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クラシック音楽は素敵だ!!

クラシック音楽は素敵だ!!

私の漫画ベストテン・第一位:火の鳥

<私の漫画ベストテン>

 

 「漫画」。戦後、天才・手塚治虫から始まったこの日本独特得の表現方法は多くの天才・異才達の努力によって、半世紀をかけて世界に冠たる「文化」に成長しました。現在も多くの作品群が生み出されていますが、この文化の中核はなんといっても昭和の時代に描かれた名作群であることは疑いの余地もありません。昭和30年代後半生まれの私は、それらの光り輝くような作品達にリアルタイムで接する幸運に恵まれました。実際はとてもベストテンに収まりきれない名作がひしめいているのですが、あえてこのコーナーはそうした不滅の名作を10点選び、紹介させていただくものです。



私の「漫画ベストテン」は以下の通り。この後各作品について一回づつ、解説をしていきたいと思います。


第一位   火の鳥        手塚治虫

第二位   ポーの一族      萩尾望都

第三位   カムイ伝       白土三平

第四位   2001夜物語    星野宣之

第五位   ブラックジャック   手塚治虫 

第六位   坊ちゃんの時代    谷口ジロー/関川夏央

第七位   あしたのジョー    ちばてつや/高森朝雄

第八位   ベルサイユのばら   池田理代子

第九位   宇宙戦艦ヤマト    松本零士

第十位   闇の客人(まろうど) 
      妖怪ハンターシリーズ 諸星大二郎


<第一位:火の鳥/手塚治虫>

 

Hinotori

<昭和43年初版表紙>
  


 それでは第一位:手塚治虫「火の鳥」について・・・
「火の鳥」は完成された以下12作品からなっている。結末は作者死去のため未完。(未完の初期黎明編、ギリシャ・ローマ編はのぞく)


・黎明編  舞台は三世紀邪馬台国。(1967年連載開始)

・未来編  舞台は35世紀。人類の滅亡と再生を描く

・ヤマト編 四世紀大和の国での権力闘争。

・宇宙編  2577年、ペテルギウス第三惑星から出発するロケットには・・

・鳳凰偏  奈良時代。我王と茜丸、二人の彫師の数奇な運命

・復活編  2482年、人間レオナとロボットチヒロの恋。

・羽衣編  平安時代、平将門を軸に展開する物語

・望郷編  遥かな未来、年代設定不詳

・乱世編  平清盛は永遠の生命への執着を示し・・・

・生命編  2155年、クローン・マンハント解禁!

・異形編  室町時代、八百比丘尼は特殊な能力を持つ者として尊敬されていたが・・・

・太陽編  舞台は1999年~2009年。火の鳥を地球に持ち帰った大友は英雄となり、火の鳥を崇める光の教祖となるが・・・(1988年執筆、これが最後の作品となる)

 初めてこの作品(黎明篇、未来篇)を読んだのは中一の夏休みだったと記憶している。朝日ソノラマから大判の復刻版がでて、二冊を一気に読んだのだった。
 
 当時クーラーのない暑い自分の部屋で、むさぼるように「未来編」を読み終えて、鳥肌が立つほどの感動を覚えた。それこそ全身鳥肌が立っていたのだ。「こんな作品を人間が書けるのか!?」あまりの壮大なスケールの内容に、しばらく呆然としていたことを今もはっきり覚えている。


「火の鳥」は生命と死をテーマに、手塚治虫がライフワークとして30年以上にも渡って書きつづった大作だ。1954年の「黎明編」から始まり、「未来編」「ヤマト編」「宇宙編」「鳳凰編」「復活編」等、全12作が完成されているが、手塚の死によって未完のままとなっている。

 各エピソードは「黎明編」が3世紀、次の「未来編」が35世紀というふうに時代は過去と未来を行き来し、その各エピソードの中で生と死をテーマにした別々の物語が展開される。各エピソードは皆独立した物語だが、互いに関連している部分も持たせている。そうやって過去と未来を行き来しつつ、最後は現代をテーマにして物語の幕を閉じるという構想だったらしい。

 各エピソードの主人公はその時代の人間やロボット達。タイトルになっている火の鳥は語り部や狂言回しとして登場し、「宇宙生命体(コスモゾーン)」として全ての物語の重要な構成要素となっている。

 私がとにかく感動したというか驚いたのが「未来編」。1967年の作品なのに、すでに人類の核戦争による滅亡を描き、驚くなかれその後生き残った主人公マサトが火の鳥によって永遠の生命を与えられ、30億年を生きて再び生命の復活を目撃するという壮大なストーリーになっている。

当時核戦争による人類滅亡を描いた作品はすでに存在していただろうが、その後の生命再生を「億」の年月単位で構想できたのは世界中で手塚治虫くらいだったのではなかろうか?あのスタンリー・キューブリックでさえ、67年当時ではまだ考えてはいなかったのではないだろうか。

 現在「プルートウ」を連載中の浦沢直樹氏もこの作品を読み終えた後、「しばらく呆然として何も手につかなかった」と語っている。

 あまりの壮大さ、洞察力の鋭さに息が止まるほど驚き、「漫画の力はすごい!」と認識させてくれたのがこの作品だった。以来、全てのエピソードを読んだが、未完に終わってしまったことが残念なのは多くの読者も同じ思いだろう。

 「未来偏」では地球規模の生命の再生を描いたが、「鳳凰偏」では奈良時代に舞台を置いて、茜丸と我王という二人の対照的な人物の数奇な運命を重厚なストーリーと画力で描ききる。おそらくはこの「鳳凰偏」こそがシリーズの最高傑作といえるだろう。

 その他にもクローン技術の悪夢を予見した「生命編」、人間とロボットの恋を描いた「復活編」、極上のSFミステリーに仕上がった「宇宙編」、平清盛の永遠の生命への執着が描かれる「乱世編」など、どの作品も非常にクオリティが高い。

 いつの時代でも変わらぬ権力者たちの永遠の生命への渇望、輪廻転生、時間パラドックス・・・とにかくありとあらゆるテーマがぎっしりと詰まっている。この「火の鳥」こそは漫画の神様・手塚治虫にしか書くことができない、一世一代の作品であった。全ての戦後漫画作品の頂点に立つ、不朽の名作だと思う。


2009年現在では文庫版全集しか手に入らないようです・・・

火の鳥(文庫版) 1-13巻 漫画全巻セット



私が最も驚愕した「未来編」です

火の鳥(2(未来編))





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