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売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

Nobuyuki Ota

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2023.12.23
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​​​​​​今回杭州セミナーを企画してくれた金さん(英語表記Aaron Jin)の名刺をもう一度よーく見たら、会社名は「佐吉企业管理咨询(上海​)有限公司」とありました。


創業者の豊田佐吉氏

金さんは大学卒業後
豊田通商上海支店に就職、28歳のときに独立。社名「佐吉」はトヨタグループ創業者の豊田佐吉に由来しているのかもしれないと思って金さんにメールで問い合わせたところ、やはりそうでした。​​​豊田佐吉の名前を知っている中国人がどれくらいいるのかわかりませんが、金さんは佐吉翁に敬意を込めてその名前を社名に引用したかったのでしょう。

我々が大学で経営学をかじった頃はまだ米国自動車フォードのヘンリー・フォードが生み出した「フォード生産管理方式」が製造業経営のお手本でした。少品種大量生産こそが近代経営の成功事例、と。しかし、必要な物を必要な時に必要な量だけ作るトヨタ自動車の「トヨタかんばん方式」が効率的経営と評価されるようになり、20世紀の末にはフォード生産管理方式は主役の座から滑り落ちます。

金さんは豊田通商在籍中にトヨタかんばん方式を先輩たちから、あるいは書物から学んだのでしょう。独立してサプライチェーンマネジメントのコンサル会社を上海で立ち上げていろんな分野の生産ライン改善を契約企業にアドバイスしてきました。「良い工場は美しい。汚い工場はダメです」、金さんの言葉は繊維工場にも当てはまることです。


大野耐一副社長

商品の生産に関する合理的な考え方はグループ創業者の佐吉翁から子息でトヨタ自動車を起こした豊田喜一郎氏に受け継がれ、そしてのちに副社長の大野耐一氏によって体系化されたと言われ、大野副社長はその功績により日本自動車殿堂と米国自動車殿堂の両方で殿堂入りを果たしています。

先日金さんと会食した際にこの大野耐一副社長の話で随分盛り上がりました。それは私のオヤジから聞いたエピソードでした。

オヤジは激戦のインパール作戦から帰還すると最初は名古屋の松坂屋百貨店紳士服部に就職、高級注文紳士服のパタンメーカーとして勤務しました。私が生まれた年にオヤジは独立して名古屋市の隣の三重県桑名市でテーラーを開業しました。ところが松坂屋のお客様の中にはオヤジがカッティングした洋服でなければ満足できないという方が何人もいて、テーラーを経営しつつ松坂屋の納入業者にもなりました。

常連のお客様が友人を紹介してくださるうちにいつの間にか桑名市のテーラーながらお客様のほとんどが愛知県の大手企業幹部やお医者様など富裕層に広がりました。その中のお一人が当時トヨタ自動車副社長だった大野さんでした。洋服が完成するとオヤジは愛知県刈谷市のご自宅に洋服を納品しに行きますが、大野さんからは「太田さん、我が家にトヨタ以外の車でやってくるのは君だけだよ」と笑われたそうです。オヤジの車はずっと日産でしたから。

ご自宅にお邪魔して出来上がった洋服のフィッティングを確認すると、大野さんはいつもお土産をくださいました。いまでも覚えているオヤジのセリフ、「トヨタの副社長さんは食べてるバナナもものが違うわ」。納品から戻ったオヤジから手渡される大野家のバナナを手に取ると、確かにバナナは重く大きく立派、甘さもたっぷりでした。


大野耐一氏講演の様子

オヤジにいつも洋服を注文してくださる大野副社長が果たしてトヨタかんばん方式を世に広めた大野耐一氏かどうか私には正確なことはわかりませんが、1960年代後半にトヨタ自動車工業(まだトヨタ自動車販売と分かれていた)副社長で刈谷市在住の大野さんは多分この方ではないかと思います。だからネットや書籍で大野さんの写真を見るたび、このスーツは我が家で作ったものに違いないと勝手に思っています。

トヨタかんばん方式を世に広めた功労者であろう方の洋服を作っていたテーラーの倅が、その考え方に触れてサプライチェーンマネジメントのコンサル会社を中国で立ち上げた中国人の若者に招聘され、中国の経営者たちにトヨタ車の写真を何枚も見せながらものづくりの最重要ポイント、ブランディングの難しさやブランドDNAの継承を講義する。なんとも不思議な筋書きじゃないか、と金さんたちと盛り上がりました。

経営学のバイブルだったフォード生産管理方式が時代の変化と共に徐々に評価されなくなったように、トヨタかんばん方式がいつまでもサプライチェーンマネジメントのバイブルであり続けるとは思えません。生産管理システムそのものはまだ当分通用するかもしれませんが、自動車というマーチャンダイズ(=商品)のマーチャンダイジングやブランディング戦略の点ではヨーロッパの自動車メーカーと比べて優位性があるとは思えませんよね。

また、今回の中国出張でEV車開発では日本は中国メーカーよりもかなり遅れていると実感しました。トヨタかんばん方式の考え方は素晴らしいんでしょうが、この先日本の自動車メーカーはどうなるんだろう、ちょっと不安になりました。


中国語版「大野耐一的現場管理」















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Last updated  2024.02.17 15:39:38
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