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カテゴリ:共産主義史話
――1990年代初頭の共産主義体制の崩壊は、どのような結果に続いたと考えられますか。共産主義の没落後、最大の利益を得た階層は幹部だったということですが。 その通りです。とくに私のような社会主義国家で育った者はよくわかっています。外国人はこのような現象を見て、とても変に思うかも知れませんが、それでもこれは明白な事実です。社会主義陣営に属した国のほとんどで、今日の執権階層は圧倒的に旧共産党幹部や保衛員、そして支配人のような経済幹部出身者です。現在では、そのような彼らの子どもたちが次なる執権階層になっています。 ――なぜそうだったのでしょうか。反共産主義民族革命もあったのではないですか。かつての共産党幹部らはクビになったり拘束されたり、あるいは追放され、民主革命の指導者や民主的な知識人が権力を握るのが普通ではないでしょうか。 一部の国家では実際にそうなりましたが、このケースはそれほど多くありませんでした。幹部の大部分はすでに教育、政治、行政の経験がありました。また最も重要なことは、国家所有に対する統制権があったため、事実上、民主化運動家であれ誰であれ、彼らに代わる能力がありませんでした。結局、ソ連崩壊から10年となる2000年代初頭に、15の旧ソ連加盟国のうち12カ国で共産党の高級幹部や保衛員出身者が最高指導者となりました。彼らはもともと共産主義や社会主義をそれほど信じて折らず、そのため共産主義体制が崩壊すると、それまでの考えや思想を簡単に捨てられたのです。 ――多くの共産主義国家では思想を最も重要視していませんでしたか。幹部の大多数が実際には思想を信じていなかったということでしょうか。 私が思うに、すでにずいぶんと前から共産主義国家で思想を強く信じていた人たちは出世が不可能でした。幹部らは事実上公務員です。公務員は愛国思想を持つことはあり得ますが、現実主義と機会主義が多い。世界どこでもそうです。 ――一般の人たちはこのような状況に対してどう反応していましたか。不満が多くなかったのですか。 不満はありましたが、思ったより多くはありませんでした。とくに若い人たちは社会主義時代より選択の自由が広がりました。そうでないこともありましたが、多くの場合、能力のある人は以前よりも成功しやくすなりました。しかも、社会主義崩壊後、経済生活と消費生活もまた多くよくなりましたから。 ――崩壊後の過渡期ではどうでしたか。 過渡期には強い失望をもたらしました。1980年代末に社会主義陣営で共産主義に反対していた人たちは、共産主義政権が崩壊するとすぐさまフランスや英国のようによりよい生活ができると思っていました。もちろんこれは大きな錯覚です。過渡期は混乱した時代であり、生活も厳しかった。苦労する人も多かった。とくに庶民は共産主義没落直後に生活が悪化しました。 過渡期は5~7年ほど続き、その後に生活水準は上向きます。今では多くの国で共産主義時代より生活がよくなり、一部の国は国家発展に成功しました。ただ反対に、共産主義時代と比べて状況がよくない国もあります。例えばウクライナとポーランドです。両国とも隣国であるだけでなく、言語も文化も似ています。現在のポーランドの平均所得は、共産主義時代の3倍ほどに達し、ウクライナのそれは共産主義時代とほぼ代わりません。 他の社会主義陣営の国家と比べると、ロシアの成功は普通です。とくに経済は過渡期に混乱しました。それでも2000年代初頭から成長を始めます。現在のロシア経済が成功だと示すいくつかの指標を見てみましょう。共産主義末期のロシアは、世界最大の穀物輸入国であり、それは協同農場を中心とする社会主義農業が必要なぶんの食糧を生産する能力がなかったためです。今では世界最大の穀物輸出国となりました。ソ連時代、書記長たちが強く願っていた穀物自立という夢を成功させたのは、集団農場ではなく個人農業でした。 またソ連時代には海外旅行はとてもまれなことでしたが、今では違います。2019年末時点で、4800万回の出国がありましたが、これはロシアでは3人に1人は毎年海外へ出かけているということになります。住宅建設もかつてより多く行われ、商店にある消費財の量も製品の質もソ連時代よりもはるかによくなりました。 ――社会主義時代の後期、いくつかの国に存在した反体制勢力は、共産主義の崩壊後は権力を握りましたか。 そうなった国もありますが多くはありません。しかし、政治に対して関心が高い人たちは出世することもできました。しかも、共産主義時代より自由になりました。もちろん社会主義陣営出身の国家の中で、多くの国は権威主義的傾向が強い。いわゆる優しい独裁国家だと言えます。そんな国は共産主義時代よりはるかに弱い独裁です。最も深刻な独裁は、おそらく現在の中国のような独裁です。もちろん北朝鮮の人から見ると、中国の独裁政権は金一族の独裁と比べることはできません。 ――体制崩壊後、一般的には主にどのような点に不満が高まりましたか。 1990年代の過渡期に不満がとてもおおかった。それでも現在のように多くはありませんでした。ロシアやウズベキスタンのような国で権威主義政権、すなわち独裁政権に対する不満があり、より自由な政治を要求する人も多く、不正腐敗に対しても不満が高まっている問題です。 ――変わった後の体制に満足できず、かつての共産主義に戻るべきだという主張する人はいますか。 ほとんどいません。これを示す指標もあります。旧共産主義陣営の国家の大部分で自由選挙があります。これら国家はすべて共産党が存在していますが、共産党に対する支持率は通常、10~15%水準です。共産党は個人食堂や個人商店、自営業の存在を約束し、中・大企業だけ国有化するという公約を掲げています。それでも、彼らに対する支持は低い。昔に戻りたいと思う人はごく少数です。 (RFA、2020年9月22日) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年12月01日 16時00分07秒
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