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ヴィーテ・イタリア高岡(Hiruccio)のイタリアワイン&主夫日記

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2008/07/11
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カテゴリ:映画と読書

清作の妻(DVD) ◆20%OFF!


不覚にもラストでは、ボロボロと泣いてしまって涙を止める
ことができませんでした。


純粋にして本質的な愛の姿が、人間の本性としての愛の形が
美しく、あまりにも美しくほとばしっていたのです。


ファーストシーンは、都会の成金に囲われた二十歳の妾である
お兼(若尾文子)をこの醜い老人が陵辱するシーンから
始まります。

そして千円の遺産を与えると遺言に書いたとお兼に伝えて
風呂を浴びているときに転倒して急死します。

(このオヤジが何度も風呂に入るのですが、そこに老人の
 スケベ心が描かれていて、なかなか良いのです)

極貧の彼女の家では、父も死に、残った母親は故郷の村に
帰って死にたいと言う。

大金を受け取った彼女は、不本意ながら母親と共に村に帰り
ますが、待っていたのは、村人からの蔑みの態度だけでした。

この時代の妾上がりの女性に対する田舎での偏見の強烈さは
想像に余りある感じのですが、若尾文子の精気のない
美しさというのが本当に悲しいのです。


小さな農家の貧しい縁側に何をするでもなく、無気力に
腰掛けて、うつろな表情で時を無為に過ごすその絵は
女性としてのすべてを奪われた女の精神状態を如実に
映像化したものです。


そこに「お国の模範青年」として兵役を終えた清作
(田村高廣)が村に戻ってきます。

清作は、翌早朝から、軍隊で貯えた金で誂えた鐘を
鳴らして、村人の怠惰な生活を改めさせようとし
まさに村民の英雄になっていくのですが、これが
お兼の生活態度とバッティングするのは時間の問題でした。


「あんたのところには鐘の音が聞こえんらしいのう」
「図に乗って模範青年面しない方がいいよ!」


こうして二人は出会うわけですが、次に出会うのは
お兼の母が急に倒れて、血相を変えたお兼を清作が
助ける時で、葬式も清作の尽力で終えます。

この辺り・・・
日本の心優しい、正義感の強い青年が、妾になって
いたという理由で村八分にあっている若き美しき女性に
コロッといってしまうのは、まあ当然ですわね(^^)

愛の中には正義感とか同情とか男気のようなもの
も多分にあったでしょう。お兼に惹かれ、そしてお兼も
初めて心から頼れる男に出会って恋をする。


こちらは正真正銘の恋であり、愛欲、そして妾時代の
不遇の反動も当然あるでしょう。妄執に近いほどの強烈な
恋愛感情です。


二人が身体を貪り合うシーンの白黒映像はなかなかに
艶かしいです。

でも、ここではまだ本物ではないのですね。狂おしいまでの
肉体的な接合が何度も何度も繰り返されるのですが、ラスト
を思えばまだまだなのです。


そして物語のトーンが高まるのが、日露戦争の勃発によって
清作が出征が決まってからです。


若尾文子が身体全体で苦しむ映像が今でもまだ脳裏から離れ
ません。胸が詰まって、のた打ち回るような悲しみを越えた
苦しみであり痛みです。


清作は別れを惜しみつつも、片方では最前線に志願するほど
やる気満々なのです。


ラストをここで書こうかどうかは迷う所ですが、やはり
書きます(^^;)映画はストーリーで見るものではあり
ませんから。


一年後に負傷した清作が帰ってくるのですが、治癒した
清作が再び出征するとなって、最後の村を上げての
大宴会の式が終わろうとする頃、お兼は、清作を戦争に
いかせまいと彼の両目を五寸釘で刺します。


半狂乱のお兼。


お兼をレイプに近いリンチにする村の男たち。


「お兼の奴、殺してやる!」と罵る清作。


お兼の服役中、清作は村人から執拗な攻撃を受けます。要は
売国奴ということです。石を投げつけられ、昔お兼が受けて
いたのと同じ村八分を受ける。


ここで初めて清作はお兼の孤独と自分への愛情の深さを知る
のです。


自分の感じている孤独をお兼の孤独と重ね合わせるのです。


服役を終えて「殺されてもかまわない」と村に帰ったお兼を
盲目になった清作が許すのは自明のこと。そして二人は一生
村人の変わらない偏見にさらされながらも生きていくのです。

「反戦映画」と言うようなレベルの映画ではありません。
もっと本質的な人間性をあぶりだすものです。


このシリアスなドラマを見ているときに、僕は
「天才バカボン」を思い出しました(^^;)


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というのも、主人公たちと村人という対立する構図が
バカボン一家と世間という構図を持つ「天才バカボン」に
酷似しているように思えたからでした。


ストーリーばかりを追うと、二人の主人公のことばかりを
描写しているようですが、むしろこの映画で優れている
のは村人への視線であり、描き方だと思います。


村人の強欲さ、偏見にしかとらわれない言動、意地汚さ
がありとあらゆるシークエンスに絢爛と出ていて戦慄する
くらいに、この映画は、明治の「世間」を描ききって
います。


主人公の愛というものがピタッと描ききれているのは
村人たちの世間という、主人公たちの周囲を描くことに
よってより鮮明になっています。


もう一つ思い出したのは、イタリアのマルコ・ベッロッキオ
監督作品で「肉体の悪魔」という映画です。


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ローマを舞台にした政治的、また精神医学的なベロッキオ独自の
世界ですが、愛、性欲、肉欲、妄執、これら社会の規範の中では
悪と捉えられがちなものが、実は現代社会を大きく変革して
本来の人間性を取り戻すための莫大なエネルギーになりうるという
視点は増村のポリシーと深く重なるものがあると思いました。


その絵の美しさ、カットカットのリズム感と重厚でモダンな
音楽とのシンクロはもう円熟の域に達しているかのように
洗練されています。


元々「絵作り」には定評のある、奥行きのあるフレームを
つくる増村ですが、今回はここに白黒の映像美、美術の
素晴らしさが加わって、「文芸大作」的な趣すら出て
いました。


愛というのは本質的に孤独と強烈に結びつきあうものなのだと
改めて、そして久しぶりに感じました。


疲れた身体に鞭打って、夜中に観ましたが、寝不足の翌日、
かえって元気になりました。そういう悲恋映画です。


1965年作。黒澤の「赤ひげ」と同じ年の映画なんですね。

是非、お勧めします。


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Last updated  2008/07/15 01:58:44 PM
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