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カテゴリ:漫画・アニメ
★『 OZ 』 樹なつみ (1988~92年作品) これは、レンタルではなく、家に単行本があって久しぶりに再読。 1990年に起こったとされる第3次世界大戦(核戦争)から30年後の混乱社会を描いた、SF作品。 連載開始当時(1988年)としては非常にベタなテーマなのだが、直後にソ連中心の共産体制が崩壊して冷戦が終結してしまったのは、相当、水を差されただろうなあ。 樹なつみの初期の作品(『マルチェロ物語』とか、『朱鷺色三角』あたり)は、若い頃好きで、単行本買ったりしてよく読んでいた(最近のは『獣王星』くらい)。 当時、作者本人自ら「自分の描く女の子は読者に嫌われる」と、作品の欄外でボヤいていたのだが、その頃はその理由が余りよく分からなかった。 確かに「バカっぽくてワガママ」な感じの女の子が多かったが、やたら献身的で素直な子よりはリアリティあるじゃん …くらいに私は思ってたのだが…。 今回、久しぶりに彼女の代表作『OZ』を読み返してみて、何となく、その「理由」が分かったような気がした。 何つうか、一言で言うと、女の子の描き方が「雑」なのだ。 樹さんは、決して絵がヘタなわけではない(ものすごく上手いわけでもないが)。 アクションもそこそこカッコよく描けてるし、若者と年寄りの描き分けもちゃんと出来ている。 ただ、すごく丁寧に描いているコマと、「やっつけ」に描いたコマの差があり過ぎる。 特に、「可愛い系」の女の子の顔や表情を(ファッションも)、余り研究せずに、テキトーに処理してる感が否めない。 樹さんの漫画では、よく「黒髪の男性キャラがカッコいい」と言われるが、理由の一つは、髪の毛の線が黒髪(ベタ塗り)だと誤魔化せるからではないかと思う。 白抜き頭だと、(主役級の男性キャラですら)、ペン入れの「手抜き感」がアリアリ。 別に、私が特に髪の毛の質感にこだわってるワケでは無く、これは象徴的な例。…「一事が万事」ってヤツだ。 本質的には、下書き段階からの「表情の雑さ」が、ペンタッチの「あら」を、より目立たせるのだと思う。 ギャグネタのコマだけならまだしも、シリアスな場面でも、ものすごく「雑」に感じるコマがある。 半ページ分もの大きなコマ使って、「雑」な表情の人物アップを見せられても…っていうのが多過ぎるのだ。 同じ「雑」でも、くらもちふさこの「雑」さは、センスと統一感があるから許せるのだが…。 ただ、実は、本当に「致命的」なのは、絵より何より、人物の心理描写の「雑」さではないかと思う。 少女漫画ってのは、男性キャラのカッコ良さも大事だが、ヒロインに感情移入できるかどうかが大切な要素だ。 樹さんは、どうも、登場人物の心理描写や人物背景をさりげなく織り込むのが、余り上手くないのかな、と思う。 説明的なセリフやモノローグに頼り過ぎていて、人物の心情を読者に想像させる余地が少ない。 どんなにワガママでバカっぽいキャラでも、その背景が丁寧に描けていれば、共感は得られるものだ。 『 OZ 』も男女が恋に落ちる過程が「雑」過ぎて、イマイチ感情移入できないのだ。 着想やストーリー作りは上手いだけに、そこんとこが非常に残念。 色んな意味で、もう少し「丁寧」に、倍のページ数を使って描いていれば、もっと良いものになったのでは無いかと思う。 まあ、ページ数に関しては、編集部の意向もあるから、作者だけの責任でもないだろうが。 散々けなしておいて何だが、『 OZ 』という作品自体は名作には違いないので、オススメいたします。
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最終更新日
2016年10月11日 23時46分01秒
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