よろず屋の猫

忘れたくなかった、町、光、空気、父さん、母さん・・・。
もう大好きだったことしか思い出せない。

テラへ、テラへ、テラへ・・・。
しかしそれすらもマザーが見せる夢に過ぎないことをシロエは知らない。


逃げ出したシロエ、自室に匿うキース。
「機械の言いなりになって生きることに何の価値があるんだ。」
お前はマザー・イライザの申し子。
「フロア001、自分の目で真実を確かめろ。」

キースの部屋へ管理側の人間が押し入る、連れ去られるシロエ。

翌日キースは、サムや他の者達が前日の訓練飛行時の出来事を忘れている事を知る。
記憶の消去。
更にシロエの存在も忘れ去られている。

ステーションの窓に映る映像はテラ?。
「思い出せ、思い出せ、記憶はそれぞれが持っている大切な鍵。」
ジョミーは語りかける。
「僕たちの事を知ってほしい。」

その場に居たものは皆、子供に戻ってしまう、ただ一人キースを除いて。
システムを一時遮断するキース。

シロエの能力が発現、手首を捉える枷が外れる。

マザー・イライザに呼び出されたキース。
ミューとは何か?、何故サムの記憶を消す?、あの幻は?、何故僕だけが影響を受けない?。
キースの疑問を、「混乱してますね。」の一言で片付けるイライザ。

逃げ出したシロエは船を盗む。
ネバーランドに行きたい、もっと良いところがあるよ、テラだよ。

イライザの冷たい声が命じる。
「シロエが逃げ出しました。追いなさい。反逆者を逃がす訳には行きません。」

朦朧とした意識で「ピーターパン」を物語するシロエ。
停船を命じるキース。

僕の中で何かが起きた、何かが生まれた。
混乱、いや、高揚。
熱く、苦しく、痛い。
初めての感情。

「イヤだ!!、大人になんかなるもんか!!、大切なものも皆なくしてしまう!!。」、悲鳴のようなシロエの声。

「撃ちなさい。」とイライザ。
かぶっているマスクにシールドかかって、キースの表情が見えない。

シロエの瞳にはピターパンが、テラが見える。
「皆で行こう。」
僕は自由だ、いつまでもどこまでも飛んでいける。

キースの船から放たれた一条の光、弾けて、輪になって広がる。

シールドが取れたとき、キースの目から涙が流れていた。


『地球へ・・・』の中で、私が一番好きなエピソードです。
もぅ、泣けました・・・。

シロエは自分が育ってきた月日を大事に思っていた。
その記憶を根こそぎ奪ったシステムが許せない。
キースへの反抗はその代償行為、キースはシステムの申し子だから。
システムは大きすぎてシロエには手が出せない、けれどキースは人間、壊してやることが出来る。

テラ再生の為だからと、システムに管理され、記憶を奪われる。
異を唱える者は抹殺する。
それを当たり前と思っている人間達。
シロエはそこからはみ出した者でした。

キースに向かった行為は幼い、けれどそれすらも私には人間らしいと思えます。

シロエはキースに「自分の目で確かめろ。」と言う。
あるいはキースに理解して欲しかったのかも知れないと思いました。
そうあって欲しいとも思います、反抗だけでキースに執着したとは余り思いたくないです。


一方のキース。
キースは優秀な人間です。
シロエに揺さぶられ、感情を知り、シロエの人間としての在り様の訴え掛けを理解できないわけがない。
それでもキースはシステムを選ぶ。
“いつか人間はテラに戻る”、この為にシステムは必要だと言う判断。
それはシステムによるプログラミングによる成果なのか、それともキース個人が純粋にした判断なのか。
これまたキースの判断と思いたいですねぇ、私は。
ただのシステムの人形だとは思いたくないのですよ、大好きなキースを。

シロエを撃つ前にキースの表情が見えなくなり、シロエが宇宙の塵と消えた後で見せた涙。
この演出が良かったです。


最近、心理描写をセリフで語らせるアニメが多くて・・・。
私はこれがどうにも好きではないのですよ。
饒舌に語れば語るほど陳腐に聞こえちゃって。
アニメなんだから絵で表現して、そこからこちらに感じさせて欲しいんだなぁ。

なんだけど子安さんの声だと聞き入っちゃうのは何故だろう。

目の方は“絵で表現して!!”なのに、耳の方は堪能しました、キースの心を。


原作は確かシロエが死ぬ瞬間、その思いが微かにジョミーに届いたシーンがあった覚えがあるのですが。
ジョミーはそう言う気がしたと思うシーンが。

オリジナルではシロエの子供の時代に係ってしまったジョミーですから、入れて欲しかったです。



DVD第１巻、左は限定版、右は通常版。
　


“地球へ”で検索すると何故か山ほどヒットするガンダム。
10月から新シリーズが始まるそうで・・・。