小豆島巡航 怖い話
海上の天候は変わりやすい瀬戸内海のような静かの海でもいったん荒れだすと三角波ができ手の付けられない状態になる。その日、僕たちは順調な滑り出しで平穏な航海をつづけていた、島と島の海峡に差し掛かったとき後方からかもめが数羽飛んできてマストの周りを回って去っていった。僕たちは何かの予告なのかと思っていたところ遠くから「ザーッ」と言う音がしたと思ったらだんだんと大きな音に代わっていった、誰かが「雨だ!」と叫ぶといっぺんにわかに掻き曇りバケツの水を上からこぼしたような状況に陥った、雨だけならまだ良い、大風が吹き出したのだ。僕たちは船底にどんどん溜まっていく水を必死で掻き出し、流される船の行き先を修正するのに必死になった。見ると横の島は岩だらけだ、この勢いでぶつかったら大破か座礁するしかない、みんながパニック状態に陥った。すると誰かが「海上保安庁を呼ぼう!」と叫び船内の空気はいっぺんにやわらいだ。「それだけは止めようぜ」空気が和らぐと不思議と冷静な判断が出来るものだ、とにかく島影に入ってアンカーをうって天候が変わるのを待つことにした。僕は船首に乗り出して海底の状況を注意深く観察した、じっくり見れば見るほど危険な地形だ、岩だらけなのだ、へたにアンカーをうつと上げることが出来なくなる船底の数センチ下にはとがった岩がごろごろしている、舵に指で方向を指示しながらアンカーの打てる場所を必死で探した。すると急に雲がなくなり風もやんできた。船のコントロールができるようになるとみんなが冗談を言い出した。あすの新聞の記事の見出し「海上保安大学校学生海上保安庁に救助要請!」それでは国民の皆様に不安を与えることになる「海上不安大学校だ!!」順調な航海のひと時