~佐々木は英語を活かせる職業を目指し、
塾の就職試験に臨んだ(【第1章】にもどる)
いざ試験に足を運んでみると、自分以外の応募者は
どうも「留学」などということに興味がなさそうな気配である。
みんな、先生(講師)を目指してきており、
「留学」ということに限定して参加しているのは佐々木だけのようである。
はっきり言って、自分だけが異質・・・。
採用試験はとんとん拍子に進んでいき、
職種の希望などを聞かれる段においても「留学斡旋事業」にこだわったつもりだった。
自分は「塾のセンセイ」をやりたいわけではない。
英語の能力が評価されてか、佐々木は無事に就職を決めることができた。
留学関係の業務を行いたいという希望も認めてもらえているようである。
でも、会社の中心業務はあくまでも「学習塾経営」である。
現場に職員として加わる以上、塾での教育のなんたるかも分かっていなければならない。
だから、とりあえず授業もやらなければならない・・・。
そんな理屈も、「そんなものであろうか」と捉え、
「まあ、中学生にABCを教えればよいのだろう」と、軽く思った。
どっちにしても、それは職員になるために全員がやるべき「義務」なのだろう。
アメリカの学校は、年度の始まりと終わりが日本と半年ほどずれる。
ニューヨークの大学院を修了した佐々木は、
結果的に日本では中途半端な時期に就職が決まり、
こういうのも日本では「中途採用」と言うのであろうか、
即座に勤務を始めることになった。
とりあえず、何から始めることになるのだろう。
よく分からないまま出勤した現場に、
若手講師 小田切直之の姿があった。
~【第3章 そして彼は塾にいた。】につづく