ウスグモスズ?の若齢幼虫
先日、ベランダの椅子で一服していると、直ぐ横にあるクチナシの葉裏に、以前紹介したハリブトシリアゲアリ(体長3.5mm)位の小さな虫が居るのが目に入った。しかし、良く見るとアリではない。ツツーと2~3mm前に進んだかと思うと止まり、暫くすると、またツツーと進む。 早速マクロレンズで覗いてみた。クサヒバリ類の幼虫らしい。ウスグモスズ?の若齢幼虫.体長は尻尾の突起を入れないで約3mm(2009/07/01) 葉裏のにいる虫というのはストロボでは撮り難い。逆さの儘少し撮ってから、葉をソ~と裏返して、先ずその位置で正面から撮る。次に葉を回転させて横からも撮ろうと思ったのだが、途中で逃げられてしまった。こんな小さな虫にピョンと跳んで逃げられたら、もうお終い、二度と見つからない。そんな訳で、今日は葉裏の逆さまの写真と正面からの写真だけである。第2付節が膨らんでいるのはクサヒバリ科の特徴(2009/07/01) さて、この虫、何の幼虫か。小型であり、また、第2付節が膨らんでいるので、クサヒバリ科(Trigonidiidae:ヒバリモドキ科とも呼ぶ、コオロギ科クサヒバリ亜科とする場合もある)に属すことは間違いないだろう。東京都本土部昆虫目録を参照すると、クサヒバリ科にはキンヒバリ、カヤヒバリ、ヤマトヒバリ、クサヒバリ、キアシヒバリモドキ、ウスグモスズの6種が登録されている。しかし、キアシヒバリモドキは山地性が強いそうだし、キンヒバリは水辺の葦原、カヤヒバリは乾燥した背の高い草原、ヤマトヒバリは自然度の高い林縁等に棲息するとのこと。都区内の住宅地の灌木上に居る可能性があるのはクサヒバリとウスグモスズだけの様である。 この2種の内、クサヒバリには後腿節の外面に2本の暗色縦条がある。それに対して、ウスグモスズは無紋で全体に淡色である。・・・とするとこれはウスグモスズと言うことになる。それに、この付近にウスグモスズが居ることは既に確認されている。しかし、写真の虫はまだ若齢幼虫、生長すれば暗条が出て来る可能性も否定はできない。 其処で、此処では「ウスグモスズ?の若齢幼虫」と「?」を付けておいた。クサヒバリ類は正面から見ると中々可愛い(2009/07/01) ウスグモスズ(Usgmona genji or Usugumona genji Furukawa, 1970)と言うのは変な虫である。1属1種、日本以外からの報告が無いにも拘わらず、原産地不明の外来種とされている。 学名を見てお分かりの通り、1970年と言うかなりの最近に、日本人の手によって記載がなされている。北隆館の大圖鑑に拠ると、1960年代に東京都区部西部で最初に発見され、その後急激に分布を拡げたとのこと。当然、新種、しかも新属、これは大変なことである。 東京都区内から直翅目の新種の出る可能性など、常識的には殆ど考えられない。其処に、新種よりももっと可能性の少ない新属が突如として現れた(しかも、恐らくかなりの頭数で)、と言うのが、このウスグモスズが帰化種と考えられている根拠らしい。 実は、このウスグモスズの成虫に関しては、昨年の暮れにもう一つのWeblogでかなり詳しく紹介した。同じことを繰り返して書くのは些か気が引けるし、また長くなるので、この奇妙な由来の虫に感心を持たれた読者諸氏は此方を参照されるよう御願い申し上げる。