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2005/10/10
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カテゴリ:novel
そろそろ暗くなってきたな。
帰ろうかな。いや、まだ少し早い。もう少しここに居たい。
もう少しでいいからこの手を離さないで欲しい。
会話が途切れて、無言になって、でも手だけは温かくて。
離したら、手も冷えちゃって、僕の脆い心は凍てついてしまいそうだ。

熱にうなされた様に今日ははしゃいだ。童心に返って、無邪気な僕と笑顔の君。
話しだせば笑い転げて、手を握れば顔を真っ赤にして、初めてのデートのような緊張の一日だった。
気持ちが張り詰めて、息苦しいぐらいなのに、それが心地良くて…。

長いようで、あっという間だった。君に出会ってからどれくらいかな。
どんな事があっても、夢中で君を追いかけて、夢の中でさえも君に見惚れてた。
それは今も変わりやしない。いつでも笑顔に癒され、君の優しさに抱かれてた。
なのに僕はいつも見惚れてばかりで…何も君にしてあげられなかったようで…。

後悔のあまりに…泣いてしまいそうだ…。

「ありがとう。私、一人じゃきっと笑えなかった。あなたが居なかったら…笑えなかった。」

握った手の温もりが体中に広がった。静寂も、いつも君が拭ってくれる。

「でも、私にはあなたが居た。優しくなれたのも、笑顔に満たされたのも…。」

僕は何も言わずに手を離してしまった。

ばいばい。

僕の喉は震えて音にならなかった。でも、冷えていく手は別れを告げた。
強がりの僕は君に見えないように泣いて、泣いて、泣いて…。
止まらない涙を必死に拭うと、そっと呟いた。

「…早く…行かないと…電車出ちゃうよ…。」
「…うん。」

君の声は震えもせずに、泣いていた。

僕は入場券すら買わなかった。改札口で、お別れだ。

僕は涙で真っ赤になった顔を一度もあげられず、うつむいたまま、彼女の改札を通る音に震えた。

「…ばいばい…。」

君の影が、手を振ってる。

僕は君の影にお別れを…。
強がりの僕は、小さく手を振った。

君の足音は、弱々しかった。笑顔も、優しさも無かった。
ただ、無表情な足音だった。うつむいた僕には、それしか見えなかった。

僕はふと、泣きながら冷静になった。
こんな時、ドラマや映画では、改札口を飛び越えて彼女を追いかけるんだろうな。

でも、僕には無理だ…。

できっこない…。

君が居なければ…僕は一生…独りだ。

でも、寂しくは無いよ…。君の微かな温もりが、今もこの手にあるから…。








…冗談じゃない!!








思い出は愛してくれない。
過去の人のように。







僕はドラマの様に改札口を飛び越えて、夢中で君を追いかけていった。



















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Last updated  2005/10/10 10:36:45 PM
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