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カテゴリ:FILM / BOOK
![]() 「チェド」などで有名なアフリカ映画の父、ウスマン・センベーヌ監督による2004年作品。 女子割礼(「男子割礼」と同一視されるのを避けるため意図的に「女性器切除=Female Genital Mutilation(略してFGM)」と呼ばれる)をテーマに、大らかに「愛と勇気」を示す、後味の良い、ちょっとした感動作。 女子割礼という未だ残る習慣そのものが衝撃的すぎるため、映画自体の良さが半減してしまう向きもあるが、全体を貫くのはあくまでも大らかな愛であり、その強さと勇気だ。 割礼儀式から逃げ出した4人の少女達をかくまう女性と、その家族、コミュニティとの軋轢というのがストーリ展開。詳細はこちら。 http://www.alcine-terran.com/main/moolaade.htm#intro この映画を見て、「えー、野蛮!信じられなーい」と眉をひそめ、異文化を軽視するのは簡単だ。私たちは皆、程度の差こそあれ文化的背景に「洗脳」されているのだから。当事者でありながら異を唱える強さ、当事者であるがゆえの苦悩と葛藤、そこをちゃんと見据えないと、トンチンカンな方向へ(イスラム=女性蔑視・野蛮!)向かってしまうからね。日本人である私が人道的見解から「FGM反対!それは100%悪である!」とヒステリカルに叫んだところで、白々しい驕りがそこにはある。当事者たちの戦いの手助けはできるし、素晴らしいことにそれを行う選択肢を私たちは与えられている。でも、その前に狂信的にならないよう、メディアに翻弄されないよう、物事には「なぜそうなのか」がちゃんとあるという当たり前のことをおざなりにしないよう気をつけたい。 FMGの現状については、ソマリア出身のオランダ議員アヤーン・ヒルシ・アリ女史のインタヴューで知った。イスラム女性解放運動家でもある彼女は、自身も実際に割礼を受けている。テオ・ヴァン・ゴッホと共同作成した映画「サブミッション」において、イスラムへの(特に女性の扱いについて)強い批判を表明した。これはイスラム原理主義者によるテオ監督殺害などの報復劇としての側面がクローズアップされたので、記憶に残っている方もいらっしゃるでしょう。(最近では国籍剥奪などでメディアを賑わしてますが) FMGの実態は、こちらを参照ください。 これまで「女子割礼」の字面だけで想像していた自分が恥ずかしくなります。 BBCレポート WAAFのページ 以下抜粋です 女性性器切除(Female Genital Mutilation=FGM)とは 女性の外性器を全部もしくは部分的に取り去るものです。主にアフリカ地域で古くから行なわれてきた女児の通過儀礼・慣習です。歴史的な記録が何も残されていないので、その起源は明らかではありませんが、おおよそ2000年以上も前にエジプトからアフリカ大陸に広まった慣習であるという説もあります。 FGMのタイプ 1)タイプ1:クリトリス包皮への切り込み、あるいはクリトリスの一 部もしくは全部分の切除。(スンナ式とも呼ばれる) 2)タイプ2:クリトリス全部と小陰唇の一部あるいは全部の切除。(クリトリデクトミーもしくは切除方式) 3)タイプ3:クリトリス、小陰唇を切除し、大陰唇を切り開き、尿と月経のための小さな穴一つを残して縫い合わせる。子どもの両足をしっかりしばって数週間、傷が治るまで固定する。地域によっては、自然に閉じてしまうよう縫合はしない。(外性器縫合) 4)タイプ4・未分類:ヤンケ・ギシリ切除(長時間分娩の場合伝統的に行われてきた恥骨結合切開術)、あるいはアンギュリャ切除(赤ん坊の処女膜の環を切り取る)、クリトリスや陰唇を突き刺す、あるいは穴を開けるなど。 国連機関の報告によれば、タイプ1が行われることは少なく(全体の5%)、タイプ2が最も多く行われている(全体の80%)ということです。一番深刻なタイプ3(外性器縫合)はFGM全体の15%で、ジブチ、ソマリア、スーダン北部など行われているFGMは主にこのタイプです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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文化人類学か何かの講義で聴いたんだと思いますが、女子割礼は「オナニーの防止」が主目的だとか言ってたのを覚えてます。要するに、快楽をも含め男性への依存を強いるのがその目的だということですね。タイプ2は知ってたけど、タイプ3は痛そう...。
ところで男子割礼という先進国でふつうに行われている“野蛮な”行為に反対する運動もありますよね たとえばこんなの→http://www.mothersagainstcirc.org/ (2006.07.11 13:14:29)
実は最近、大型書店に行った時「ヴァギナの文化史」という分厚い本を見つけて好奇心で立ち読みしたばかりです。その中にFMGもありました。今まで名は聞いたことあったけど、なんとなくのイメージだけで、実際どんなことをするのか知りませんでした。だから、そうだったのか、と何をするか初めて知りました。FMGをした女性器の写真まで生々しく載っていたので・・
脈々と流れ伝わる何かに対して、その流れを帰ることは難しく、その理由に対して何かを唱えることはおこがましいことかもしれないけれど、 ふと、仏陀の言葉を思い出したりしました。 「全ての現象は、外から来るのではない、内から来るのだ」 外に対して防御することの悲しさを思いました。 (2006.07.11 13:30:22)
郡山ハルジさん
>ところで男子割礼という先進国でふつうに行われている野蛮な行為に反対する運動もありますよね たとえばこんなの→http://www.mothersagainstcirc.org/ ?ー、写真入りでの説明すごく痛そう。 でも男性はちゃんと剥けてたほうが清潔でいいと思いますが。 (2006.07.13 22:47:34)
天の声・地の力さん
> 実は最近、大型書店に行った時「ヴァギナの文化史」という分厚い本を見つけて好奇心で立ち読みしたばかりです。 へぇー、その本面白そうですね、今度探してみます。 >「全ての現象は、外から来るのではない、内から来るのだ」 FGM廃止も、女性解放も、民主化も、外側から押し付けるものではなく、内部から、その内から、変わってゆくべきものですよね、本当は。 (2006.07.13 22:53:37) |
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