フィンランドの教育関係のサイトを集めました
さて、いよいよフィンランドの教育関係のサイトです。<「北欧視察報告 フィンランドの教育(視察報告抜粋) ↓2008年1月2日 臨床教育研究所「虹」作成>http://www2.odn.ne.jp/~oginaoki/report-hokuou.html教育評論家で早稲田大学大学院教育学研究科客員教授 尾木直樹先生が主催する【臨床教育研究所「虹」】による北欧視察報告です。 教育制度、財政、進路選択、大学入試、フィンランド人の教育観、教師について、ホームスクールについて、子ども、親に関する問題の増加について、などフィンランドの教育の現状について広範囲に目が行き届いているレポートになっています。 特に、「ホームスクール」についての記述、フィンランド版モンスターペアレンツについての記述が興味深いです。↓<フィンランドの教育-学習義務を中心に->http://www.d7.dion.ne.jp/~jussih/opetus/perusopetus.htm Minustaさんという方のサイトです。、67年から69年の2年間フィンランドに滞在しておられたとのことです。 ホームページは↓http://www.d7.dion.ne.jp/~jussih/index.htm フィンランドについての様々な情報が掲載されています。 この方が滞在しておられたころのフィンランドの学制は複線型学校体系で、教育による格差是正が充分に機能しない状態だったようです。1968年に基礎教育学校法制定を受けて、69年から77年までの間に全国が単線型学校体系に変わった、という経緯が書かれています。 法律が施行されたあとも、単線型の学校体系が全国にいきわたるまで数年かかっているということが興味深いです。検定教科書の廃止や税配分、教員採用を含む権限が国から地方自治体へ委譲が行なわれたのは、90年代のヘイノネン教育相の改革なのですが、それ以前から、国と地方自治体との関係が日本とはまったく異なるようですね。 また、1999年に施行された基礎教育法の解説と和訳へのリンクも掲載されています。解説の中で面白かったのは、「子どもの学習義務」についてです。基礎教育法25条には、「通常フィンランドに居住する子どもは学習義務を負う」と記されているのだそうです。「基礎教育で学習すべき課程を修了すること」が前提であるため、充分に学習レベルが到達していない場合は「落第」もありうる、というわけです。<現代教育学 「北欧の少人数教育を支える教育観」↓ 信州大学 教育方法学 伏木久始先生 >http://w2.avis.ne.jp/~fkevin/denmark-finland0719.pdf 前にもご紹介しましたが、93枚のスライドをPDFファイルで掲載してあります。 表題のスライドでは、デンマークとフィンランドの教育を取り上げていて、豊富な写真とわかりやすいまとめのスライド計97枚で構成されています。修士課程の授業で使ったスライドのようです。 最後のまとめとして、------------------ 自分の中の固定観念から自由になり、 自分自身の教育経験を「特殊事例」の一つと認め、 多様な子どもに一律な教育方法を強いることなく、 オルタナティブな発想を持つ教育者であってほしい (97枚目のスライドより引用)----------------- とあるのが、印象的です。 ページの「しおり」をクリックすると、様々なスライドが入っていますからとても勉強になるサイトです。<「フィンランド学校視察報告書」 ↓2006年10月公共政策プラットホーム>http://www.platon-web.net/pdf/2007/0610finland.pdf こちらは、民主党のシンクタンク「公共政策プラットホーム」によるものです。↓「公共政策プラットホーム」のホームページです。http://www.platon-web.net/で、「フィンランドの学校視察報告」のページでは、38枚のスライドをPDFで掲載しています。目次を以下に引用します。----------------1.PISAショックとフィンランドの躍進2.フィンランドの教育システム3.フィンランド学校視察4.学校視察からわかったフィンランドの教育システムの特徴5.フィンランドの教育現場からの示唆(スライド2枚目より引用)---------------- なかなか目配りのいい報告だと思いました。おそらく、日本の教育現場、子どもをめぐる状況をよく知っている人が視察に参加しておられるのだと思います。 このスライドで初めてフィンランドの「学童保育」のことを見ることができました。 <4.学校視察からわかったフィンランドの教育システムの特徴 スライド31>に、>低学年の子どもの場合(通常、小学校1~2年生)、親が帰宅するまで学校で預かる(学童保育)ことも可能(有料)。 とあります。 また、>教員の給与が高いわけではない。フィンランドにおいては教員は「聖職」と捉えられている。ということや、学校が地方自治体の運営であるため、>地域の財政力によって運営資金余力が異なる。資金難に苦しむ学校も少なくない。ということも書かれていました。(スライド34)<5.フィンランドの教育現場からの示唆>も興味深いです。以下、引用します。-------------------・9年間の一貫教育により、高校卒業まで「競争」がない。どこの学校に通っても同じ教育が受けられる(そのかわり、習熟度別に児童・生徒をより細分化して指導する必要がある)。・教育機関や教育産業が将来に関する情報を網羅的に提供するということは行なっていない。情報は自らの責任において収集するという考え方。・学校がレベル分けされない結果、教員に「あきらめ」が発生しない(習熟度別にそれぞれ指導)。・人口が少ないため、小規模学級での運営が可能。・「なぜ?」を問いかけ続けることにより、児童・生徒の思考力(論理展開力)を徹底的に鍛え込む。(スライド38より引用)-------------------- 民主党のシンクタンク、「公共政策プラットホーム」の視察団がどのような視点を持っていたのか、なんとなくわかるのが面白いです。 フィンランドの「習熟度別の指導」については、このスライドのように「取り組んでいる」という評価のレポートと「廃止した」という評価のレポートがあります。もちろん学校の自由裁量が大きいために学校によって取り組み方が異なる、ということもあるかとは思いますが、レポートを書く人の視点によって、何を「習熟度別」の指導として捉えるのかの違いがあるのかもしれません。通常の授業についていけない子どもへの個別支援は実際に行なわれているわけですから、そこを「習熟度別」と捉えれば、このレポートのまとめのようになりますし、習熟度別の固定クラスを想定すると、「やっていない」ということになるのかもしれません。 最後に、文部科学省のページより、中央教育審議会の初等中等教育分科会の「教職員給与のあり方に関するワーキンググループ」で配付された資料より、2 調査対象国の教員給与に関する概況 (7)フィンランドをご紹介します。ここに、「教員組合、団体の状況」という項目があるんです。以下引用-----------------(前略)16 教員組合、団体の状況 フィンランドにおける最大の教職員組合は、教員組合(Trade Union of Education in Finland:OAJ(注133))と呼ばれる団体である。OAJは主に地方自治体の雇用制度担当組織である地方自治体雇用者機関との交渉窓口となり、フィンランドにおける教員給与の決定プロセスに関与している。 OAJは1973年12月28日に設立された。2006年1月1日時点の組合員数は、11万4,983人であり、フィンランド全土の教員の96パーセント以上が組合員となっている。OAJの主目的は、フィンランドにおける教員の利益を保護することにあり、教員の給与、労働時間等の諸待遇に関する交渉を行っている。OAJの意思決定はカウンシルと呼ばれる委員会で行われ、年に2回カウンシル会議が実施される。OAJの中央事務局及び11の地方事務局は、組合員に対し以下の福利厚生を提供している。 OAJの組合員は、幼稚園教諭から大学講師、職業訓練学校の教員まで多岐に亘る。OAJは、主にホワイトカラーの労働者から構成される労働組合AKAVA(Confederation of Unions for Academic Professionals in Finland)の最大会員である。----------------------- 「聖職」であっても、やはり労働条件はきちんとととえていかなくてはならないし、そのために教員にも労働組合結成・加盟の権利はあるわけです。加盟率が96%というのも、それがフィンランドの国民的風土なんでしょう。 個々の権利と公共性についての捉え方の違いを考えさせられます。 フィンランドの労働組合とナショナルセンターであるAKAVAについてのレポートとしては、次の資料を見つけました。<世界の労働関係研究所・資料館・図書館(7) アムステルダムの博物館とフィンランドの労働組合中央組織> 五十嵐仁↓ 法制大学【大原社会問題研究所雑誌】NO.536/2003.7 http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/536/536-04.pdf AKAVA(アカバ)は職能団体的な性格があり保守的だそうです。レポートが書かれた当時(2003年)の議長は国民連合(保守党)の党員だそうです。ただし、組合活動の面では社民党支持や左翼同盟支持の組合が多い他のナショナルセンターとも連携し結束は固い、とのこと(選挙は別)。 別の資料もみつけました。↓<フィンランドの女性労働―2005年度先進国派遣調査報告書 2006年3月>http://www.miraikan.go.jp/book/pdf/koryu_07.pdf(財)女性労働協会 女性と仕事の未来館 こちらによれば、 AKAVAは「専門職管理職労働組合連盟」と訳されています。 組合員の学歴は、学士30%、修氏54%。フィンランドの雇用者の6人に1人がAKAVAの会員であり、組織率は70%を超えており、組合員の54%が女性だそうです。 活動内容として、>AKAVAの役割は、経済・社会政策・税制・教育・雇用政策の監視、労働生活や平等の改善、福祉社会の建設に関して社会において組合員の利益を見守ることであり、新しい法案が出されたときには、組合の意見を言ってきている。とあります。 フィンランドでは男女によって職業が分化していて、同一職業での賃金の男女差はないとはいうものの、女性の多い職業の賃金は低い傾向があるそうです。教育は女性が多い職場でもありますから、社会的地位のわりに賃金が低めなのはそういう歴史的な背景もあるかもしれません。