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カテゴリ:ファッションビジネス
I.F.I.ビジネススクールの教え子齋藤孝浩さんの紹介で昨年9月に知り合った中国人コンサルティング金时光(Aaron Jin)さんが企画する2回目の中国研修の旅から戻りました。前回は杭州、寧波で5泊でしたが今回は上海、蘇州、そして飛行機で南に移動して広州で6泊、3都市でセミナーをしてきました。
初日の日曜日、上海に到着してすぐ1927年創業の老舗ニットメーカー恒源祥(Heng Yuan Xiang)を訪問、日曜日にもかかわらず社員食堂の奥にある個室で社長ご夫妻らと夕食を共にしました。この会社は元は国営企業、中国のどの家庭にも1枚はセーターがあるはずと言われる最大手、中国オリンピック委員会公式サプライヤーとして選手や役員にユニホームなどを提供しています。 Richard Chen社長(左)、齋藤孝浩さん(右)と記念撮影 翌月曜日は上海とその周辺のアパレル関係者に向けたセミナー、金さんとパートナーが主催する無料イベントでした。午前中は私、午後は齋藤さんが担当。会場は上海郊外の幕張メッセのようなエリア、カシミヤやウールなど高級ニット糸を世界のトップブランドに供給する会社CONSINEEのショールームでした。 ところが、春節休暇で2週間ビルは完全閉館していたので休暇明け初日4階吹き抜けショールームは暖房がなかなか行き渡らず、セミナー参加者はコートを着たまま、私はコートを脱いで講演しました。すると会場を提供してくれたニット糸メーカーの社長さんが自社カシミアマフラーを提供してくれ、さらに参加者のアパレルメーカー女性社長がわざわざダウンジャケットを会社から取り寄せてプレゼントしてくださいました。皆さん親切です。 寒い会場でスピーチ開始 カシミアマフラーの差し入れがありました 寒いのでプレゼントされたダウンジャケット 上海セミナーのタイトルは「アパレル産業の課題」 上海のセミナーでは、景気が鈍化するとすぐに「原価を下げろ」と言う経営者がいるけれど、それは本当に正しいのだろうか。命令を受け現場スタッフは安い素材の調達に走るが、素材レベルを下げると商品のクオリティーは目に見えて下がる、素材のクオリティーを下げてはならない、素材以外の別のところでコストダウンを図れないか、と事例を出して説明。 ミッキー・ドレクスラー氏がGAPグループに参加した当初、彼が指揮してGAPの商品が明らかに良くなってブランドイメージが上がった話、彼が創業者と対立して退任したあとGAPは日本製デニムを使用しなくなり徐々に商品に魅力がなくなったことなどを解説しました。 一方、ドレクスラー氏が移籍したJ・クルーは俄然商品のレベルが上がり、日本製デニムを使用していたし復活したリーバイスもユニクロも日本製デニムを使っていると説明。さらに、日本の繊維産地でたびたびユニクロの素材を生産している場面に直面した経験と、ユニクロが良質素材を大量発注することでいかに原価を抑えているかをお話ししました。 休憩時間、なんと参加者の上海ユニクロ本部で働く方が「私たちが知らないユニクロのお話が聞けて勉強になりました」、と声をかけてくれました。そうですよね、私たちは北陸産地でも尾州産地でも、そして特殊技術の撚糸工場でもユニクロが素材を調達しているのをこの目で見ていますから、海外のユニクロで働く従業員よりもユニクロのものづくりに詳しいかもしれません。 在庫を減らすためには精度の高い発注業務が必要、そしてプロパー(正価販売)消化率をアップするためにアパレル企業は何をすべきか、さらにブランドのDNAを守り続けることがいかに重要なのかを具体的に事例をあげてお話ししました。大量在庫と低いプロパー消化率で消滅していった大手アパレル企業の事例、ブランドDNAを守らないデザイナーが自分の個性を発揮したがって結局ブランドそのものが廃止に至った事例、デザイナーが交代しようとブランドDNAを守り続けブランドを発展させてきたブランドの話も。 私が担当する午前の部のあと受講者らとランチ、そのあと齋藤さんの部が始まると私はひと足先に車で蘇州のホテルに移動、前日会食したChen社長の会社の新年会に参加しました。 恒源祥の新年会で人事部の責任者から「パンデミックの前に東京であなたの講演を聞きました」とその時の写真を見せてもらいました。2018、19年当時私は頻繁に中国の訪日視察団にセミナーを頼まれていましたが、彼女と同僚も私の講演を東京で聞いてくれたようです。そのときどんなテーマだったのかはもう忘れましたが、こうやって過去に東京で講演を聞いてくれた人と異国の地で再会できるというのは嬉しいですね。 数年前に東京のセミナーで人事部責任者と撮影 この新年会でちょっと日本では考えられないシーンがありました。会場には幹部社員と共に大株主、外部サプライヤー、業界団体責任者らが招かれていました。日本であれば会社の代表取締役からまず主催者挨拶や乾杯音頭があると思いますが、前身は国営企業だったからなのか新年会挨拶はこの会社に席のある「中国共産党」の女性一人のみでした。労働組合なのかと質問したら、そうではありません。大企業には中国共産党の人間が派遣されているのだそうです。 党から派遣されている女性、参加者と同じくお酒も飲みますし我々と個々に乾杯もしてくれます。ごく普通のキャリア女性のようですが、経営陣でもない、労働組合でもない、私たち日本人ビジネスマンには正しく理解できない不思議な存在でした。政治体制も生活様式も日本と違いますからいろんな?マークを経験できて楽しかったです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.03.07 23:31:19
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