カテゴリ:学び方・振り返り
(2)小論「文法家列伝:古代ローマ・中世編」の執筆における学び
前回は、本稿の目的を確認した後、先月の振り返りで立てた2013年11月の目標を概観し、さらに自分の人生の目標を再認識したところまでであった。 さて今回は、11月の1つ目の目標である、小論「文法家列伝:古代ローマ・中世編」の執筆における学びについて振り返っていきたい。 前稿の「言語過程説から言語学史を問う」では、今回のテーマである古代ローマ・中世の言語学については深く触れていなかった。それは、古代ギリシャのディオニュシオス・トラクスの文法がラテン語に移植されだけで、論理水準としては彼を超えるものがほとんど見受けられない時代だからであった。逆に言えば、言語学の歴史において、ディオニュシオス・トラクス並びにその著書『テクネー・グランマティケー』は大きな位置を占めるということである。 そんな中でも、間投詞を品詞として独立して把握したこと、以後のラテン語文法の基礎を築いたこと、主体的表現を直観的に把握したこと、及び認識や対象とのつながりにおいて言語の普遍性を把握しようとしたことなどは、部分的で不完全なかたちではあるものの、言語学の歴史上、大きな意味を持つものと言わなければならない。 また、古代ギリシャにおいて中心的に研究されてきた形態論、個々の語の形を研究する分野に加えて、文の中の語同士の関係を問う統語論が盛んに研究されるようになったことも見逃せない発展である。物事を静止した状態で捉えるのではなくて、各々の連関の中で捉える研究が台頭してきたことは、学問史上でも大きな発展と言えるだろう。 こうした把握は、前稿では捉えきれていなかった言語学史の側面であって、今回の小論執筆の成果と言えるが、課題も残った。それは、当時の社会状況との関わりや、学問一般における言語学の位置づけ、つまり、どういった学問上の発展が一般的にみられたためにこうした言語学上の成果が表れたのかを具体的に論究することができなかった点である。これは言語学史の発展の必然性の解明が十分でなかったと言い換えることもできるかもしれない。言語学は言語学のみで発展していくことは決してできない。社会状況や学問中の学問たる哲学等の影響を強く受け、それらに規定される形で発展していくのである。こうした社会や精神一般との媒介関係の解明が今後の課題として明らかになった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013年12月02日 15時12分39秒
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