イッポリート
イッポリートは告白する。
「君たちが大事にしている自然や、パーヴロフスクの公園や、日の出と日の入り、コバルト色の空、充足しきった顔が、いったい何のために必要だというのだ。そもそもこのいつ終わるとも知れない饗宴は、ぼくひとりを余計者とみなすところからはじまったのではないか?そうしたもろもろの美しさが僕にとって何だというのだ?そもそも僕はいま、1分1秒ごとに思い知らされているのだ。太陽の光を浴びながら、僕のまわりをぶんぶん飛び回ってるこのちっぽけなハエでさえ、この饗宴と合唱の参加者であり、おのれの持ち場を知り、おのれの持ち場を愛し、幸せに感じているというのに、僕ひとりだけが死産児であり、自分がたんに臆病なために、これまでそれを理解しようとしなかったということを!」(新訳)
しかし、まあイポリート・チェレンチェフよ。
シェイクして、ダンスして、ジベリッシュして、静かに座ってごらん。ムイシキン侯爵のごとく、美にくつろげるはずだから。かといって白痴になるわけではない。