのではないだろうか。まだ10代20代だった頃、オトナのどんな美辞麗句よりも、長髪で、Gパンで、悪しがむんむんしてるこの人たちが歌う、情けなどにすがる事なかれ、という刹那的な表現はとても魅力に満ちていたんだ。 ■しかし今「無情」と「無常」を比べてみれば、この世は「無情」と言い切るには人の情けの数々が身にしみる歳になったし、残りの人生の方が間違いなく少なくなったという「無常観」の方に支配されてしまっている。むしろ聞きたいのは「無常の世界」であるわけだ。なんてことをまるでディランのようにこの曲を歌うミックジャガーの声を聞きながら思う。 ■先の番組で誰かがピーター・バラカンに「Let It Bleed」ってどういう意味か、って質問していたのだが、そこでは腑に落ちる解説は聞けなかった記憶がある。Beatles のあれとは一字違いのこのタイトルであるが、一方が「なすがまま」と解釈されるのであれば、「血が出るまま」とでも訳せばいいのだろうか。止血なし、そのまま流しとけよ、かつてコンサートで自分たちの目の前で観客が刺されるのを目にした彼らが吐く言葉とすれば、ちょっとどうかと思うくらい物騒なタイトルには思えないか。 ■M1 の「ギミー・シェルター」は初めて聴いた時からストーンズのベスト曲のひとつだ。なんか不穏なものを醸し出すムードをギターってやつがこんなにもふさわしく聴ける楽曲はざらにない。おそらく彼らの楽曲の中でゲストが最も輝いていると言っていいマリー・クレイトンの叫びに近いコーラスもこの曲の呪術的要素をさらに高めているように聞こえる。 ■先日取りあげた雑誌Beat Sound でもこの「Let It Bleed」の音の良さに言及していて、このアルバムをストーンズ、そしてロック史上最も音のよい録音のひとつと評している。伝説のエンジニア、グリン・ジョンズの仕事だ。特に3年前に出たSACDでこの音源を聞くと、まるでそこに彼らがいるようにひとつひとつの音が届いてくる。ちなみにストーンズの音質のよいレコードベスト3は順に「Let It Bleed」「Aftermass」「Beggar's Banquet」だそうだ。 ■ちょっと可愛いらしいデコレーションケーキがまるで冗談のように見えるジャケット。でもその裏側がぐちゃぐちゃになったそれだということは意外に知られていないのかもしれない。ブライアン・ジョーンズをかたどった人形はケーキの海で溺れ死んでいるように見える。 このアルバムから連想する数々のもの 『無情の世界』阿部和重 『無常といふこと』小林秀雄 『ああ、無情』ヴィクトル・ユーゴー 『ギミー・シェルター』グランド・ファンク・レイルロード 『ホンキー・トンク・ウイミン』エルトン・ジョン 『ソング・フォー・ユー』レオン・ラッセル 『冷血』トルーマン・カポーティ 『無法の世界』ザ・フー 『M・A・S・H』ロバート・アルトマン 『ライク・ア・ローリングストーン』ボブ・ディラン お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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