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カテゴリ:小説・海外
原題は『Die A Little』で、邦題で補完して、チャンドラーのミステリーに出てくる有名なセリフです。
その雰囲気を描いたミステリーで、舞台は現代ではないです。 ネタバレはしてませんが、内容に触れています。 未読の方はご注意ください。 ![]() ↑ハヤカワ・ポケット・ミステリーの本を読むと言うだけで、嬉しくなっちゃう私です。 ローラの兄・ビルは事故が縁で知り合った女性・アリスと結婚する。 しかしアリスの振る舞いに少しずつの違和感を感じるローラ。 やがてアリスの周辺で事件が起こり・・・。 冒頭にローラとビルの描写があり、この兄をローラが如何に愛しく思っているかが分かる。 この思いが話を引っ張っている。 アリスはビルとの生活のような“普通の暮らし”を強烈に望んでいる一方、隠された生活における世界をも望んでいるのですね。 どちらも欲しい、どちらも捨てられない。 その描写を読むと所謂“悪女物”?、と言う感じもありますが、やはり私としてはローラの強い思いの方が印象に残りました。 ビルは事故でアリスと知り合い、恋に落ち、あっという間に結婚してしまう。 アリスは魅力的だが、大事な兄をとった人物でもあるし、そう言う描写はないにしろ、ローラには思うところがあるのを感じられる。 そのアリスの躁病的な振る舞いに違和感を感じるローラ、一つ一つの出来事によってそれが徐々に膨らんでいく前半はゆったりしたペース。 “事件”が起こってからはペースが早くなり、ローラの焦燥感も強くなります。 ラストでビルを助けるために取った行動、その成果にローラが思う事には怖さを感じるくらいです。 結局のところ、ローラが一番望んでいたのが何であったのか、如実に分かります。 アリスは、自分に疑いを持っているローラをコントロール下に置くために、撮影所で働く男・マイクを紹介します。 で、このマイクとビル、普通の状態ではしないような事をするわけですが、アリスがローラに、マイクを「彼は恋をしていて判断力がつかなくなっていたのね。」と言う。 後で今度はローラがアリスに対して、ビルを同じセリフで言うシーンがあります。 しかしこれは、両者、誰を思って言っているのかが全く違っていて、このやりとりが話全体を象徴していると思いました。 アリスにはビルの妹として、新しい家族となったローラに対する思いはある。 しかしローラには一片もなかったのでした。 犯罪にこの言葉を使うのもどうかと思いますが、他に思いつかないので書いちゃいます。 古き善き時代の犯罪を扱ったミステリー、と言う感じで楽しめました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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