|
カテゴリ:カテゴリ未分類
![]() 木材業界関係者の間で話題になっている、「里山資本主義」を読みました。 「マネー資本主義」が行動を刹那的にしているという視点は 正しいと思いますし、化石燃料依存を減らして、 里山にあるものを使ってエネルギーを自給していこうという、 本書の論旨には基本的に賛成です。 銘建工業のバイオマス発電の話からはじまり、オーストリアの ギュッシング市の事例など、地域からお金を出さずにエネルギー を自給することで、地域が活性化する事例が描かれています。 「木材は捨てるところがない」といわれますが、実際には 切り捨て間伐が行われているわけで、林地残材をどう処理するか、 さまざまな取り組みが行われてきましたが、決定打はないのが 実情です。 林野庁の林地残材フル活用実証事業などで、4年間評価委員としてお世話になった際に 感じたのは、里山からエネルギーを取ろうとするのであれば、 発電だけではまず採算が取れないので、熱電供給にすることが 最低限必要だということです。 近い将来、化石燃料が枯渇し始めれば、里山がもっと見直される ことは大いにあり得ると思います。いい視点をもった本です。 気になるのは、里山のいいところしか書いていないことです。 吉幾三の「俺ら東京さ行くだ」ではないですが、田舎が嫌いで 東京に出てきている人はたくさんいるわけで、負の側面にも触れて、 それでも里山にはこんなにいいことがあるんだよという主張に したほうがいいと思うのですが、少々美化しすぎのように感じます。 取材の中でストーリーを作っていき、ストーリーにふさわしい部分は 取り上げるけれども、ストーリーにふさわしくない部分は切り捨てている ように、読者としては感じます。テレビのドキュメンタリー番組を 見ているような本です。 「これが日本の解決策!!」という帯のコピーはちょっと大げさですが 木材業界関係者にとっては、森林・里山の将来を考えるうえで 一読に値する本です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|