アクリルアミド?って・・・(後編)
7/14の続き。こうした揚げもの類には、今話題の「トランス脂肪酸」の問題もあります。「トランス脂肪酸」、別名「プラスチック食品」とか「狂った油」などといわれています。植物油などの天然の不飽和脂肪酸は本来「シス型」です。しかし、この液体状の不飽和脂肪酸からラードのような固体状の飽和脂肪酸を製造するために水素を添加し「水素化」させると、分子構造が変化し、不飽和脂肪酸のシス型結合の一部が「トランス型」に変化して、「トランス脂肪酸」が形成されるのだそうです。なぜそんな込み入ったことをしなければいけないのかというと、植物油からマーガリンなどを作るためなのだそうです。その当時(19世紀末)、高価で一般庶民がなかなか買うことのできなかったバターの代わりとして研究開発され、その結果安価な植物油から作ることができるようになった、それがマーガリンの誕生というわけです。今では、「動物性脂肪からできているバターよりも、植物性脂肪から作られるマーガリンの方がより健康的である」といったフレーズが定着したこともあって、一般的にバターよりも多く使用されているようです。しかし、この「トランス脂肪酸」は上述したような製造過程上必然的に、マーガリン類には高濃度で含まれることになります。マーガリン類とは、マーガリンのほかに、ファットスプレッド(マーガリンよりも水分が多く柔らかいため塗りやすい、市販されているマーガリンも表示をよく見るとファットスプレッドと書いているものが多い)、ショートニング(マーガリンから水分と添加物を除いて純度の高い油脂にしたもの、パンや焼き菓子、フライドポテトなどを製造する業務用として主に使われる)、などがあります。そしてその影響は、それらを使って作られる加工食品にも及びます。「トランス脂肪酸」は、多量に摂取するとLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させ心臓疾患のリスクを高めるといわれ、2003年以降使用を規制する国が増えています。アメリカでは、2006年から食品中のトランス脂肪酸の含有量の表示を義務付けました。ニューヨークでは2008年半ばまでに、外食産業でのトランス脂肪酸の全面使用禁止を義務づけました(いろいろ物議を醸しているようですが)。規制の進んでいるデンマークでは、「動物性油脂に含まれる天然に存在する物は規制外として、全ての食品に含まれる脂肪中、トランス脂肪酸は2%以下」としているそうです。残念ながら日本での「トランス脂肪酸」に関する規制は今のところ、官民共に全く眼中にないようです。(あえて問題にしないようにしているというべきでしょうか、やはり「いろいろある」のでしょう。)(「アクリルアミド」に対する対応とは明らかに違うようです。)いずれにしても、現在のところ「トランス脂肪酸」に関しては、先進諸外国との規制の差は歴然です。よって、日本では「トランス脂肪酸」が高濃度に含有された食品が普通に出回っているわけです。「食品と暮らしの安全基金」の調査によると、大手企業のマーガリン類のトランス脂肪酸含有率は以下の通りだったそうです。 ・明治コーンソフト 9.04% ・ラーマ バターの風味 8.10% ・雪印ネオソフト 4.18% ・小岩井マーガリン 1.47% ・雪印北海道バター 1.74% ・日清のショートニング 14.70%この調査によると、やはりマーガリン、ショートニングには高濃度でトランス脂肪酸が含有しているということがわかります。しかしそんな中で、デンマークの基準をもクリアしているマーガリンがこの日本にもあったというのは、うれしい驚きです。小岩井マーガリンです。 (健康を考えて)パンに塗るなら、マーガリンよりバターの方がいいようですし、マーガリンにしたいのなら、小岩井マーガリンを選んだ方がいいようです。以下にある「英国食品基準庁(FSA)のQ&A」にあるように、あまり神経質になることはないのかもしれません。(そうはいってもこの「FSAのQ&A」、どうしても事なかれ主義的な気が強くしてしまいますが。)しかし、少なくともポテトチップスやフライドポテト、スナック菓子類は、「アクリルアミド」のリスクの点からも「トランス脂肪酸」のリスクの点からも極力食べないようにした方がいい食品なのだと思います。また、ショートニングの使用をはじめ、原材料のことや添加物のことなどいろいろ考えてしまうと、どうしてもファーストフード店など多くの外食産業と呼ばれるお店での飲食は、できるだけ控えたほうがいいといわざるを得ないように思います。特に、子どもたちのことを考えるとなおさらです。話は突然でなんですが、トランス脂肪酸含有率が1%以下だというバーガリンという有名なマーガリンがあります。 日本人のシェフが作ったという、こだわりの一品のようです。 ※ 「バーガリンのススメ」ホームページ http://www.burgarine.com/ (業界をはじめマスコミなどの「トランス脂肪酸」に対する反応もわかります。)以前に整理したのですが、「質のよくない脂質、バランスを崩す脂質」はできるだけ摂らないという観点からみると(脂質・脂肪酸1の項、2の項参照)、そもそも揚げ物類の多くは避けるべき食べ物だといえます。また、バターにしてもマーガリンにしても、できるだけ使わないにこしたことはないものでしょう。ですから、「アクリルアミド」も「トランス脂肪酸」も、「質のよくない脂質、バランスを崩す脂質」をできるだけ避けるということによって、ある程度自動的に回避できる問題だといえると思います。※「食品のハザード」については、「食品科学広報センター代表 正木英子氏」の講演内容を参考にさせていただきました。 ―参考― ○ 英国食品基準庁(FSA)のQ&A(一部仮訳)Q1: アクリルアミドとその健康へのリスクについてどのようなことが分かっていますか。 A1: 動物実験データやその生理学的な影響から、アクリルアミドは人におそらく発がん性を示すと評価されています。 職業上アクリルアミドに暴露された人に対して神経障害を引き起こすことや、雄の動物を用いた実験で、繁殖障害を示すことが 確認されています。 最近、アクリルアミドが食品中から検出されることがわかりましたが、人が経口摂取した際の影響については解明されていません。FSAはアクリルアミドのようなDNAを損傷させる発がん性物質への暴露は合理的に達成しうる限り低くするべきと考えています。 Q2: アクリルアミドは新たなリスクですか。 A2: いいえ、アクリルアミドは、通常の調理方法によって食品中に生成されると考えられており、従来から摂取されていたと考えられます。 Q3: アクリルアミドは直ちに現れるリスクですか。 A3: いいえ。食品中のアクリルアミドについて可能性のあるリスクは長期間摂取されることによってもたらされると考えられます。 Q4: 食品中のアクリルアミドの摂取を少なくするために、調理時間を短くするべきですか。 A4: いいえ、すべての食品、特に肉は食中毒細菌を死滅させるため適切に調理すべきです。 Q5: 食品中のアクリルアミドの摂取はどのようにして避けることができますか。 A5: アクリルアミド摂取をゼロにすることは困難であり、十分な果実や野菜を含む健康的なバランスある食生活が、がんから健康を守るのに役立つでしょう。 Q6: ポテトチップスやフレンチフライを食べてもよいのでしょうか。 A6: FSAは、この試験でアクリルアミドが検出された食品を食べるのをやめることを指導しているわけではありません。 しかしながら、ポテトチップスやフライドポテトのような揚げ物や脂肪食ばかりを食べるのではなくバランスのとれた食事をすることを勧めているのです。 Q8: 煮た食品ではアクリルアミドは生成されますか。 A8: 限られた調査ではありますが、食品を煮てもアクリルアミドの生成は促進されないようです。 Q9: この発見により、食生活を変えるべきですか。 A9: いいえ、消費者に食生活を変えるようアドバイスをしているわけではありません。 アクリルアミドはありふれた多くの食品に存在し、リスクの全くないバランスある食生活を実現することは困難です。 しかし、毎日少なくとも5種類の果実や野菜を含む健康的でバランスのとれた食生活をおくることは相当効果があると考えられます。