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我思う、ゆえに我あり

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yukie_yo

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May 24, 2010
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カテゴリ:仕事
この間、庄司太郎著「アラビア太郎と日の丸原油」を読み終えた。結構面白い。

アラビア太郎といえば、山下太郎。アラビア石油を作った人物である。この人もずいぶんと浮き沈みの激しい人生を送った。日本で一財産を作っては潰し、無一文で満州に行って大成功したけど、敗戦ですべてを失い、無一文で日本に帰った。その後、石油に目覚めて、油田開発に命をかけて、サウジとフランスとのカフジ油田開発の案件がスエズ動乱のせいでおじゃんになったのを、すかさず聞きつけて、他のメジャーを振り切って、利権を手に入れる。

どうやって、振り切ったのだろう?と思ったら、相当にいい条件を提示したものらしい。当時から、本当はサウジにも、資源ナショナリズムが芽生えていたので、(その後カウンターパートはOPECを作ったくらい)当時にしてはものすごく先駆的な要素が入っていたそうな。

ともかくも、手に入れてから、日本に帰ってカネを貸せ、というのだから、はちゃめちゃなのだが、そこは中山素平らががんばって、アラビア石油会社を興させた。

で、さらにアラビア太郎には幸運が付いていた。カフジの油田試掘第一号で石油を掘り当てた。知らせを聞いて、子供のように万歳をした、というのが逸話として残っている。正直、アラ石には既にほとんど資金が当時残っていなくって、一発で当ててくれなきゃ困るくらいな状態だったらしい。

その後アラ石は安泰か?というと、そうでもなかったようで、サウジの資源ナショナリズムの高揚にあわせて、アメリカが作ったアラムコは、サウジアラムコとなり、じわじわと「サウジ化」の波がやってきて、アラ石も経営権の6割をサウジに譲渡せざるをえなくなる。

ところで、このカフジ油田は、不思議なところにあり、クウェートとの国境をまたがり、中立地帯といわれるところにあり、サウジとクウェートが利益を折半する仕組みがある。ので、アラ石がカフジで操業開始をするにあたり、2国の政府と交渉しないといけなくて、大変だったらしい。けど、このサウジ化の時には、逆にこの煩雑さが幸いして、サウジも日本を完全に閉め出すよりも、アラ石に面倒なことはさせればいいや、ということになったらしい。

しかし、2000年には、カフジ利権は更新できなかった。サウジ化の波には最後には勝てなかった。もっとも、契約更新のための条件を、いろいろサウジ側から提示された。けれど、それはアラ石1社がやれる範囲を超えていて、政府や財界の後押しがなければ無理なもの。鉄道を作れとか、数千億円単位の投資をしろとか。

もし、山下太郎の時代だったら、中山素平とか、小林中とか、相談できる相手はいたんだろうけど、彼らは既に亡き人であり、当時なら新日鉄の今井敬辺りが相談できる相手だったろうけど、無理だったようだ。

この辺は、本もぼかしている。(著者は、撤収の直前までアラ石でカフジ油田を守り続けたオイルマン。)

とはいえ、2000年までの出来事を時系列で書いているので、湾岸戦争、イラク戦争のときの話なども、非常に面白い。

結局日本政府は、有事にいる邦人にはあまり役に立たず、現地に自衛隊機でも飛ばして、日本に帰してくれるわけでもないし。ここに描かれている、湾岸戦争のときだけでなく、イラン革命の時もそう。中曽根首相でさえ、日航機や自衛隊機を送れず、関係ないトルコ航空が厚意で2機差し向けてくれた。(しかし、湾岸戦争以後は、政府専用機を持つようになったらしい。)

むしろ、個々の企業が地道に現地雇用の現地人と友好な関係を築いていたおかげで、ローカルネットワーク経由で互いの現状把握などができたりしている。湾岸戦争のときは、パレスチナ人のネットワークを使ったらしい。

苦しいときの、海外での恩人を日本人は、よく忘れる。悪い癖だ。トルコにしろ、パレスチナ人にしろ。

そういうパーツパーツな人脈があるんだけど、政府を動かすほどの人脈になりえていないのが、ネックだ。

そもそも、サウジとアラ石が日本に留学生を送るシステムを作り上げ、1000人以上卒業生がいるらしい。一方、日本側はほとんど留学生を送らない。ってか、興味ない。中国や韓国は送っているようで、人脈構築に熱心とのこと。こういうのを見ると、サウジ側にすれば、日本は本気でサウジと付き合う気はあるのか?と疑問に思うよね。納得。





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Last updated  May 24, 2010 02:05:56 PM
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