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テーマ:いい言葉(576)
カテゴリ:文学・芸術
▼悪の華(猫1)
昨日書き忘れましたが、「秋の日」は「眼」の中の「緑がかった光」が好きだと書かれていることからも、「緑の目のヴィーナス」詩編に属していることがわかりますね。 さて、「秋」で薔薇から脱線したついでに、『悪の華』に出てくる「猫」の詩編を三つ紹介してしまいましょう。最初は「黒いヴィーナス」のジャンヌ・デュヴァルに捧げられたとみられる「猫」です。 Le Chat(猫) Viens, mon beau chat, sur mon coeur amoureux; Retiens les griffes de ta patte, Et laisse-moi plonger dans tes beaux yeux, Mêlés de métal et d'agate. おいで、私の美しい猫よ、恋をする私の胸の上へ。 お前の脚の爪はしまっておくれ、 そして金属と瑪瑙(めのう)を混ぜ合わせた お前の美しい眼に浸らせておくれ。 Lorsque mes doigts caressent à loisir Ta tête et ton dos élastique, Et que ma main s'enivre du plaisir De palper ton corps électrique, 私の指がゆっくりとお前の頭と 弾力のある背中をなでていると、 そして私の手がしびれるような お前の体をまさぐる喜びに酔いしれていると、 Je vois ma femme en esprit. Son regard, Comme le tien, aimable bête Profond et froid, coupe et fend comme un dard, 私の恋人の姿が浮かんでくる。彼女の眼差しは お前の眼に似ている、愛すべき動物よ、 深く、冷たく、やじりのように切れ長のお前の眼に。 Et, des pieds jusques à la tête, Un air subtil, un dangereux parfum Nagent autour de son corps brun. つま先から頭のてっぺんまで、 張り詰めたような気配、危険な芳香が 彼女の褐色の体全体に漂っている。 ほとんど解説の必要はありませんね。猫をなでながら、恋人のジャンヌのことを思い出している詩です。ボードレールにとってジャンヌは、独特の香りと爪でよく表現されます。いつも引っかかれているんでしょうね。「爪はしまっておくれ」とは、思わず笑ってしまいます。ジャンヌの肖像画には、確かに「やじりのように切れ長」になった目が描かれていました。 さて、猫ちゃんの写真ですが、ジャンヌのような猫の写真はありませんでした。 その代わりに、かわいい鎌倉の黒ちゃんを紹介します。 そしてこちらは、まだら模様の江ノ島のミケちゃん。 明日はマリー・ドーブランに捧げられた「猫」を紹介します。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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