エスプリ ~ローラン・プティの世界~
兵庫県立芸術文化センター大ホール
アルルの女 草刈民代/マッシモ・ムッル
ヴァントゥイユの小楽章 田中祐子/イーゴリ・コールプ
「プルースト 失われた時を求めて」
コッペリウスと人形 ルイジ・ボニーノ
タイス パ・ド・ドゥ 田中祐子/リエンツ・チャン
「オットー・ディックス」より 草刈民代/イーゴリ・コールプ
~切り裂きジャック~
「白鳥の湖」男性のソロ/パ・ド・ドゥ 草刈民代/マッシモ・ムッル
エスメラルダとカジモドのパ・ド・ドゥ 田中祐子/リエンツ・チャン
ティティナを探して ルイジ・ボニーノ
小さなバレリーナ
ジムノペディ 草刈民代/リエンツ・チャン
モレルとサン=ルー侯爵 パ・ド・ドゥ マッシモ・ムッル/イーゴリ・コールプ
チーク・トゥ・チーク 草刈民代/ルイジ・ボニーノ
草刈民代様、タミー様の引退公演。
オール・プティ作品のガラ公演全11作品中、タミー様が5作品踊ったのにまずビックリ!
企画・プロデュースという役をこなし、全国を巡業しながら5作品踊りきるというのは、年齢のことも考え合わせると賞賛に値するかもしれない。
古くからのバレエ鑑賞ファン、例えば「わたくし、バレエはロシアかパリオペしか観る価値はないと思ってますのよ」タイプの人(私も若干これに近い)がなんだかんだ言っても、日本のバレエファンの裾野を広げた功労者は、熊川哲也氏とタミー様だというのは紛れもない事実だろう。
素敵な男性ダンサーを連れてきてくれ、東京以外の地ではなかなか観ることが数少ないプティ作品をいっぱい観せてくれ、なおかつ劇場をほぼいっぱいにすることができるのは、タミー様だからなせるわざで、「ありがとう!お疲れ様でした。」と素直に思えた。
マッシモ・ムッルはあまり好みのダンサーではなくて、「硬っ!」という印象を持ってしまう。それは身体の使い方なのか表現の仕方なのか、はたまた両方から受ける印象か・・・
「アルルの女」のファランドールの場面、曲は盛り上がっているが、彼は淡白に踊っていて、最後に窓からダイブするところもあっさり。白パンツ一丁の「白鳥の湖」のほうがしなやかな感じがでていて良かった。ラテン男だが、ノーブルなもののほうが似合うのかもしれない。
草刈さんもこの「白鳥」が良かった。
実は今回はコールプを観るのが目的だった。
白いコールプと、変人コールプと、倒錯コールプと、ノリの悪いコールプの4変化を観た。
白い・・・「プルースト」の白のパ・ド・ドゥ。まぁイメージじゃないわね。
変人・・・舞台に跳び出てきたところからコールプワールド全開。
倒錯・・・倒錯モノよりは変人モノのほうが似合うのね。彼はモレルのパートを踊った。
彼はガラより全幕のほうが力を発揮できるダンサーかも。役柄によってパッパッと色が変わるダンサーではないので、通し役で、ずしーんと踊ってくれたほうが魅力的だ。
ノリの悪い・・・いや、本人はノッているのかもしれない。 でも・・
フィナーレで皆で踊る場面、皆そろいの振りのようなのに一人違う。
一人ずつの踊りを待っている間、皆ステップをふんでいるのに、たたずんでいる。
手拍子はしてたけど・・・
横一列に並んだら、照明の当たっていない端っこに寄っていきそうになる。
なんか、不思議な人だ。
リエンツ・チャンは力持ち。体格も力持ち系で、リフトの安定感は抜群だった。
「タイス」の最後のリフトは田中さんの空中での姿勢も綺麗で、感動的な美しさだった。
ルイジ・ボニーノは初めて。
レビューのあい間にあるマジックショーのような役割で、プログラムにメリハリがついてたし、ダンスマガジンの写真では見たことがあった、「小さなバレリーナ」を観られたのはうれしい。
田中祐子さんも初めて。
上半身の使い方が綺麗なダンサーで、優美さがあって、「タイス」が一番よかった。
正直言うと、タマラ・ロホがゲストで来ると知ったときは、「タマラを観たいぃ~」と思ったが、フィナーレの並びを見て、牧阿佐美バレエ団の仲間で草刈さんを送り出す田中さんが一緒に舞台上にいるというのも良かったかなぁ~と思った。
美しく踊ってくださったし。
ロビーではご主人の周方正行監督をチラっとお見かけした。
引退後は女優になるようなので、ご主人の作品にもまた出演なさるかもしれない。
舞台上のタミー様を見てると、なんといっても綺麗だし華があり独特のオーラがある。
女優さんとして今までと変わらず活躍なさるだろうが、
またバレエをプロデュースして、素敵な公演を関西でもうっていただきたい。