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2006.10.29
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カテゴリ:日誌
 乳癌の診断機会が増加している.画像診断情報を参照しながらの診断が当たり前になったことが従来との違いである.病院病理医にとって乳腺疾患の診断は最も真価を問われる課題である.画像診断の向上により,かつては遭遇しなかったような境界病変の判断を委ねられることもある.微妙な病変はセカンドオピニオンを求めるよう診断書に記載することもある.
 Breast Journalの編集主幹であり病理医でもあるShahla Masoodが,乳腺病理の標準化と診断の質の改善を訴え編集記を書いている. Dr. MasoodはFNACについてのモノグラフを出版していることからも乳腺の吸引細胞診にも造詣が深い病理医である.乳腺病理のコンサルタントとしての立場から米国の乳腺病理の現状を憂えている様子が窺えて興味深い.乳腺病理をサブスペシャルティーとして独立させ,特別なトレーニングプログラムにするよう提言している.

日本での現状はどうか?日本では乳癌の報告形式は「乳癌取扱い規約」(金原出版)に沿って長年に渡り標準化されている.日本独自の浸潤性乳管癌の分類である乳頭腺管癌,充実腺管癌,硬癌の定義が曖昧なことを除けば,米国のCAP practice guidelineよりは優れた包括的な内容を含んでいる.病理医は従順な人が多いので,敢えてこの規約を逸脱した病理報告書を書く人は少数派のように思う.しかし昨今はDCIS,境界型乳頭状病変,硬化性乳腺症,その他の良性乳腺疾患が生検診断の対象となることが多い.これらの病変の病理学的な定義や良性疾患の記載の基準は曖昧で,病理医により意見は不統一である.Masoodが指摘するように,加齢や退行化病変の記載も統一する必要がある.「乳腺症」の定義は曖昧なままであり,画像診断との整合性に沿って定義しなおすことも急務である.UDH~ADH~DCIS (low grade)~DCIS (high grade)の区別もWHO分類に沿って明確にしてほしい.米国のように乳腺病理専門医を養成する必要はないであろう.
 日本にも尊敬すべき優れた乳腺病理医がいるが,世界の潮流をリードしていく勢いは乏しい.英語力に秀でた若手の病理医に頑張ってほしいと思う.個人的には何度も講演を聴いた癌研のS先生の乳癌診断のスタンスが好きである.「乳腺病理では良性病変を癌と誤診しないことが重要である.境界異型病変は様子見でよい.」乳癌というと乳房切断術が標準であった時代には極めて重要な格言であった.しかしこの格言は生検材料が小型化し,FNACでの診断が先行する今日益々重要度を増している.
 
Shahla Masood. Raising the bar: a plea for standardization and quality improvement in the practice of breast pathology. Editorial. Breast J. 2006; 12: 409-412.





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Last updated  2006.10.29 15:12:51
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