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カテゴリ:羽駈羽駈旅行記
27日、やっとよし焼きが行われた。二度にわたって振られた私は、半分意地になり、半分嫌になりながら、性懲りもなく出掛けていった。絶好のよし焼き日和。静かな朝だ。
九時過ぎに遊水地に着いたら、すごい車と人。駐車するスペースを探すのに時間をとられ、かろうじて見つけた小さなスペースに、切り返しを何度も繰り返し、縦列駐車に成功。ステップワゴンのゴンちゃんはなんだか窮屈そうに身を縮めているようだ。 左の木は、何度も繰り返されるよし焼きにも耐えて生きつづけている。なんの種類なのかはわからないが、植物の生命力には驚かされる。 カメラのズームが調子悪いこともあり、アップで撮れなかったのが残念だが、少しは雰囲気が伝わるだろうか。私が着いた時には、もうすでに火が広がっており、大半が焼かれ、その大地は黒々とした体をさらし、炎から上がる黒い煙と、燻されている白い煙とに包まれていた。空はグレーのグラデーションに覆われ、太陽も朧月のようにぼんやりと淡い光を注いでいる。降ってくるのは灰と化したヨシ、黒い雪のようだ。空の青いところには、居場所を炎に乗っ取られた鳥たちが弧を描きながら、じっと地面を見おろしている。 よし焼きは、昭和30年代から行われている。ヨシズの原料となる良質のヨシを育てるための病害虫の駆除が目的だったそうだ。 今では、よし焼きによって、この広大な湿地自然が守られていることがわかってきた。立ち枯れのヨシを焼きはらうことで、春の植物たちが芽吹く機会が与えられる。焼かれたヨシが大きくなる前に、他の植物が芽を出し花を咲かせ実をつけるのだ。これらの植物の中には、全国的にみても貴重なものが多いらしい。 また、いち早く芽を出した柳をヨシと一緒に焼くことで、この広い湿地平原が樹林化することを防いでいる。 土手の上には、たくさんのカメラマンの三脚がズラッと並び、この列がどこまで続いているのかわからないくらいだ。 焼いた跡の黒々とした原を、末黒野(すぐろの)という。俳句には、野火そのものよりも、この末黒野を詠んだものがたくさんある。勢いのある炎より、焼け跡の寂寥を感じさせる風情のほうが、俳人の琴線に触れるのかもしれない。 春の風物詩であるよし焼きが終り、桃の花が甘い香りをはなつようになってきた。開催中の桃まつりも盛況のようだ。桜前線も北上し、遠めで見る桜の枝は、心なしか薄いピンクの膜をまとっているように見える。春爛漫ももうすくそこ。 よし焼きの跡の黒い大地から芽を吹く植物たちのように、春の空気をいっぱいに吸い込んで、今をせいいっぱい生きていこう。末黒野の中に、生命力にあふれた息吹きを感じ、またもや自然から元気や学びをもらった一日だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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