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売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

Nobuyuki Ota

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2023.10.21
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初めて台湾を訪問したのは1989年、台湾から世界に輸出する繊維製品のクオータ管理をしていた「中華民国紡績業拓展会」(通称TTF)に講演を依頼されての訪台でした。桃園国際空港に到着するや背広姿の男性群に囲まれ、パスポートを手渡すと入国審査と税関はフリーパス、そのままあっという間にハイヤーに乗せられました。あとでビザ(当時はまだビザが必要)をよく見たら「国賓」のスタンプ、フリーパスの理由がわかりました。



降ろされたのは老舗中華料理店、大きな円形テーブルには台湾繊維業界の幹部がズラリ着席。中にはその日の朝に中国本土から戻ったばかりのニットメーカー社長も。「メインランドと自由に往来できるんですか」と質問したら、「対立しているのは政治の世界、経済界は普通に交流している」と聞いてびっくりでした。その中に紅一点、中興百貨店(サンライズデパート)の女性オーナーだったバオさん、エルメスのケリーにジャンポールゴルティエのジャケットが板についた素敵な方でした。

ランチが始まり、最初に出てきた大皿はこれまで見たことがない形状の肉、聞けば食べたことがない食用カエル。しかも取り分けられた小皿の肉にはかすかに血、正直ビビりました。台湾で最初に口にしたのが食用カエル、生涯忘れられない1皿です。

このあと中興百貨店を案内され、当時日本の百貨店でも珍しかったヨーロッパのラグジュアリーブランド直輸入ショップ、そして別のフロアに台湾デザイナー売り場もありました。バオ社長は「私たちが応援しなければ台湾のデザイナ-は育たない。たとえ儲からなくてもやらなければならない」、使命感に満ちた発言に感動したものです。

あれから台湾の百貨店を手助けする日本の百貨店マンとして、台湾で多店舗展開する日本ブランドの経営者として、クールジャパン政策を推進したい投資ファンドとして何度も台湾を訪問しましたが、初めて訪台したときが一番印象深いです。血のついた食用カエルもバオさんの言葉も。


2019年台北ファッションウイーク(中央女性がチェン文化部長)

さて、4年前にも台北ファッションウイーク(写真上)に招聘されました。そのオープニングセレモニーは着席ディナー形式、お隣はソルボンヌ大学卒業のチェン文化部長(部長は日本の大臣にあたる)。これまで自分たちが日本の若手デザイナー支援プログラムをどれだけ試みたかを説明、台湾でも若手インキュベーションが重要ではありませんかと話したら、文化部次長(事務次官)に話してくれませんか、と。翌々日文化部を訪ねて文化部次長とミーティング、日本とのファッション文化交流促進を話し合いました。

このあと新型コロナウイルス、両国の交流促進はしばらくお預けとなりました。が、コロナが収束して今年再び文化交流の話を再開することに。台湾ファッション業界でも活躍する台湾イトキン多田社長を通じて話し合いが始まり、今回台北ファッションウイークに招かれました。4年前ファッションウイークの現場運営は台湾ELLEが担当でしたが、今回は台湾VOGUEが仕切り。リュウ発行人からは人事異動で交代したばかりの文化部次長ワンさんとの個別会談も依頼されました。


眼鏡の男性が台湾VOGUE発行人、右は多田夫妻

台湾VOGUEリュウ発行人と台湾イトキン多田社長のアレンジで今回多くの方々と意見交換する機会をいただきました。文化部次長をはじめ、台湾ファッション業界にたくさんの人材を輩出する大学の学院長、テキスタイル業界の重鎮、台湾在住ファッション流通業界日本人会の代表、いまや台湾百貨店業界をリードする存在となった新光三越の方、デザイナーの海外売り込みをサポートするTTF幹部ら皆さん親切、日本のファッション業界のこれまでの歩みや私が感じた台湾デザイナーの課題などに耳を傾けてくださいました。


文化部ワン次長と記念撮影


ホテルロビーのライブラリーで話し合い

日本と違って台湾は進んでるなあと思ったことがいくつもあります。文化部次長との会談はファッションウイーク公式会場近くの誠品書店が経営するEslite Hotelと聞いてはいましたが、なんとホテル内会議室ではなくロビーのライブラリーの長いテーブル、誰からも見られるオープンスペースでの会談。そこへ現れたワン次長はダボっとしたストライプ入りジャージーパンツにスニーカー。会談のあとはホテル内ラウンジで日本のメディア関係者に私との会談の一部を発表でしたが、日本の文化庁の官僚トップがこんなスタイルで国際交流の話し合いや記者懇談の場に現れる日は来るんでしょうか。


台湾市場再構築のヨウジヤマモトは8月にこちらを開店

ショップ運営でも感動がありました。かつてアパレル時代に台湾のパートナーだった会社に社員教育でマーチャンダイジングの基本やVMDの考え方を伝授しましたが、彼らはさらに店舗を増やし、美しく店頭を維持していました。彼らには何度も「定数定量」の重要性を話しましたが、本部に模擬店舗を構えていまも訓練している。伝授したことを台湾でしっかり守っていてくれる、こんなにうれしいことはありません。


ブランド多数揃えるSOGOのすぐ隣に新施設が数日前にオープン


その新商業施設にA BATHING APEが出店

新しい商業施設がどんどんオープン、ラグジュアリーブランドの大型店はさらに増え、台湾の経済力を実感しました。ブランドを多数揃えたビルの近くに新しい商業施設ができてブランドショップが開店、数年後にまたその横に新しいビルが誕生して綺麗なブランドショップが多数入居、まるでオセロゲームのような様相です。半導体はじめ台湾の景気はものすごく良くて一般消費者の購買力は半端ないんでしょう。物価上昇と円安の我が国からすれば羨ましい限り。こんなに元気な国ですから、日本に来てショッピングする台湾人はもっと増えるのではないか、と期待してしまいます。

5泊6日の短い滞在でしたが、台湾から学ぶ点はいくつもありました。日本からとても近い国、コロナも終わったのでこれからは頻繁に出かけたいです。





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Last updated  2023.10.21 22:43:17
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