こううつざい の こうざい(抗うつ剤の功罪)
ネットでいろんな文章を目にしてきましたが、たいてい「抗うつ剤」はボロクソに叩かれています。一方で僕は「抗うつ剤に命を救われた」くらい抗うつ剤というものの力を体験して、いまこうして元気に復職して働けています。抗うつ剤の「功罪」について、自分の経験をふまえて書いてみます。1、抗うつ剤の効果は人それぞれ抗うつ剤はいろんな種類があって、作用機序も異なります(SSRI,SNRI,NaSSAなど)。また、同じ作用機序でも数種類あります(SSRI=パキシル、ジェイゾロフト、プロザック・・・)。なので、どうしても「あう・あわない」という差がでてしまいます。運よく自分と適合した薬と巡り合えるのが一番ですが、これがなかなかむずかしい。なかには「薬を飲み始めてから自殺する人が増えた」という報告があったりするようですが・自殺する気力すらなかったが、服薬によって自殺できるくらいまで気力レベルが回復してしまったと、いう悲観的な考えと・統計母集団(抗うつ剤服用者)が健常者に比べて自殺リスクが大きいと、いう統計上やむを得ない数字のマジックがごちゃ混ぜになっていると思います。最新の学説や研究成果はわかりませんが、健常者とうつ病患者を十分な人数追跡調査して、抗うつ剤の有無で「確実に差が出る」というところまで結論づけるには膨大な時間とデータが必要だと思います。それと、プライバシーの問題もあるので、医師と患者と患者家族の了承も必要かと思います。はっきりとしたデータがわかるといいのですが・・・。2、薬の効果が出るまでの時間がかかる一般に抗うつ剤は「飲み始めてから2週間程度」で効果が出る・・・と説明されます。これにはいくらか説があるのですが・血中濃度がある程度高くなるまでの時間・薬効成分が脳神経へ作用するまでの時間をいろいろ考慮したら、どうしてもそれくらいかかってしまうようです。抗うつ剤を初めて飲む人にはこの2週間がとてつもなく長く感じられるでしょうし、どうしても薬に期待してしまうところもあると思います。・・・このあたりは次に書きます。でも僕が今まで飲んで、てきめんに効果を実感したレメロン・サインバルタは、飲んでから3日程度で効果が明らかに感じられました。どうしても個人差があるので効果がでるまでの時間に確実なことはいえませんが、医者によっても説明は違ったりします(「2週間はかかるから」という医者もいれば「すぐ効果がでますよ」という医者もいます)。3、抗うつ剤は「対処療法薬」であって「特効薬」ではないうつ病というものはウイルスでもなければ、細菌でもありません。原因には諸説あって確実な証拠はつかめていないものではありますが、一般的には「モノアミン仮説(脳内伝達物質セロトニン・ノルアドレナリンなどの分泌低下)」で説明されています。インフルエンザのようにウイルス感染が原因の病気などは、インフルエンザウィルスへ抗生物質を投与することで原因を退治できます。ウィルスさえいなくなれば症状はおさまるので、薬を飲んでから回復までの時間は短くて済み、予後もいいです。一方で、うつ病のような「自己発生」タイプの病は、検査で値として出るものでもないし、発生原因となるストレスひとつとっても健康問題・人間関係・環境変化などなど・・・とにかく様々です。インフルエンザであれば予防接種もできますし、ウィルスが特定できれば特効薬も作ることができます。・・・が、健康な人が「うつ病になりそうだから抗うつ剤を飲んでおこう」・・・なんてことは普通ありません(アメリカではあるみたいですが)。原因が多くある上に、病気としては自己発生するという意味ではカゼと似ているので「うつ病は心のカゼ」とたとえられることがありますが、実際のところ・・・病気としての危険性レベルや発生メカニズムを考えると「うつ病は心のガン」と捉えた方が自然かと思います。死亡率(うつ病からの自殺リスク)も、患者数も、自己発生するところもガンに似ている気がします。長くなりましたが、抗うつ剤というものはモノアミン仮説に基づいて「減少している脳内伝達物質をサポート」するものであって、その脳の状態そのものを回復させることはできません。どうしても「薬=すぐ効いてよくなる」というイメージが強いせいか、抗うつ剤にも同じような結果を期待しすぎている方もおられるかと思います。しかしながらうつ病などのメンタルに関する薬には上に書いたような即効性も、特効薬的な力もありません。・・・ただ、そのかわりに「抗うつ剤のことを信用する」ことが、効果に差を生みます。これまでの話から一転して精神論か!と思われる方もおられるかもしれませんが、抗うつ剤のようなメンタル関係の薬は効果実証のための治験(新薬の実証実験)の過程で『患者の思い込みによるプラセボ効果でなく、確実に有意の差が確認されること』がとてつもなく重要であります。「レメロン」という薬が2009年に認可されましたが、この薬は日本で認可された抗うつ剤の中で唯一『プラセボ(偽薬)と比較して、確実に効果が確認できた』薬です。※くわしくはhttp://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se11/se1179051.html を参照のこと。もちろん、ほかの抗うつ剤に効果がない、というわけではありません。ここで僕が言いたいのは同じ状態で同じ薬を飲んだとして、・『どうせ効かないだろう』と思って飲んだ場合・『効くかもしれない』と思って飲んだ場合では、同じ効用が出たとしても、結果としての症状変化には大きく差が出る・・・ということです。前に書いた通り抗うつ剤というものは『特効薬』とはいえませんが、飲み方・捉え方によって得られる効果に差がでるものです。どうせ同じものを飲むのだとしたら、少しだけでもいいので「抗うつ剤に頼ってみようかな」というくらいの感じで、過度に期待はせず、かといってまったく期待しないでもなく・・・そうあってほしいです。にほんブログ村にほんブログ村