最近『富豪刑事』がドラマ化されて見たけれど面白いですね。深田恭子の天然ボケと貴族っぽい可愛い洋服も見物です。原作者の筒井康隆もヒッチコック見たいにチョイ出するので面白いです。
ところで筒井康隆の小説ですが、20代の頃にはまりまくって読みあさっていました。この人の若い頃の小説は、動きがあってジャズ的だと言われていました。私はロックぽいと思っていました。事実ジャズの人達と親交があるようでした。筒井康隆の前には星新一のショートショートが好きで読んでいたのですが、少し飽きてから筒井康隆のショートショートを読み出したらこれが面白い。ちょっと毒があって、ちょっとスケベで、ちょっとシュールで人間の深層心理を掴んだ作風に虜になってしまいました。最大の魅力は軽快な流れるようなリズムが作風にあることでしょうか。
そして筒井さんは小説以外にも漫画を書いていました。過去の作品のショートショートや小説を漫画化したものですが、これが面白いのです。本人曰く下手くそと言っているようですが、谷岡ヤスジと比べるとずっと上手だと思う。(笑)
本棚の奥から、引っ張り出してまた読んでみました。やはり面白い。
ドキッとしたのが「客」という漫画。これは1971年12月の作品なのですが、ネット社会を先取りしたような話でびっくりしてしまいました。
簡単な話の内容ですが以下の通りです。
《子供1人にその母親と父親のごく一般的な一家に、ある日客が訪れます。久しぶりのお客さんの来訪に家族3人は大喜びします。その客に対して、ごちそうを振る舞い話で大いに盛り上がります。部屋にあった高価な壷の話になったとき、誤って客は手に取った壷を落として割ってしまいました。笑い転げる客と家族3人、「家具には保険を掛けているのでしょうね」と客は言うと一家は「そんなものかけていません」と言いました。「それでは家具に保険を掛けるために外交員(営業マン)を呼べるではないですか」と小躍りして電話を掛けようとする客。そこで一瞬の間。ウワーンウワーン泣き出す家族3人。「外交員なんか来てくれません。だって電話だけで用が足りてしまうんですもの」と家族3人、言ってはいけない事をつい口が滑って喋ってしまった客だった。「なんて冷たい世の中でしょう」と客は言って再び4人はおいおい泣き明かすのでした。そして、それから1時間客は一家と飲めや踊れやで楽しんでくれたのでした。》
これは電話をインターネットと置き換えればいいわけで、確かに外に出て買い物に行かなくてもネットで買い物をしたり、チケットの予約をしたり、飲み会の予約も出来るし、スーパーへ出向かなくても食品の宅配サービスだってあります。これがもし、究極の省力化でネットだけで済ませるような時代になってしまうのなら。。。そう思うとゾッとするような社会です。人と会いたくない、人と話すのが苦手、人と会うのが恐い。引きこもりはもう現実的にある話です。人とのコミュニケーションは携帯か掲示板かメールでなんて笑えない話ですよ。(笑)
この話に登場する「客」も実は商売で、その客に帰り際に一家は10万円を渡すという話のオチです。
新婚の旦那が自宅に帰ったら警官が妻を強姦していたという話『傷ついたのは誰の心』等、他にも毒が一杯です。
この筒井康隆全漫画は17話あります。おすすめ!本のカバーで福笑いもできますよ。(笑)