「おくりびと」アカデミー賞受賞
「おくりびと」は、ひょんなことから遺体を棺に納める”納棺師”となった男が、仕事を通して触れた人間模様や上司の影響を受けながら成長していく姿を描いた感動作。一見近寄りがたい職業、納棺師に焦点を当て、重くなりがちなテーマを軽快なタッチで綴る。米ロサンゼルスの授賞式会場では滝田洋二郎監督をはじめ本木雅弘、広末涼子ら出演者がレッド・カーペットで正装姿を披露。「Departures」(「おくりびと」の英題)で日本映画の素晴らしさを伝えたいとの抱負を語っていた。今回の外国語映画部門でオスカー獲得は、日本人監督作品としては黒澤明監督「デルス・ウザーラ」(弟48回・ソ連映画)以来、日本映画としては初の快挙となる。本木雅弘は先ごろ亡くなった峰岸徹の遺影を胸にしていた。「笑って、泣けて、深く心を打つ・・・そんな映画をつくりたい!」プロデューサーの間瀬泰宏、中沢敏明、監督の滝田洋二郎はそれぞれの作品を介し既知の仲であったが、3人が初めてタッグを組むことになる本作の構想はそこにあった。そんな折、中沢にある話が舞い込む。それは、俳優の本木雅弘からだった。10数年前、旅先で遭遇した”この世の旅立ち”の儀式に感銘を受け、以降、秘かに彼は納棺とそれを職業とする人々に興味を抱き続けていたのだという。そして「納棺の世界を映画にしてみたらどうだろうか?」と、かつて主演作「双生児~GEMINI~」(99/監督:塚本晋也)などを製作した中沢に発案。そこで彼らは映画企画として成立可能かどうかを検討。納棺師の世界をリサーチし、人間ドラマとして十分成立するユニークな題材であることを確認した彼らは、正式に企画を立ち上げ、小山薫堂にさらなる取材と脚本を依頼したのだ。放送作家として著名な小山だが、映画の脚本を執筆するのはこれが初めて。しかし彼は取材すればするほどに浮かび上がってくる悲喜こもごものエピソードに俄然やる気を出し、それらを巧みに組み合わせながら、ともすれば重くなりがちな”生と死”に関するテーマを現代人に軽やかに響かせる物語として構築していった。まもなくして出来上がってきた脚本は関係者すべてを興奮させるものであった。