《コミック『タンク・ガール』のジェイミー・ヒューレットがデザインしたアニメ・キャラクター4体による“ヴァーチャル・バンド”。拠点が英国ということ以外実態は明らかになっていないとされるが、ブラーのデーモン・アルバーンが中心であることは周知の事実。2001年、豪華ゲストを迎えた『GORILLAZ』でデビュー。ヒップホップ、ダブなどの要素を盛り込んだ摩訶不思議なサウンドで世界中でブレイクする。その後、リミックス盤の発売はあったものの、4年にわたり沈黙。05年に活動を再開した。》~CDジャーナルより~
これは楽しいアルバムです。“PLASTIC BEACH”というゴミの島を素材にしながら、ファンタジー映画のような、冒険心をくすぐるようなアプローチ。且つ批評精神もしっかりと入っているようで……。頭が下がります。私が購入したのはエクスペリエンス エディションの初回限定盤です。通常盤の明るいジャケットの方が良かったのだけど、たまたま寄ったCD店に無かったからこれにしただけ。(笑)
ゲストアーティストも多彩なら、楽曲も多彩で散満な印象がない。アルバム全体に統一感があります。
サウンドは打ち込みが主体のエレクトロニックにクラシカルな弦楽器やフルートの柔和なアンサンブルも導入したりしています。(導入部の「ORCHESTRAL INTRO」など)何と言っても
聴き応えをもたらしているのは、骨太なデジタルビートの存在。割とゆったりとした曲が多く、リラックスして聴けるのも良い。デーモンのヴォーカルも相変わらず皮肉っぽく、癖があってハマる。
ラベルの「ボレロ」を想起させるような管弦楽的序章の「WHITE FLAG」、ヒップホップにバトンタッチして終章にて再び管弦楽と、見事な構成。
ボビー・ウーマックのソウルフルなヴォーカルが聴ける「STYLO」。その表現力とシンセサイザーの波動が融和していて、最高にカッコイイ。
デ・ラ・ソウルのヒップホップと【スーパー・ファーリー・アニマルズ】のグリフ・リースとのデュエットも奇想天外な「SUPERFAST JELLYFISH」。
ビーチから望む、幻想的な海の情景を再現している「EMPIRE ANTS」。女性ヴォーカルは【ユキミ・ナガノ】という人だろうか。
クラブジャズ系の魅力も内包していて、素敵な空間。キラキラしたエレクトロニクスは灯台の灯りが海から反射しているようで、とてもロマンチック。
一転「GLITTER FREEZE」「SOME KIND OF NATURE」と続く展開は。。。充分に怪しげ。ヴォーカルは【マーク・E・スミス】と【ルー・リード】だもんね。アルバム真ん中に持ってきているというのが、作品の重みを増していると思います。しかしー、久々にルー・リードの声聴いたけど、昔と変わらず眠気を催します。(笑)
そして次は、チープなエレクトロニクスが可愛らしい、明るいポップチューンの「ON MELANCHOLY HILL」だ。これアルバム中、一番好きな曲です。
《ON MELANCHOLY HILL》
♪メランコリー・ヒルにはプラスティックの木が一本
君も今ここにいるのかな?
今日というまた別の夢を眺めているだけさ
そこではほしいものは手に入らなくても僕なら手に入る
さあ、海へ出よう
そばにいるとき、君は僕の治療薬だから
君がそばにいるときは
欲しいものが手に入らないなら、僕と一緒においで
メランコリー・ヒルのてっぺんには
マナティーが座っている
君がそばにいてくれる日を待ち望んでいるだけ
きみがそばにいる日を♪
PLASTIC BEACHの全貌は明らかに。“PLASTIC BEACH”は発砲スチロールで埋め立てられた浮島。それはそれは、緑で茂った土地で……。鳴っている音楽は、カシオトーン!?(カシオトーンは安価でチープな音が出るキーボードのイメージで、世界に浸透しちゃっているのかな?)
使い捨て文明に皮肉が込められているような「PIRATE JET」でお終い。日本盤ボーナストラックとして「PIRATE’S PROGRESS」がある。「ORCHESTRAL INTRO」の続章のようなシンフォニックな曲。作品を格調あるものにしていて、充分に効果的。ノイズが混じっているのもご愛敬。これは絶対日本盤を聴くべきだと思う。
等と、ダラダラと書きましたが、年間ベスト10クラスのアルバムであることは間違いないですね。これをロックオペラなんかで再現すると凄い事になると思う。デーモンの才能と人脈に期待したいです。
Gorillaz/Plastic Beach